表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

くしゃみ女とみえる人

作者: 黄昏 烏

初投稿です。


『くしゃみ』とは、鼻粘膜に刺激があった場合やアレルギー反応、又は風邪などが原因とされる。


山本 慶子 の場合、年がら年中、いつも、毎日……くしゃみが出た。

それは子どもの頃から頻繁で、男の子から『くしゃみ女』と揶揄われるほどだった。

病院で調べても問題という問題はなく、病院を変えても、そういう体質なのであろうという医者の診断。子どもながらになんだそれと思いはしたが、大人になると治まるのではないかという医者の言葉を信じていた。




「ふぇ……くしゅっ!くしゅっ!」




そろそろ二十代後半に差し掛かるが、『くしゃみがでる体質』というものは全く治ることはなかった。

マスクをしていても、嫌な顔をする人はいるし、「山本さんって何か病気でももってんの?」なんていう陰口はよくある事で、直接私に聞きに来いよ!と思う反面、あんだけくしゃみしてたらしょうがないかと最近は諦めもでてきている。



くしゃみはよくでるが、でない場所があった。実家と一人暮らしをしている家である。

まったく出ないという訳ではないのだが、家の中に入ってすぐでると、それからはぱったりとでなくなるのである。そうなると、外に出るのが億劫になり休みになっても外に出る事をしなくなってしまった。

少ない友人に誘われる以外はずっと部屋にこもっているのでもちろん彼氏など出来た事もなく、周りで結婚だの子どもだのできているなか、夢のまた夢だと一生お一人様宣言を両親にしたほどだった。



そんな彼女に突然の春が舞い降りた。



「あの、いつも同じ電車ですよね?お名前なんて言うんですか?」



彼は毎朝使う電車で、同じ車両を使う高校生であった。

イヤホンを耳につけた線の細い儚げな雰囲気のある青年で、入り口付近を定位置にしていた慶子の向かい側にいることが多く、話した事はないが認識はしていた。


(ど、どうしよう……なんで?……淫行罪で私捕まるんじゃ??)


「あ、すみません。突然話しかけて…」


頬を赤くそめた彼は妙な色気があった。



心臓をわしづかみとはこの事かと思う程『ぎゅん』となった。

慶子は混乱状態のなか真顔で

「…お兄さん、めちゃめちゃ可愛いですね」と答えていた。








内田省吾には人には見えない『なにか』が見えた。

それは幼少期から見えていたようで、誰もいない壁を見ながら喋っていることがよくあったそうだ。


『なにか』は人の形をしたものからそうではないものがあった。


影のように真っ黒い『なにか』

人にくっついている『なにか』

壁や天井にくっついている『なにか』

ぼてぼて歩いている『なにか』



影のように真っ黒い『なにか』と壁や天井にくっついている『なにか』はあまり害はなかったが人にくっついている『なにか』と歩いている『なにか』は攻撃的なものが多かった。


人の怒りや悲しみに『なにか』は反応した。

人が怒ると『なにか』のせいで攻撃的になり、悲しみから憎しみに『なにか』は人の心を動かした。



省吾の両親はふつうであった。ふつうであるがゆえ、恐怖し、省吾を守ろうとした。

だが、交通事故であっけなく逝ってしまった。それから祖父母に育てられるのだが両親の死が心に傷をのこし『なにか』の見える力が増長した。



『なにか』と目を合わせぬよう、声を聞かぬよう過ごした。目を合わせたり声を聞くとよくないことがおこるからだ。『なにか』に目をつけられた時は神社などに入るのだが、毎回神社に行ける訳でもない。

鬱々とそんな日々を送っている省吾であったが、突然『なにか』が消えるところに出くわした。


「っくしゅん、くしゅん!」


会社員であろう二十代の女性がくしゃみをしたことで、ぶわりと煙が風に舞うように『なにか』が拡散されたのである。

初めての現象で頭が追いつかなかった。

どうなっているのか、彼女にもみえているのか。


彼女の周りには『なにか』は寄り付かないようであった。

寄り付いた瞬間彼女がくしゃみをする、すると煙になって『なにか』が消えてしまうからだ。


当時中学生だった省吾は、彼女のことを追った。行動範囲を探った。それはストーカー行為といわれてしまうが、省吾には彼女しかいなかった。

声をかけたい、近寄りたい、話を聞いてほしい。

そう思い彼女の近くによったが、彼女には『なにか』が見えていないのが分った。

友人であろう女性と、怪談話をしているのを聞いてしまった。


「幽霊とか無理、霊感なくてよかった~…くしゅん」


そのくしゃみで『なにか』を消しているのだが、まったく予想外であった。

話しかけるにも話しかけれないではないか。見えますか?なんて聞いて変なやつだと思われてしまう。

だけど、近くに居たい。そう思い志望校ではなかった高校を通うことにした。

彼女の家から仕事場まで毎朝乗っている電車に乗って、あの清々しい空間にすこしでも居たかった。


高校3年になった省吾は意を決して彼女に話しかけた。

「あの、いつも同じ電車ですよね?お名前なんて言うんですか?」

本当は知っていくせに、とずるい自分を押し込めて、少しのきっかけを作るのだった。





「あの時は淫行罪で捕まるかと思った…へくしゅっ!」


と当時を思い出していう妻に、省吾は笑った。

読了ありがとうございました。

思いついたままつらつらと書いていったので読みづらかったと思います。精進します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 設定は面白かったです [気になる点] ハピエンなのはわかりましたがそこに至るまでの過程をすっぱり飛ばしてしまうのはもったいないというか、むしろそっちが読みたかったと言うのはわがままでしょう…
2020/09/04 16:03 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ