3 何か奇妙な森に来てみた…
◇◇◇
眼つきがわるいヤブ犬もどき、
なんか犬とフツーに意思疎通できてるし…。
でも扉の中は誰もおらず、真っ暗だった。
そういえば通過した男達の周りには光る球体が浮かんでいた。
光る魔法かー!
「光れ!」
「ライト!」
「イルミナなんとかっ!」
ダメだな…。
栗ぶちがジト目を向けている。
暗闇に目が慣れると、ドアの中は人がどうにか通れる通路となっていた。
少し曲った突き当りが、広くなり石壁がむき出しになっている。
おそらくここが出口のドアだな。
栗ぶち犬は突き当りの隅にうずくまる。
あー同じ作戦ね。
急いでドアを閉めるヤツの隙を突くと…。
でも密室内だから難易度高そうだなあ。
そうこうすると、ドアが光って開いた。
◇◇◇
と○でもドアが開いた瞬間。
「ガウッガウッガウッ‼︎」
って栗ぶちがドアに突っ込んでいった。
…オイっ!力押しじゃねーかよ…。
仕方ない。
オレも、ウワーっと叫びながら、突っ込んででいく。
突っ込んでいった先には二人の男。
一人は栗ぶちの体当たりで足がもつれてすっ転んだ。
栗ぶち、光っているナゾ球体に飛びかかり、かき消す。
一瞬で闇の中…。
その後はダッシュだ!とにかく猛ダッシュ!
…ダッシュって何だろう?
こういう風になりふり構わず突っ走ることか?
「◾️◾️◾️‼︎」
「◾️◾️◾️◾️‼︎」
男達がナゾ言語で追ってくるが、ガン無視だ。
とにかく走る。
栗ぶちの後を走る。
オレはマタギだ!熊を狩るんじゃ!…いや逃げてるだけだけどね。
◇◇◇
栗ぶちは森に入っていく。
オレも後に続く。
まだ男達は追ってきているようだが、距離は離れていった。
こちらは走っているが、向こうは意外と慎重なようだ。
魔法世界の夜の森…。
多分警戒もせずに走り回るのはヤバいんじゃないか?
危険度高そうなのはお定まりか。
そうこうすると、体がいきなりビキっと痺れた。
「あ、イタっ?」
何かを通り抜けたみたい?
体がチリチリする。
…栗ぶちは…ああ、後ろの方にいて、こちらを睨みつけている。
「グルゥ…」
「何だよ?それとこれは何だ?」
透明だが、幕のようなものがある。
ちょいと手を突っ込んでみても少しチリチリするだけ…。
不快感はあるものの行き来はできる。
「もしかして、お前、これが嫌なのか?大丈夫だって。こっち来てみろ」
「グルゥ…」
また睨まれた。
「がねーなー」
スタスタ歩いていって、ボロ栗ぶち犬の両脇に手を突っ込んで持ち上げる。
「ガウッガウッガウッガウッ!」
スゲー抵抗だ。肘噛もうとすんな。
でもムシだ。
「お前だって、こっちに行こうとしたんだろう?」
「…カウッ…」
「平気だよ」と言ったことがありました。
バリバリバリバリ!
結界らしきもの、まあ結界だな、を抜ける時、栗ぶちを中心に、黄色というか金色の光が包み込み、オレ達を痺れさせる。
「アバババ…!」
電気のような感電ではなく、身も心も魂が感電する感じ。
くらった。
まったくウザい。
「ガウッガウッ!」と栗ぶちはまだ少し残る金色の光を睨みつけ、続いてオレを睨みつける。
ただダメージはそれほどでもなかったようだ。
オレがいたからダメージが分散されたか?
「そんな怒んなよ」
と、栗ぶちを撫でようとしたら、噛まれた。
ハリセンくらわしたい。
いつの間に追跡者はいなくなったようだ。
人一人と小犬が逃げたくらいで、騒がないだろうな?
騒がないでいてもらいたい。
オレだったら上司に黙っとくね。
どんなイチャモンつけられるかわからんし。
自分がモブだったら正直は似合わないよ。
オレもモブっぽいから正直に生きないし。
あ、空が明けてきた。太陽も三つあらぁ…。
昼間、百℃とかなったらどうしよう…。