第1話
煌びやかなホールに流れる楽団の優雅な演奏
縁を繋ぐために、そして最後の思い出にと
そこかしこで話に花が咲いている人々
王立ブレネスト学園初等部の卒業パーティーは第1王子の卒業と相まって例年より豪華で厳重な警戒の元、つつがなく進行している
では自分はどうかと言うと、そんな華やかさを余所に壁際で用意された軽食に舌鼓を打っている
自分は子爵家の三男、しかも明日から貴族籍から離れて平民となる身
ありがたい事に援助や後ろ盾の話は多かったが、全て断った
憧れの冒険者になる為に
周りからの評価は「半端物」または「変わり者」
前者は生まれ持った魔法の適性、後者については何としてでも貴族として
生き残ろうとする者の中で、進んで平民にしかも危険がつきまとう冒険者になりたがる者はまず居ない事から
それ以外にも在学中に色々やらかしたせいもあるが、今では良い思い出だ
「こんな所で壁の花気取りかい?ランディ」
「ごきげんよう、ランディ君」
「これはデライズ様、それにスーネリア様もご機嫌麗しゅう」
なんとなく感傷に浸っていた自分に声をかて来たのは、リンブル侯爵家嫡男
デライズ様とその婚約者カルトマス侯爵家次女のスーネリア様だった
「堅いなぁ、このパーティーが終わるまではまだ学友だろ?」
「そうそう、私達の師匠でもあるだから、気軽に呼んでくれて良いのよ?」
「それでも一応ケジメは必要ですから、ご容赦を」
「相変わらずつれないなぁ」
仕方ないないと言う顔のデライズ様に、拗ねた顔のスーネリア様
このんなやりとりも半年ぐらい続いて、彼らが本気で格下の子爵家で平民に
なる自分を同じ立場と思って話してくれる事に、感謝の念が絶えないが、正直師匠と言われ るのはどうかと思っている
確かに魔法や戦い方に関して請われて教えたけれども、2人は天才型
1教えれば10を理解してくるし、その上応用もしてくる
それに比べて自分は凡人の上に半端者
自分はまだやれると諦めきれずに努力してきた分と、幸か不幸か自分には
『異世界での前世の記憶』を持っていたので、記憶を頼りに試行錯誤できたのは大きかった
出会った当時で2人より上だっただけで、今となってはどうだろう?
確実なのは、1年もしないうちに置いて行かれると言う事
「それよりもランディ君、感じない?」
拗ねた顔から神妙な顔になって聞いてくるスーネリア様
それに反応してデライズ様もまじめな顔をする
「えぇ、この感じはあまり良くないモノのようですね」
「やはり……俺は体に纏わり付くような、ピリピリした表現しずらい感じがする」
「私は、背筋がサワサワするようで、ねっとりとしたような感覚ね」
感じ方は差があるけれども、2人とも気がついてたようだ、この会場に漂う名状しがたいモノに
「気になって会場を一廻りしましたが、根源的なモノは解りませんでした」
「ランディ君でも解らないなら私達ではお手上げね」
「そうだな」
いやいや、なに見合って納得しちゃってるんですか
察知系ならデライズ様が、探知の魔法はスーネリア様の方が上でしょうに
盛大にツッコミしたい気持ちをグッと堪える
それに、原因が解らない以上どうしようもないのも事実
「気になるのは仕方ないですが、警備に当たっている騎士団に任せて我々はパーティーを楽しみましょう」
「そう…だな、挨拶回りの途中だからこれで」
「忙しくても偶には手紙で居場所教えてね、結婚式に呼ぶから」
「ははは、お幸せに」
納得しきれない顔を見せたが、気持ちを切り替えたのか笑顔で離れる
そんな2人を深く礼をして送り出す
2人はこの後高等部に進み、卒業後に結婚を予定している 家同士の政略結婚なのにすでに相思相愛、天才型の才能を備えた上で努力を忘れない人当たりも良い2人を見ていると、僻み卑屈になって八つ当たりをしたくもなるが、同時にあの2人には末永く幸せであって欲しいとも思っている
参ったなぁ自分の器の小ささに嫌気がさして、自己嫌悪が押し寄せてくる