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異形の魔術師  作者: 東海林
事の始まり編
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第3話

side エルントス=ラーゼン=ブレネスト


 卒業パーティーのファーストダンスを終えて、アンネローゼと共に拍手に答えていた

 目端に何かが来るのをとらえると同時に全身に何かが纏わり付く感覚

 すぐにアンネローゼを引き寄せると、軽い衝撃を受け吹き飛ばされ、すぐ何かに受け止められた感覚がして纏わり付いていた物が撒無する

 衝撃を緩和する魔法?


「殿下!、アンネローゼ様ご無事ですか!?」


 側近候補のデライズの声に我に返り、状況把握を始めなければ


「問題ない、アンネローゼ」


 抱きしめているアンネローゼに声をかけるが、アンネローゼは一点を見つめ青ざめている


「アンネローゼ大丈夫か?」

「キッ、キァァァッ!!」


 もう一度声をかけるが、返ってきたのは悲鳴

 そして意識を失ってしまう

 アンネローゼが見ていた先は、先ほどまで立っていた場所

 そこに目を向けて息を飲む

 4本の槍に刺され、宙吊りになっている男の姿に

 あの男はランディ=ホーンツ、最初の衝撃は彼が突き飛ばしたもので

 衝撃がほぼ無かったのも彼の魔法か


「い、嫌だ」

「た、助けて」


  アンネローゼの悲鳴で次々に悲鳴が上がり、逃げだそうと出口に殺到していくのが見える


「殿下ご無事で」

「殿下何があるやもしれません、私とデライズ様から離れぬようにお願いします」

「ハロルドとスーネリア嬢か、頼む」


 武のデライズ、魔法のスーネリア、従卒ハロルドこの3人が来てくれたなら心強い

 会場警備の騎士達はこの混乱ですぐに駆けつける事ができないようだ


「ランディを助け……」


 私は言葉を続ける事ができなかった

 いや、この光景を見た者は目を見開き、恐怖におののいて身動きが取れなかったのだ


 ランディの体に刺さった槍が、のたうち回り体に侵入していく光景に


 声にならない雄叫びを上げ、体がけいれんしたかと思うと

 ブクブクと肉が盛り上がり服を破り、四肢があらぬ方向に曲がりながら膨張する

 人の形などすでに無く、蠢く赤黒い肉塊に嫌悪感を覚えながらも、悍ましい光景から目が離す事ができなかった


 蠢く肉塊は収縮して人のような形に収まっていく

 それは人のようなであって人では無い形

 人とは違う足の形

 尾があり、頭部には角と黒髪、口はトカゲのように張り出し

 黒髪から除く目は金色の瞳に縦に長い瞳孔

 そして何よりも異質な青い肌

 まるでおとぎ話に出てくる化け物そのもの


 人から化け物に変わる一部始終を見せつけられ、意識を保て者は何人居るだろうか?


「ははははは、予定と違ったがこれこれで」


 しわがれた老婆の声が静まりかえった会場に響く

 ランディだった魔物の隣の空間がゆがみ、黒い擦り切れ薄汚れたローブを纏う手入れのされていないボサボサの白髪をした老婆が姿を現す

 そして、血走った殺気の籠もった目で私をにらみつけてくる


「憎き王家の血、お前を邪竜に変えて王家を、この国を滅ぼしてやろうとしたが邪魔が入ってしまったようだね。予定と違ったが邪竜は生まれた、守るべき民に殺されるのもまた一興よなぁ」


「殿下お下がりを」

「ここは私達が」


 老婆の声に反応してデライズとスーネリアが前に出て私を庇う形で立つが不利すぎる

 会場は魔法阻害の結界が張られ本領を発揮できないスーネリア

 武器の無いデライズも同様である

 逃げるべきであるが、腕の中には意識の無いアンネローゼ

 見捨てて逃げる選択肢は私の中には無い


「殿下お早く」

「逃すとでも?さぁ私のかわいい邪竜よ、まずはこやつらを血祭りにしておしまい!」


 老婆の言葉にランディだった邪竜は、ゆっくりと歩みを進め近づいてくる

 2人の顔に緊張が見える、魔物になってしまったとは言え交流のあった級友

 葛藤が無い訳が無いが、大人しく死んでやるほど軽い命では無い

 どう切り抜けるか逡巡している間も魔物は歩みを進める

 しかし後数歩の所で立ち止まってしまう


「どうした邪竜よ、何故立ち止まる、奴らを殺せ!」


 老婆の言葉にも反応せず立ち尽くす化け物


「この出来損ないが!ならばこの手で」


 そう言うやいなや、老婆から手を突き出し魔力が収束するのが判る

 収束した魔力は事象を起こし途方も無い熱量が渦巻く球体に変化する

 魔法阻害結界の中でこれほどの魔法を繰り出せる事に驚愕するが迎え撃つ事に意識を切り替える


「シールドを張るぞ」


  これだけですぐに反応して理解し行動に移す3人に頼もしさを感じる

  そして私達の前に出現する4重のシールド

  私も防御魔法に関しては少し自信があったが、魔法阻害結界のおかげで魔力を消費した割に薄い頼りないシールドとなってしまった


「消えて無くなれ!!」


 老婆から放たれ、迫り来る炎の球体

 頼りないシールドに全てを賭け、魔力を最大限まで流し込む


 その間に陰が割り込む


 立ち止まっていたランディだった化け物


 だが何故?


 化け物は球体に手をかざすと、球体を霧散させてしまう


 これはランディが得意としていた魔法潰し!?

 あの化け物にはランディの意識が残っているのか!?


「ば、馬鹿な!?」


 突然の事に狼狽える老婆

 魔物は突き出した手を握りこむと老婆に向かって走り出す

 そして老婆に殴りつけるが寸止めで止めてしまう

 その瞬間老婆は吹き飛び3秒ほど空中遊泳をした後、床に落ちて動かなくなる

 まるで老婆を超える巨大なこぶしで殴られたように


 そして化け物も倒れ込み動かなくなってしまった

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