表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/167

全てが手遅れ (ソシリア視点)

 瞬間、私の脳裏によぎったのは、今までのサーシャリアとの出来事だった。


 ──サーシャリア、大丈夫。これからは私が守るから。


 ──助けてくれた分、私はきちんと恩返しするから。


 かつて、サーシャリアに私が告げた言葉が私の脳裏によぎる。

 その時私は、それこそがサーシャリアの求める言葉だと疑っていなかった。

 本心から、サーシャリアを守る言葉を言っていれば、サーシャリアの心が休まると考えていて。


 だから次の日の朝、サーシャリアのベッドの上に置かれていた、私の活動に関する書類を見たとき、私は表面上は怒りつつ喜んでいた。

 サーシャリアは、私の言葉に喜んでくれていて、私の仕事を手伝いたいと思っている、なんて考えて。


 ──実際のところ、私の言葉はサーシャリアに負担を与えていただけなのにも気付かずに。


 ようやく、本当にようやく私は気付く。

 自身の考えが、あまりにも都合のいい勘違いであることに。


 そのとき、サーシャリアがどんな気持ちで書類を読んでいたか、今の私は理解できた。

 ……私の期待を裏切らないように、必死に書類を読み込んでいたことを。


 そして、それは一度や二度の出来事ではなかった。

 何度も、何度も私はサーシャリアを無自覚に傷つけていて。


 ──挙げ句の果て、それでサーシャリアの役に立っているなど、思いこんでいたのだ。


 そのことに気付いた瞬間、私の身体から力が抜けていた。

 危ないと思ったその瞬間には、私の身体は傾いていた。


「ソシリア!?」


 私の身体に衝撃が走る直前、セインが私の身体を受け止める。

 ……しかし、身体は無傷でも、私は茫然自失の状態だった。


 それでも私は、こんなところで自身が倒れることを許せなかった。


「あ、あ、ありがと。セイン」


「おい、ソシリア、そんな状態で……」


「いいから!」


 制止するセインを無視して、私は自分の足でたとうとする。

 アルフォードが口を開いたのは、そのときだった。


「……いや、セインの言うとおりだ。伯爵家に対して、ソシリアにできることはもうない。休んでおけ」


 ……明らかに、気を使ったアルフォードの態度。

 それを見て、私はさらに気付く。


 なぜ、アルフォードが今まで、独断を装ってサーシャリアの情報をコントロールしようとしたかを。

 ……全ては、私という足を引っ張る人間がいたからだと。


「ちが、私はそんな……」


 そう反射的に言い掛けて私は気付く。

 ……なにも違わないことを。


 私はただ、サーシャリアを無駄に傷つけ、皆の足を引っ張っていたにすぎないのだから。 


 「……いこうか、ソシリア」


 完全に抵抗しなくなった私を、セインが支えながら歩き出す。


 ……私が自分の馬鹿さに気付いたのは、全てが手遅れになってからだった。

次回から、マルク視点となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ