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就職先は宇宙船の艦長さん  作者: 光晴さん
惑星『スライブ』~惑星『クトゥ』へ

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第8話 何か忘れていないか?




アステロイドベルトを抜ければ、さらに大きく木星が見える。

太陽系で最大の惑星と言われる木星。

その縞模様が、動いているのも見えるほど近づいていたが、エヴァのセリフで我にかえった。


『マスター、亜空間長距離ワープに入るよ。

ちゃんと艦長席に座って、シートベルトを締めてね!』


いつの間にか、俺は席を立ち木星に見入っていたようだ。

すぐに席に座り、腰に付けるシートベルトを締めた。


「シートベルト、締めたぞ」

『それじゃあ、惑星「スライブ」へ向けて、亜空間長距離ワープ!』


エヴァの座っている操縦席左のレバーを前へ押しやると、目の前に見えていた木星や星々が光りの線となり、さらにその光の線がまとまって輪っかの通路になり亜空間にダイブしたことが分かった。


……初めて亜空間を利用した長距離ワープを見たが、いろんなSF物で表現されているものとは迫力が違うな。



「……ところで、この亜空間長距離ワープってどれぐらいかかるんだ?」

『目的地の距離にもよりますが、惑星『スライブ』は地球から114光年ほどの距離にあります。この亜空間長距離ワープを使っても、2日ほどかかる距離ですからその間はこのままの景色ですね』


惑星『スライブ』って114光年も離れているのか……。

銀河の端と端か?


「なあカレン、俺の住むこの天の川銀河って端から端まで、どれぐらいの距離があるんだ?」


『それは、直径ということですか?

……マスター、分かっているとは思いますが宇宙の距離は日数で測ります。

キロメートルなどの単位では膨大すぎて、ピンときませんからね。


天の川銀河の端から端までは、約8万光年から10万光年あるらしいです。

今回の運搬であれば、惑星『スライブ』から惑星『クトゥ』の距離は、亜空間長距離ワープを使用して20日になります』


「……そうだよな、分かっていたけど結構かかるんだな」


確か1光年って、光の速さで1年かかるって意味だよな。

光の速さは、1秒間に地球7周半だっけ?そんな光でも1年かかる……。


カレンの話だと、地球から惑星『スライブ』まで114光年離れていて亜空間長距離ワープで約2日かかるということは、1日が約51光年か?

ならスライブからクトゥまで、20日かかるということは……約1020光年!


細かくは違うのだろうが、スライブからクトゥまで、光の速さで1020年もかかるのか。そんな離れたところに、配達って……。


それだけ宇宙は広いということなんだろうけど、頭がおかしくなりそうだ。

地球の人類は、宇宙に進出してこの感覚についてこれるのだろうか?


……不安だな……。




▽    ▽




亜空間長距離ワープ航行、一日目。


亜空間航行に入って、景色は全く変わらない。光のトンネルとでもいうような道が続いている。

また、宇宙船の操縦は、自動操縦が出来ているので今はすることが特にない。

そのため、みんな思い思いの時間を過ごすことにした。


俺は、艦長席で本を読むことに。

たとえ自動航行で、人手がいらない状態でも誰かはブリッジには残っておかないといけないルールになっている。


そのため、今回は俺が経験することにした。



変わらない外の景色を、時々チラチラと確認して日本から持ってきた本を読む。

日本で買ってきた古本の漫画ではあるが、暇つぶしに良いものだ。


亜空間航行の中、亜空間倉庫からマンガを取り出し読む。

何か引っかかるが、使えるのだから理由は知らなくてもいいだろう。

そんな難しいことは、頭の隅に追いやり、改めて漫画を読んでいると俺のお腹が鳴る。


そこへタイミングよく、カレンが昼食のサンドイッチとドリンクを持ってきてくれた。


「ありがとうカレン。

他のみんなは、どう過ごしているんだ?」


持ってきてくれたサンドイッチを食べながら、カレンに聞いてみた。


『エヴァは、トレーニングルームで体を動かしています。あの子はじっとしているのが、苦手みたいなので……。

オリビアは、夜に備えてベッドで就寝中です』


「それじゃあ、カレンは?」

『今日の料理当番は、私なので。夕食の仕込みをしていました』


ということは、今日の夕食は楽しみだな。

あえて、何かは聞くまい……。




▽    ▽




亜空間長距離ワープ航行、二日目。


今日も宇宙船の外の景色は変わらない。


明日には、目的地の惑星『スライブ』が目視で確認できる場所に、ワープアウトする予定だ。

確か、ナンシー班長からもらった資料に、どんな人から荷物を受け取るのか記載されていたな……。


俺は、艦長席に置きっぱなしにしていたA4サイズのタブレットを手に取り、中身を確認していく。

お、これには荷物受け取りまでの手順も記載されている……。


「まず、惑星『スライブ』到着前に、連絡を入れ相手方のアポを取る」


……あれ?アポってとっていたかな?

……ん~、取っていないな。


「やばい!」


俺はすぐに、内線でカレンを呼びだし、オリビアと一緒にブリッジに来てもらった。

今日の夜番はエヴァだから、二人とも起きていてくれて助かった!



「すまない、いきなり呼びだしたのは、明日のことについてだ」

『明日、惑星『スライブ』へ到着です。それが、どうかしましたか?」


「そのことなんだが、この亜空間から相手方に連絡ってできるか?」

『はい、出来ますわよ』

『……もしかしてマスター、アポを取り忘れていることに気付いたんですね?』

「気づいたんですねって、分かっていたなら教えてくれよカレン……」


カレンは笑顔で、俺のためにあえて教えなかったことを伝えてくれる。

何でも、ナンシー班長からの指示があったようだ。


それに相手側にも、新人社員が向かうことは了解済みで新人教育のために協力しているのだとか……。


「とりあえず、オリビアはすぐに連絡してくれ。

ワープアウトして、不審宇宙船と警告を受けたくないからな」

『了解しましたわ』


焦る俺の頭に、カレンが手を置き撫でてくれた。

……撫でられたおかげか、少し落ち着くことができた。


えっと、次はどんな順番が書かれているんだ?



『ところで、惑星『スライブ』のどこに連絡をすればよろしいの?』

「え?え~と、惑星『スライブ』の衛星軌道上にある宇宙ステーション『コーファル』に連絡を頼む。

ミュージー・ハルドという人のアポをお願いすればいいはずだ」


『ミュージー・ハルド様ですわね……』


すぐに亜空間通信を行うオリビア。オペレーターとしての能力は、折り紙付きだな。

10分ほどのやり取りの結果、ギリギリ、アポを取ることができた。


これで、明日の受け取りは問題ないはずだ。


……問題ないよな?









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