6 なんか森でサバイバルしてる…2
◇◇◇
目が覚めると、もう日が高い。
怒涛の日々だな。
いったい何日経過したかわからん。
一晩だけだったりして…。
熊公の軽い一撃で肋骨が何本かいってるようだ。
あ、脇にナゾ果物らしきものがある。
バナナの形をしてるが、皮は甘夏のよう…バナナミカン…。
貢物か?
何だこりゃ?
「カウッ!」
あ、栗ぶちが戻ってきた。
「お前が持ってきてくれたのか?」
「カウッ!」
栗ぶちを育てたブリーダーさんに大感謝だな。
バナナミカンを貪り食う。味は超酸っぱい夏ミカンだ。
極楽、極楽。
…「極楽」ってなんだ?
「ありがとうな。お前も食うか?」
栗ぶちがぶんぶん首を振る。
普通に言葉が通じやがる。
「カウッ…」
バナナミカンの隣に葉っぱが山盛り置いてある。
栗ぶちは、干からびつつある双頭ガエルと葉っぱへと交互に顔を向ける。
「解毒薬か?」
「カウッ!」
ジーン…。
思わず目頭が熱くなる。
栗ぶち犬のお父さん(ブリーダー)、お母さん(ブリーダー)ありがとう。
この目つきのわるいヤブイヌもどきは、ほんとに良い子に育ちました。
「グルゥ…」
あ、また歯剥いて睨みやがった。
栗ぶちから貰った草をおもむろに食う。
栗ぶちが「カワワ」と心配そうな顔するが、ガン無視だ。
蘇ったらしき人間が(?)は多少の味覚変動など意に返さない。
…うん、ちょっとスッとする。
残りの草を丸めてギュッとして、毒ガエルの粘液やら何やらで紫色になったところに塗る。
青汁塗料だ。
顔だけならジャングルのシークレットミッション。
栗ぶちに目配せして、さあ出発だ、…と思ったけど、ど根性になりそこないのカエルに目がいく。
こいつは、オレの今唯一の武器、いや盾だ。
こいつをぶら下げておけば、双頭な熊も後ずさる。
ただやっぱ毒は怖いので、大きな葉っぱで何重にも包んで、蔦で巻いて、木の枝に結んだ。
さ、そろそろ出発か…ってどこに行こう?
「カウッ」
栗ぶちが、こっちに来いとでも言うように、走り出した。
こいつ絶対オレより頭良いだろ?
ま、考えたら負けだ。
森は亜熱帯とまでいかないが、温帯みたいだな。
落葉樹っぽい大小の木々に下に、下生えの草やシダが風に揺れ、鳥の鳴き声が響く。
時々、凶悪そうな獣の吠え声も聞こえる。
足元を黄色っぽいスライムが回転するようにのっそり動いていったり、金色のキラキラした光りの粒が空中を漂っていたり…。
時に栗ぶちが止まって息を潜める。栗ぶちの後ろでオレも息を潜める。
二つ頭の大蛇やら、大猪やら、凶暴そうな豹やらが通り過ぎていく。
結構二つ頭が多い。
戦っても勝てそうもないし、見つかっても逃げられそうにない。
ジッと隠れるだけだ。
その内に小高い崖に辿り着いた。下に蛇行して川が流れている。
「ここか?」
「ガウッ!」
ヒャッハー!川だ!水、水!
まず水を飲むと、隣で栗ぶちも飲んでいる。
大丈夫そうだな。
ポンチョ(貫頭衣)もそのままに川に入ってジャブジャブすると、栗ぶちが迷惑な顔つきをして、上流に移動して、また水を飲み出す。
オレはまっぱ(全裸)なってポンチョをジャブジャブ洗う。
ついでに川に潜って泳いでみた。
平泳ぎってやつか?
驚いたことに、川には魚がたくさん…。カマスとアユを合わせたようなものや、金色のカジカのようなものも水底にいる。
これは食えそうだ。
しばらく泳いでいると突然カラダがビキッときた。
あのナゾ結界だ。
結界を抜けると、辺りの魚が少なくなった。
魚には結界の抵抗は少ないようだ。ちょいピキッとしつつ平気で行き来している。
そうか、蛇行する川の一部が結界に入っていて、結界の外には、魚を捕ったり、漁をしたりするヤツがいるのかも…。
対して、結界の中のナゾの二つ頭達は魚を捕らないのか…⁉︎
…うん、どちらで野営するにしろ漁は結界内だな。
漁の仕方を考える。
うーむ?網もカゴもない。
作ってるヒマもない。
木で銛を作るか?
槍っぽくしたら、武器にもなる。
ただそれで捕れるか?
どうもこの体そんなにスペックが高いとも思えない。
確か石打漁とかあったな。
石同士を思いっ切りぶつけて魚を気絶させるヤツだ。
やってみよう!
ガン!!……。
ダメだ。魚は盛大に逃げるだけ…。
あ、思いついた。
川岸にある水たまりを拡張して、少し深くしていく。
ちょっとした小さな堰を作るんだ。
取り出した石ころは、焚き火の土台になるよう円形にら積み上げていく。
木に掛けたポンチョが乾く頃には、土台の石も乾くだろう。
小堰の中には、魚が逃げ込みたくなるよう、柴みたいな葉っぱの付いた枝を突っ込んでいく。
ナイフ用になるような石を用意して…あ、石を割って尖らせるんだっけ…。
ガン、ガン、ガン!
お、いい具合に刃先っぽいのが三つできた。
もう一つはデカイけど、刃先は鋭い。
これは斧になるな。
とりあえず槍と斧を作った。
しかし、この世界、日が長い。
まだ三つのナゾ太陽は沈まない。
あとは、火種だけど、まあとりあえず漁だ。
最悪、魚に寄生虫がいても背に腹はかえられぬ。
まず、栗ぶちにやって、試してみよう。
「グルゥ…」
栗ぶちは疲れたようで、日向ぼっこで丸まっていた。
栗ぶちがこちらを睨む。
さて、と、オレは大きな石を両手で持って川の中へ。
堰の方へ追い込めるように、魚の進路をゆっくりじゃまをして、魚が集まってくるよう静かに待つ。
ガゴン‼︎
石を思いっ切り、堰の手前の石にぶつけ、そのままサンブと両手を広げ、堰を堰き止め、中には入れた柴を底から川岸に放り投げた。