第19話
ドルトスさんが唖然としていたのも束の間、子供のような笑顔になって続きを促してくる
アレだ、探してたおもちゃをやっと見つけた子供の顔だ
「刻んでないとはどういう意味だい?さぁ包み隠さず全部教えてくれ」
なんか爛々と目が光ってるように見える…
「別に隠すような事じゃ無いですよ。まず無属性の魔力の塊を作ります、次に魔方陣を塊に思い描くか書いてある物に載せて転写します、それを魔方陣を書きたい物に載せて魔方陣の部分に魔力を流して焼き付けます。以上です、簡単でしょ?」
日本人なら判子やスタンプって言えば判りやすいかな?
アレを魔法で再現しただけなんだよね
何故かドルトスさん頭抱えちゃったよ
ルクシス主任とキシリアさんはぽかーんとしてる
「これは……正確な魔力コントロールの賜なのか?」
「ねぇ、知ってる?普通は彫刻で刻み込んでいくか、魔力の籠もった専用インクで書いていくんだよ。あの複雑怪奇な魔方陣を、一発勝負で」
「そう言われましても……」
そう言えば学園の図書館で魔方陣の本は読んで書き方とか刻み方とか書いてある通りにやってみたけど、面倒くさくてこの方法思いついたんだよな
近しい人で魔方陣に詳しい人は居なかったし、自室で内職のようにやっていたから誰かに見せた事も無かった
突然頭抱えていたドルトスさんが突然立ち上がると、机に向かうと書籍を漁りだしてお目当ての本と紙を持って戻ってくる
「ランディ!何でも良いから実際にやってみてくれ!」
渡されたのは魔方陣入門
入門と言ってもそこは複雑な魔方陣、本当にコレ入門なのかと問い詰めたい内容で、思わず床に叩きつけたくなったのは良い思い出
そして天才型の2人に振り回された結果、いくつかの魔方陣は覚えてしまったのは自分でも呆れてる
まぁ、かなり良い小遣い稼ぎになったので喜んでやってたんだけどね
そう言えば稼いだお金冒険者ギルドに預けてたけど、こんな形になって引き出せるのかな?
それはさておき、紙に書き出して問題ないと言えば変色系かな?
光ったり熱が出る系はどう考えてもフラグでしか無い
お目当てのページを開いてっと
「それじゃ魔力を流すと黒くなる変色の魔方陣にしますね」
ドルトスさんが見逃すまいと目を見開いて食い入るように見てる
目が血走っててちょっと怖い
「ゆっくりやるので、そこまでしなくても大丈夫ですよ」
「大丈夫だ、しっかり見ている」
なんか大丈夫じゃないっぽい…
気を取り直して始めますか
「まずは魔方陣を転写する魔力の塊を作ります。写すだけなので厚みも色も要らないですけど、判りやすいように厚みと色を付けてます」
そう言いつつ本の上に、厚さ1cmぐらいの丸い水色の魔力塊を作り出す
「これを魔方陣の上に載せて読み取らせます」
本に書かれている魔方陣に作り出した魔力塊を軽く押しつけて読み込み
コピー機やスキャナー知ってれば説明しやすいんだけどなぁ
ここで問題発生、魔力塊が黒くなってしまった
ってそりゃそうか魔力流すと書かれた物を黒くなる魔方陣だもんね
普段は色なんか付けずにやってたからなぁ
と言うわけで魔方陣を白くして見えやすいようにして、 写し終わった魔力塊を浮かせて、写した面をドルトスさんに向けてちゃんと写っているかどうか確認して貰う
「おぉ…ちゃんと写ってる、それに魔方陣もちゃんと作用している」
「インクのあるなしで判断すれば大体上手くいく行きます。途切れたり要らない物があったらこの段階で修正すれば大丈夫です」
今度はドルトスさんが持ってきた紙に押しつけて、燃えない程度に焼き付けて終了
魔力塊を消すと紙にくっきりと魔方陣が描かれている
「今回は燃えない程度に焼き付けましたが、魔方陣と魔力塊で凸凹を作ってインクを塗って押しつけて写す方法もあります」
ドルトスさんは紙を引き寄せると写された魔方陣を食い入るように見た後、魔力を流したりして紙が黒くなったり戻ったりするのを繰り返し観察している
と思ったら突然立ち上がって部屋を出て行ってしまった
「あーあ、行っちゃった」
「これはしばらく帰ってきませんね」
「何処に行ったんですか?」
「古巣だよ、きっと今見たのを古巣のみんなで再現しようとするんじゃない?」
「そう簡単に再現できるとは思えないけどね」
2人とも呆れたような顔でこっち見ないでくれませんかね?