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異形の魔術師  作者: 東海林
事の始まり編
9/24

第9話

 程なくして洗髪も終わってお風呂から上がると、タオルでしっかりと拭かれている

 自分で出来るのになぁと思いつつも身をゆだねている


「それからもう一つ」


 どうやら独り言がまだあるようだ


「私には一つ趣味がございまして、現在ヘビを飼育していますの」


 えっ今その話必要?


「ランディ様のお肌がツルツルのモチモチで体温も若干低いようでヒンヤリ心地よく美しい大河のよう青いお肌と、白雪のような白いお肌の境界がたまらなく美しい」


 恐る恐るメイドさんの顔を見てみると、ほほを染めて若干興奮しているご様子

 あーなるほど、だから自分のお世話係に任命されたかぁ


「どうか自信をお持ち下さい」


 何の自信!?

 恐怖されながらよりは断然良いけれど、もう少し人選をさぁ…


 バスタオルで包まれて今度はドレスルームへ

 やっと裸族から卒業できるらしい

 あとメイドさん目が血走ってて怖いです


 結論から言うと、尻尾が邪魔で合う服ほぼありませんでした

 今の服装は大きめのシャツのみ

 

 喜べ、裸シャツだぞ!


 メイドさんの興奮具合が恐ろしかった…


 さすがにこのまま殿下の前に出るのはちょっとと言う事で、メイドさんがちょうど良い大きさのローブに尻尾の逃げ場を作ってくれている最中

 少し時間がかかるそうで、自分は食事を頂く事に

 粗食で胃が受け付けないかもと、お粥のような物を用意してくれた

 この心配りで涙が出そうだ


 ちょうどローブが仕上がった辺りで、先ほどの騎士様が迎えに来てくれたので移動開始

 1人の騎士様に続いて自分その後ろにメイドさん、最後にもう1人の騎士様が続く

 と言うかメイドさん付いてくるんだ

 しばらく歩いたら質素ながら重厚な作りの扉のある部屋の前に到着する

 中に通されると錚々たる顔ぶれに完全に気圧される


 第1王子エルントス=ラーゼン=ブレネスト殿下

 その婚約者シュトラウト公爵家長女アンネローゼ様

 従者エンリーク侯爵家次男ハロルド様

 側近候補ベルモントート公爵家嫡男ジークフリュート様

 側近候補リンブル侯爵家嫡男デライズ様

 その婚約者カルトマス侯爵家次女のスーネリア様


 ここまでなら学園の同級生で、事件当日の目撃者なので判るとして問題は残りの3人


 ブレネスト王国宰相オルスタイン=ベルモントート公爵閣下

 ブレネスト王国総騎士団長シェンコス=リンブル侯爵閣下

 ブレネスト王国魔法師団長ユリウス=シュマイゼン公爵閣下


 国の中枢を担う3人が何故に?

 気圧されてぎこちない臣下の礼とる


「今は公式の場で無い、楽にして欲しい」


 そして空いている席に促されて座ると、先ほどのメイドさんがお茶を出してくれる

 高貴な方々が飲むものだから、味も香りも一級品なのだろうけど緊張でよくわからない


「ランディ、まずは礼を言わせて欲しい、その身を顧みず私を、いやあの場にた皆を救ってくれた事を、ありがとう」

「で、殿下お辞め下さい、私のような平民に頭を下げては他の方々に示しが付きません」

「それでもだ、立場がどうであれ命を救われ礼の一つも出来なくては人として恥ずかしい」

「ありがたき幸せ」


 驚いた、尽くされて当然と思い込んで居る貴族も多いのに

 学園時代も出来るだけ分け隔て無く接しようとしてくれていたな

 このお方は、きっと良き王になるに違いが無い


「気になっているであろう事の顛末を話そう、オルスタイン卿頼む」

「判りました」


 宰相様の説明を纏めると

 ばーさん襲撃から1週間が経過している

 ばーさんは翌日に死亡、死因は老衰

 二代前の王族に弄ばれて捨てられた復讐だったらしい


 詳細は伏せたけど、その王族は若くして病死したと記録があったそうだ

 それってもしかして…


 そして一番知りたかった情報、元に戻る方法は判らないらしい

 ワインの入ったグラスにエールを注ぎ込んで混ぜ合わせる、それが今の化け物の状態

 混ぜた物を分離すれば元に戻るが、その方法は極めて困難

 どうにかして方法を見つけないと人に戻れないが、その道はとても厳しい


 それと、とても厄介な話が広まってるらしい

 警備の第2騎士団から噂話が広がり即刻殺処分すべきと広がっている

 俺がいったい第2騎士団に何したって言うんだよ、終いにゃ泣くぞ


「ランディの献身に報いるために褒賞を用意はしてあるが、何か望む事があるか?私の権限が許す範囲になるが、出来るだけ望みに添うようにしよう」

「恐れながら申し上げます、私の望みは2点ございます、まず1点目元に戻る方法の模索のため王宮や魔法師団の資料室の観覧の許可を頂きたく存じます、それから2点目に平民程度で構いません、元に戻る方法の模索中の生活の保障を頂きたく存じます」


 皆一様に拍子抜けした様子なのは何故に?


「それだけで良いのか?」

「はい、このような身ですので」

「そうか…正直に言えば恨み事の一つや二つ言われる事を覚悟していたのだがな」

「結果的に姿は変わってしまいましたが、恨む事などございません」


「判った、ランディの希望を踏まえた上で褒賞を与える、まずその命を省みず王族を救った事により、準男爵の位と家名を授ける。家名はランドラゴン、これよりランディ=ランドラゴン準男爵と名乗るが良い。これは式典を開き大々的に報じる。2つ目に其方に王立魔術院に配属する事を命ずる。魔術院の研究に携わりつつ元に戻る方法を模索するといい。住居も魔術院の敷地内に用意しよう、用意が出来るまではあのゲストルームを使うといい。引き続きミシュリーをつける、彼女は私の信頼する者の1人だ、不自由があればすぐに言って欲しい」

「過分なるお心遣いを賜りました事に感謝申し上げます、謹んでお受けいたします」

「騎士団と魔法師団から訓練協力が有るだろう、実力を確認してきたい旨が来ている出来るだけ協力して欲しい」

「判りました」


 正直殿下にこれほど評価されているとは思わなかった、異形になった事への同情かもしれないけど

 新に家名を殿下自ら贈ると言う事は、後ろ盾になる事を意味しているのに


 この後ベルモントート公爵閣下、リンブル侯爵閣下、シュマイゼン公爵閣下は退席され級友だけでお茶会となった

 もうと参加する事は無いと思っていたお茶会は何故かホッとした

 とは言えやっぱり高貴な方々と居ると緊張するなぁ


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