信じられない現実 (伯爵家当主視点)
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閑散とし、散らかり始めた屋敷。
その数日前は想像もしていなかった景色に対し、伯爵家の当主である私は、茫然と立ち尽くすことしかできなかった。
この光景を目にし、私が思い出すのは数年、伯爵家が貧乏だった時を思い出す。
あのときは満足な数の使用人も雇うこともできず、そのせいで屋敷を完全に掃除することもできなかった。
……けれど、そんな時と比べてもなお、今使用人の数は少なかった。
その信じられない光景を前に、私はただ茫然と呟くことしかできない。
「……どうして、こんなことになった?」
そう呟く私の脳裏に蘇るのは、侯爵家の当主から手紙をもらったあの日だった。
あの時の、全能感を私ははっきりと覚えている。
とうとう私がサーシャリアなど比にならない能力を持っているのだと証明されたはずの日なのだから。
サーシャリアではなく私の名前を元に、商人達が交流を求めにやってくる、その光景が私には想像できていて。
「……なんで、おかしいではないか」
──けれど、実際目の前で起きるのは真逆の光景だった。
新しく、伯爵家に商売を持ち込んでくる商人などいはしなかった。
そのかわり、今まで交流があったはずの商人達がどんどんと離れていった。
今も交流が残っている商会は最早、ごく僅か。
片手で数えられる程度しか残っていない。
……そして、そんな伯爵家から、使用人さえどんどんと逃げ出していた。
最早、残っている使用人は古株かつ、元々は高い地位にあったものだけ。
「何故だ? どうして、こんなことになったのだ?」
そんな現状に、私は茫然と呟く。
こんなことにどうしてなったのか、私は信じられなかった。
どうして、目前でこんな目に……義理の息子の言葉を私が思いだしたのはそのときだった。
──サーシャリア姉様の失踪を明かせば、そうなるのは当たり前でしょうに。
「……っ!」
ここ最近急に反発しだしたマールスの言葉に、私は唇を噛み締める。
そんなことあるわけが、認める訳がいかなかった。
「ふざけるなよ、それではまるで」
……私は愚か者ではないか。
その考えを、私は首を振って振り払う。
そう、あんな言葉など気にする必要はないのだ。
あれは、最近よく部屋を閉じ込める私に対し、責めてもの反抗として言った言葉にすぎまい。
「大人しく閉じ込められることしかできないのに、強がりよって……」
その言葉に少し安心した私は、自分に言い聞かせるように呟く。
「……大丈夫だ、私はもう手を打った、すぐにこの状況を私なら打破できる」
私の部屋の扉をノックする音が響き、待ち望んでいた侍女の声が響いたのはその瞬間だった。
「旦那様、よろしいでしょうか」




