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貴方からの贈り物

作者: かさかささん

「サンタクロースに俺はなる!」


 ――放課後の図書室。


 そこには一人の男子生徒と、本の貸出しカウンターに座る女子生徒以外には誰も居ない。静寂の象徴のようなその空間で突然大声を出して謎の発言をした男子生徒は、参考書をバタンと閉じてから席を立つ。


「ンフッフーン。サンタになればー、女の子の靴下触り放題ぃ~♪」


 特殊性癖が駄々漏れの歌を口ずさみながら、貸出しカウンターに向かう。


「あっ、あの先輩……急にどうしたんですか?」


「ハッハッハ、おかしな事を言う後輩だ。黒い靴下が今日も素晴らしい後輩に教えてやろう、今日から俺は先輩ではなくサンタさんだ!」


 静かな世界を乱す声。参考書を閉じた男子生徒は高校三年生。つまり受験を控えた男。受験ノイローゼで頭がおかしくなったかのような発言に、後輩の女子生徒は心配そうな表情を見せる。


「だってサンタになれば良い事尽くめじゃないか。女の子の靴下もクンカクンカし放題。さらに同業者の女性サンタさんなんて、まるでグラビアアイドルみたいなナイスバデーの女の子達ばかりで最高じゃないか!」


「それはグラビアアイドルがサンタのコスプレしているだけです!」


 反論する後輩女子。しかし夢を諦めない男子生徒。


「それに俺って靴下フェチだし、人にプレゼントするのも好きだし天職では?」


「違います! サンタは先輩みたいなどうしようもない靴下フェチなんじゃなくて、靴下にプレゼントを入れるのは元々靴下に金貨が入ったのが由来で――」


 懸命にサンタが靴下フェチではない事を話す後輩女子。


「それに他の図書委員の子にも、誕生日のプレゼントだって言って柄の悪い靴下渡すような人ですしプレゼントのセンスも無さすぎです!」


「良いじゃないか、毎日履く物なんだから実用性もあるし俺も喜ぶし!」


 欲望のままにプレゼントを贈りつけていた男子生徒に対し、後輩女子は軽蔑の眼差しで真実を語りかける。


「皆が先輩の事気持ち悪いって言って、他の子達はもらった靴下その日の内に捨てていましたよ」


「そんな……確かに君も含めて誰も俺のあげた靴下履いてないなとは思っていたけど、勝負下着ならぬ勝負靴下として温存しているのかと思っていたのに」


 クッ。


 悲しい。プレゼントが喜ばれなかった事が。そして何より、靴下を履いてくれなかった事が。


「それに先輩、彼女居ませんよね?」


「うぐぅっ!」


 深く胸をえぐる言葉。


「サンタはクリスマスイヴの夜にプレゼントを届けるんですよ。カップル達がいちゃいちゃラブラブしている中で、寒空の中一人でプレゼントを届けるなんて、恋人も居ない先輩が耐えられますか?」


「あ、あわわわわわわ」


 男はサンタを舐めていた。靴下が好きなだけでなれる簡単な仕事ではなかった。子供達に夢を届けるには、自分が強くあるべき必要があった。孤独な男には、とてもじゃないが耐えられそうに無い。


「サンタさんごめんなさいぃいいい。俺が間違ってましたぁあああああ。真面目に勉強して受験に挑む事にしますぅううう!」


 天を仰ぎ、サンタクロースに謝罪する男子生徒。そんな滑稽な姿を見た後輩女子はクスリと笑いながら、もぞもぞと足を動かした。


「寒いから靴下重ねて履いてるけど……ばれてないよね?」

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