やれること (マルク視点)
額を押さえ、俺は思わず吐き捨てる。
「どうしてあいつは、あれだけサーシャリアのことを観察できて、肝心な思いだけには気付かねえんだよ……!」
俺は、そう叫ばずにはいられなかった。
生徒会メンバーが気付かなかったことを唯一見抜き、一人で盤面を整えていく一方、他の誰もが気付く一番肝心なことには一切気付かない。
そのあまりにも不安定なアルフォードに、どうすればサーシャリアの思いを伝えられるのか、俺には皆目検討もつかなかった。
「……本当に、アルフォードを説得なんてできないの?」
そう、問いかけてきたリーリアに俺は首を横に振る。
「凍死しかけていたサーシャリアを救い、一人サーシャリアの内心を気付き気遣い続け──それら全てに価値がないと思ってる奴に、どうやったらサーシャリアの好意を気付かせられる?」
「……っ!」
「今は絶対にアルフォードを説得することはできないだろうさ。少なくとも、アルフォードの目が罪悪感で曇っている間はな」
その言葉に、リーリアは無言で俯いてしまう。
それを見ながら、俺はどうしてこんなにも事態が厄介になったのかと、思わずにはいられなかった。
「でも、思っていても事態は変わんねえからな」
「……マルク?」
「さすがに今の状況で黙って待っている訳にもいかないだろう?」
そういって、俺が会議室の扉を開くと、リーリアもあわててこちらにやってくる。
「……私達じゃ、この問題は解決できないって言ってなかった?」
「ああ、そうだよ。だけど、やれることがないわけでもない」
「……どういうことなの? いえ、それより、今からどこにいくかくらいは教えてほしいのだけど……」
それに俺は、進行方向を見ながら答えた。
「サーシャリアのところだよ」




