第5話
最初に感じたのは心地良い冷たさ
次に固い石の感触
そして感じ取るすえた臭い
えっ?何処に寝てるの俺?
目を開けるとまだぼやけて良く見えないが、遠くに灯りが見える
今は夜かな?
怠慢感の有る体を起こし、灯りの方を見ると
目に映ったのは鉄格子
「はいっ?牢屋?なんで??」
慌てて上がって近づこうとすると、何か引っかかるが
腕をお構いなしに振り切る
バキンッ!!
大きな金属音と共に、腕の引っかかりが無くなる
「あ…あぁ…」
息がうまく吸えない
頭が見えている物を理解するのを拒否する
「ば、化け物が目を覚ましたぞ!」
「大人しくしろ化け物め!!」
強い衝撃を受けて後ろに倒れ込む
あまり痛くは無いが、何回も衝撃が来るので体を丸めて耐える
看守なのだろうか、男達が駆けつけて自分を叩いているようだ
「この化け物が!」
衝撃がやんだので叩くのを辞めたらしい
押して足音が離れていくのが聞こえる
おかげで少し冷静になれた
止まっていた脳みそが動き出して理解し始める
先ほどの腕を見る
手首に枷がはめられ、ちぎれた鎖が繋がっている
それよりも問題は、腕の方だ
外側が青くて内側が白い
こんなオシャレなツートンカラーじゃ無かったはず
手もゴツくて爪も厚くて尖ってて、鱗もある
恐る恐る頭を触ると、ゴワゴワした毛の感触
よかった…髪があった……
そして指先に当たる堅い物
触って確かめると両側に2本握るのにちょうど良い大きさ
試しに引っ張ってみると
頭が引っ張った方向に引っ張られる
うん、痛い
足を見ると、犬とか猫とかの後ろ足のような形してるし
そして、気にしまい気にしまいと思っていたけど
諦めて動かしてみる
ビターン
当たり所が良かったのか結構良い音が響く
尻尾だこれ!
起き上がり、体中を触ったり見たりして発覚する衝撃の事実
「全裸じゃん!!」
その場で思わず失意体前屈を取ったのは仕方ない事だと思っている
人の尊厳を奪う鬼畜の所行か
数分失意体前屈のまま放心していたけど、おもむろに座り直して大きく息を吐く
「化け物…か…」
看守っぽい人も言ってたけど化け物になったらしい
ドウシテコウナッタ!?
確か卒業式パーティーに出てて、殿下を庇って槍に刺されてそれから…
思い出せない
え?何?あの槍のせい?
と言うか刺さったはずなのに傷口無いんですけど?
どうしてこうなったかを悶々と考えていると通路から大勢の足音と
何か言い争っているような声が聞こえてきた