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8 なんか森でサバイバルしてる…4


◇◇◇


とある迷宮(ダンジョン) かなり昔


「何で…何であんたがこんなことをするんだ!」


「お前はイレギュラーだ…。諦めろ。

手荒な真似はしたくなかったが、お前のバカげた魔素を枯渇させないと、封印もできない…」


燃えるような赤髪に紅の瞳、臙脂の礼装と緋のローブを纏った男が杖から稲妻を発する。


稲妻は左右に分かれ、天井に打ち付けた杭に流れる。

杭からは太い鎖が中央の台座へと伸び、そこには上半身を露わにした男が両手両足を拘束されていた。

ちょうど十字架に磔にされたように男は宙に浮いている。

稲妻は、杭に落ちると赤色の電流となって、鎖を伝い、宙吊りになった男を襲う。


「ガアアアッー!」


半裸の男は三十代後半くらいか、黒い髪に黒い目、鍛え上げられた肉体には幾つもの傷があった。

対して赤髪の男は二十代前半にしか見えない。


「何でだ!俺は「呪い子」として蔑まれながらも、ここまで多くの人を救ってきた!

人間も、亞人も、魔族もだ!

脅威となる魔獣も倒した!その俺がなぜあんたに…!あんたがこの呪い子と俺を、一緒にしたんだろう!」


「違うな…お前はいつも言葉が多い…」


「何でだ…何でなんだ…‼︎」


チッと、赤髪の男は苦虫を潰したような顔になる。


(とんでもない役を押し付けやがって…)

(「「すまん」な…」「申し訳ありません」)


「やり方がわるい…。気楽に暮らしてればよかった…。お前のスキルはイレギュラーだ…。

魔素を手放せ…。

封印しても数百年で復活できる…」


「…カルドやサフラ聖女はどうなった?あいつらもこうなってるのか?」


「本当に理解力が足りない…。ヤツらは、このダンジョンの最下層でお前が死んだと思うだろう…。

それだけだ…。

その後それぞれの国に帰るだけだ…。

ただお前が再生した時には、ヤツらはもうこの世にはいない…。

お前が取得したスキルは数千年かけて準備されたものだ…。

今あってよいものではない…」


(「喋りすぎだ‼︎」)


(黙れ…!こいつは嫌いではない…)


十字架の男が叫ぶ。

「何だと!俺は脅威を殲滅し、平和な世界を目指した!その代価がこれか⁈」


「…その…

その脅威を俺達が作っていたとしたらどうする…」


(「「「ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!…」」」)


男が目を剥く。

「何だとっ!!」


思考を焼き尽くすほどの、拒絶の意思が心身に侵入してくる。目や鼻や口から血液が溢れ出す。


(…我にまかせると言っただろう…)


十字架の男が言う。


「何だよそれ…。じゃあ、ジストも、モンド皇帝も、サファ王女も、ジュール親衛隊のみんなも、クリスタや、ラルドの市民も…みんなお前が殺した…というのか…」


「ああ…」


(「「「ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!ヤメロ!…」」」)


(…どうせいつか敵対するんだろ…?)


「許さない…何度生まれ変わっても許さない…」


「ああ…もう眠れ…」

赤い稲妻が男を襲う。


「許さない…」

稲妻の光が増す。


「ああ…いい夢見ろよ…」


◇◇◇


ダンジョンの転移陣から丘に抜けると、三つの太陽がほぼ同時に地平に沈む時だった。


(これほど後味がわるいのは、数千年ぶりだ…)


赤髪の男が夕日に振り向くと、髪の色は金色に変わり、背には金の翼が生えていた。


空に金色の光線が駆けていった。


◇◇◇


バリバリバリ…!


結界に突っ込んで、ニ分くらい全身をバリバリさせて、大イモリが静かになった。


『…上がり…』


頭の中でナゾナレーションが響く。

これはいわゆるレベル的なテンプレだろう。

前は言語的テンプレだったな。

こういうものがないと異世界はつまらない。

不完全なのはレベル足りないとかかー?

少しワクワクするわ。


でもとりあえず、すっかり目が覚めてしまった。

このヤモリ食えるかなあ?

あ、栗ぶちはどうなった?

川岸で横たわって、フーフーいってる。

うーむ、栗ぶち…。瀕死なナゾイヌ。うーむ、どうすべきか?


とりあえず、栗ぶちから貰った、紫ガエルの解毒草を口に突っ込んでみた。

ゲホッとかいって吐き出した。


仕方ねーなー。

口でクチャクチャ噛んでからムリやり突っ込む。

何とか飲めたようだな…。

オレが食った時、栗ぶちが驚いてたから、一口でいいだろう。


そういえば、栗ぶちって、オスかメスか?

後ろ足を上げてみる。

???…何にもない…。

ただ風が吹いてるような…オスでもメスでもない。

やっぱ魔物だな…。


これからナゾヤブイヌ栗ぶち魔物と命名しよう。

魔物と言えば、ヤモリの魚薫製への食いつきが凄かった。魚は普通食ってるだろうし…何か原因があったのか?


結界に突っ込むほどの理由…。

うーむ、栗ぶち持参の香草という可能性はある…。


魔物を惹き付けるだけなら麻薬かもだが、何か効果があれば、栗ぶちを治癒できるかもしれない。

ローズマリーもどきとパセリもどきを食ってみる。

ん、変わりないな?


一本残されたカジカもどき…ひとつまみちぎる。

あ、何かシュワッとしたぞ⁈

カジカもどきについてるローズマリーの葉を噛む。ちょいシュワッと…。


パセリの葉は…う、かなりシュワッと⁈

カジカもどきから、パセリとローズマリーの葉っぱ残骸をチマチマ引き剥がして、口でクチャクチャする。


ちょい汚いが栗ぶちに飲ませてみた…。

お、何か栗ぶちが、金色にシュワーとなっているぞ…加熱したのががよかったかな?


よし!

大ヤモリの解体はとりあえず後回しだ。ナイフとか手袋とかないし、寄生虫とか怖い。

パセリとローズマリーでポーションもどき作りだ。


◇◇◇


夜なので火をおこすのに大分かかった。

棒をぐるぐるしすぎて、肩が凝ったので、気分転換に大ヤモリの腹を割いて、内臓を取り出した。

ヤモリ遺体は結界の外に置いてある。


痺れ尻尾を回収しようとしたが、石ナイフでは切れなかった。

目玉も刳り抜こうとしたが、何かズルッと付いてきそうでやめた。

寄生虫が怖かったがって、堪え性がないなオレ。

川の水飲んでる時点でアウトかも…。

ヤモリ内臓を結界の向こうに放り投げると、バッシャンバッシャン盛大な音が聞こえる。多分、共食いだろう…。


向こう側に行く気はしないな…

葉っぱ鍋を作って、パセリを入れる。

煮立ったら、ローズマリーを少しずつ。

味見をしても、あまりシュワっとこない…。


(岩塩か?

違うようだ。

あ、葉っぱ鍋の素材が違った。

月明かりだとよくわからんのだよ…。

これかな?)


千切って少しずつ入れる。

あ、ほんのり光ったぞ!

かなりシュワっとする。


『…しは…』


頭の中でナゾナレーションがする。

うん、薬作りのスキルとかをゲットかな?

この世界、何かするとすぐにスキル貰えんのかね?緩いな…。


ポーションもどきを川に垂らすと、魚がムッチャ寄ってきた。

漁に使える!でもこれは瓶とかないとまずいな。危険生物が寄ってきそう…。


栗ぶちにポーション飲ますと、体がポワーンと金色に光り、栗ぶちの辛そうな顔が和らぐ。

(効いたようだな…)

体にかけるのはやめておこう。魔物が寄ってきたらまずい。


空が明けてきた。

最初の太陽が登ってくる。

ポーションを少し川に垂らし、足元に寄ってきた魚を手で盛大に岸に打ち上げる。

夜明けの大漁だ!

捌くのは、もっと明るくなってからだな。

とりあえず、そのままのカマスマス串とヤモリの切り身に岩塩を振って焼こう。

あ、ポーションの暫定保存方法思い付いた。

これなら魔物も寄って来ないだろう…。

一日くらいしか持たないだろうけど。


昨日は河原で寝たけど、雨が降って増水したらヤバいな。

崖の中腹に穴でも掘るか…。

栗ぶちも河原に置きっ放しはまずい。

崖の途中の平らなところに草を敷き、栗ぶちを寝かせた。


体温が下がってもまずいから、乾いた草を栗ぶちの上に掛けてやる。

近くの草に焼けた魚を置いておいた。

何か生贄の儀式みたいだ。


ヤモリも焼けたようだ。

食ってみる。

川魚味だ。まあまあだな。

甘露煮なんかいけるかもしれない。


(そういえば、オレってどうなってるんだ?)


水たまりに映る自分の顔を見てみる。

「うわっ!」

目付きが悪いし…栗ぶちより悪い…。

三白眼でまるで、怒髪天を衝いた途中で目付きが固まったような…何となく馴染みのある顔だが、記憶は朧気。


オレ何歳だ?


顔付きだと、十三〜十五歳といったところか?

ポンチョの隙間から下を見てみる。

あ、ちょっと生えてる。

この感じだと、手術の必要もなさそうだ。

第二次性徴の真っ盛りか?


こことは違う場所の記憶があるが、その時の自分が何歳で何をしてたとかわからない。

漠然とした知識の引き出しがある感じだ。

そう言えば、脳内ザッピングしたな…。

あれは明らかに自分の体験したことと感じた。

しかし、一方は多分女か?もう一方は爺のようだった。


何か気持ちよくなってきたな…?

笑ってみる。


「アハハハハーッ!」


何かホントに気持ちよくなってきた。


「アハハハハーッ!」


「オレは名無しの煎餅だー。

アハハ、超受ける。

目付き最悪ー。

コンビニ行きたーい。メンズクリニック必要なーい。栗ぶち起きなーい。これからオレは異世界で屯田する。異世界で伊勢街道を登ってアカフ◯食うー!栗ぶちー!


クッリ、ブチッ!

クッリ、ブチッ!

クッリ、ブチッ!

アハハハー!」


(ヤバい。ヤモリ肉だ、笑いが止まらん。特製解毒薬飲まねば)


「ハーイッ!飲んーで!飲んで!飲んで!

解毒!

ゲッ、ドッ、クッ!ハイッ!

ゲッ、ドッ、クッ!ホイッ!

ゲッ、ドッ、クッ!

アハハハハー!」


ガン‼︎


いきなりガツンと後頭部に衝撃を受け、意識を失った…。

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