第16話
翌日、流石に今日は日替わりメイドさんは居ないようで、ミシュリーさんが給仕してくれた
人間(?)慣れとは恐ろしい物で、この超快適な生活環境に慣れ始めている
うーん、冒険者になる為に平民と同じような生活を一通り出来るようにしてきたけど、快適環境から抜け出せるかな?
食後の紅茶を飲みながら馬車の時間を待っていると、客間にノックの音が響く
ミシュリーさんが対応に出て、細長い箱を持った1人のメイドさんを連れて戻ってくる
メイドさんは少し緊張した感じで動きが硬い
「ランディ様、仕立屋のミネアより御注文の品が届いております」
「こちらになります」
ミシュリーさんの目配せでメイドさんが目の前のテーブルに箱を置いてくれる
箱を開けてみると、入っていたのは杖と腕輪
服の打ち合わせの時にお願いしていた物だ
実はこの体になって歩くのが苦手になったのだ
正確にはゆっくりと歩くには、かなりバランスに気をつけないと転びそうになって気が抜けないんだよね
一番歩きやすいのは、人の早歩きぐらいのスピード
それだと色々と支障を来すので、材料を用意してもらって杖を作ろうと話してみたら、あれよあれよと用意してもらう事になった
その流れで今の無骨な弱体化の腕輪も新調する事に
とりあえず派手すぎなくて丈夫な物でお願いしたけれど、ミネアさんはしっかりと答えてくれた
杖本体は黒、先端と持ち手が落ち着いた銀色になっていて、持ち手には細工が施してある
腕輪も落ち着いた銀色で、緩やかなスパイラルの細工が施してある
センスがある上にたった1日で仕上げてくるなんて、しっかりお礼を言わないとだな
「ミネア様より言付けを仰せ遣っております」
「どんな伝言ですか?」
「『お披露目の衣装は従業員一同、総力をもって当たっています。仕上がりを楽しみにして下さい』っと言付かっております」
凄く気合いが入ってるけど大丈夫かな?
何故か一抹の不安が……
時間になったので先ほどのメイドさんに見送られ王立魔術院へと向かった
どうやら彼女が今日の日替わりメイドさんだったらしい
ちなみに杖のお陰で歩くのが非常に楽になった
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「主任を務めるルクシスです、専門は魔法学」
「僕はキシリア、専門は薬学です」
「魔方陣を専門に研究しているドルトスだ、よろしく」
いかにも急いで運び込みましたと片づいていない部屋で、研究班の顔合わせとなったのだけれど、皆一様に疲れた顔をしている
しているのだけど、目だけは輝いている
アレは新しいおもちゃを目の前にした子供の目と同じだ
「ランディです、よろしくお願いします」
「話を聞いて会えるのを楽しみにしていたよ、ただ次何かやる時は先に一言言って欲しいのでよろしく」
「えっと、何のことでしょう?」
「昨日の事だよ、院長の気まぐれだとは思うけど家を2軒魔法で建てたって?お陰で想定以上の魔力量がある事が判って、今日からのテスト内容を見直さなきゃいけなくてね」
ルクシス主任は盛大にため息をため息をついて突っ伏してしまった
残りの2人も同じような状態で、キシリアさんに至っては半分船漕いでる
「あー、何か済みません」
「これも仕事だからねぇ、はははは……突貫3日で仕上げた資料が全部リテイクなんて、はははは……何とも思ってないよぉ~」
これヤバいやつだ
このままテストやったら事故起きるんじゃ無いか?
うーん新入りだし、提案は気が進まないけど言うだけ言ってみるか
「あの、提案なんですけど、皆さん疲れてるようなのでいっそテストは明日からにしませんか?」
突っ伏して呪詛を吐いてたルクシス主任が勢いよく跳ね起きてる
「いいのかい?そうしてくれるとありがたいけど…」
「か、構いませんよ。休んでる間に図書館に行きますんで大丈夫ですよ」
「すまないがそうしてくれ、おいキシリア寝るな~ベットまでの我慢だ」
3人はのろのろとゾンビの如く居住区に向かっていった
大丈夫かな?
ミシュリーさんに連れられて魔術院の図書館に来てみれば、学園の図書館なんか比較にならないほどの広さに、整然と並んだ本棚にほぼ隙間無く本が収められていた
この体になったのが呪いのせいなのは、あの呪いをかけた本人の証言から判っているので、とりあえず呪い関係の本から読んでいく事にした
読んでいる間に視線をいくつか感じたけれど、場所が場所なのか誰も話しかけてこなかったのは助かった
数冊読んだところで帰宅時間となったので部屋に戻った
戻ると朝のメイドさんが風呂を用意していて強制的に連行
隅々まで磨かれました…