第7話 初めての仕事
『マスター、上司のナンシー様から通信が入っています。
メインに回します』
艦長席で、緊張しながらナンシーさんからの通信を待っていると、待望の通信が来たことをオペレーターのオリビアから知らされる。
そして、その場で立ち上がり艦長席から外れて、メインモニターに注目する。
すると、立体メインモニターがナンシーさんの全体像を投影し、あたかも目の前にいるかのように映し出した。
『おはようございます、加藤さん。
今日から業務初日ですが、準備はできていますか?』
「おはようございます、ナンシーさん。
準備はできています。いつでも、大丈夫ですよ」
『よろしい。ではまず、私のことは『班長』と呼んでください。
私に任された、運搬業務の班の一人ということになりますので。
加藤さんの他にも、私の班にはあと六人いますがそのうち顔合わせすることもあるでしょう。今は、初業務に集中してください』
「はい、分かりました」
ナンシー班か。それに同じ班の同僚があと六人もいるとなると、困った時、アドバイスをもらえるかもな。
『では、加藤さんにやってもらう運搬業務について説明します。
まずは、こちらの図を見てください』
ナンシー班長がそう言うと、ナンシーさんの左側に映像が出る。
これは、どこかの銀河のようだな……。
『これは、加藤さんが今いる銀河の全体図です。
『天の川銀河』といえばわかるかしら?
現在加藤さんがいる位置はここ。銀河の端になる位置です。
ここから、もう1つ矢印の指した場所に行って荷物を受け取ってください。
その際、運搬用ロボットを12機用意しました。
それも受け取って今後の役に立てるように、お願いします』
運搬用ロボットか。
そういえば、荷下ろしや積み込みに関しては考えてなかったな。
確かに、荷物の積み下ろしや積み込みは宇宙でやる場合もあるし、特に重いものは無重力下でなければ運べないということもある。
積み込みも荷下ろしも、ロボットがやってくれるなら人手削減になるのか。
『加藤さんが最初に荷を受け取る惑星『スライブ』の衛星軌道上にある宇宙ステーションは、軌道エレベーターの先端にあり地上から運ばれてきたコンテナを受け取る形になります。
コンテナの数は14。
それを積み込んだら、配達場所はここ、惑星『クトゥ』の近くある探索専用ドック船『エトランデル』に届けてもらいます。
惑星『クトゥ』は見つかったばかりの知的生命体のいる惑星で、現在調査をしているところです。
その調査の中心となっている宇宙船に、配達するように依頼がありました。
以上ですが、何か質問はありますか?』
つまり、惑星『スライブ』から惑星『クトゥ』への運搬業務というわけか。
コンテナの数は14。
中身は……あれ?
「班長、コンテナの中身はなんですか?」
『コンテナの中身は、食料と生活必需品ですね。
調査を行っている人たちや、それをサポートしている人たちのものだそうです』
なるほど、食料や生活必需品は現地調達ができないか。
まあ調査中の惑星だから、まず現地調達は無理だよな……。
「あ、あと宇宙海賊の心配はないのでしょうか?」
『この航路での、宇宙海賊の目撃情報はありません。
そのため、新人のあなたの初業務にふさわしいと選ばせてもらいました。
他にありますか?』
宇宙海賊の心配はない。
まあ、絶対はないけど防御もしっかりしているみたいだし、遭遇したら逃げればいいよな。
後、聞いておかないといけないことは……。
「いえ、今のところありません」
『では、資料は送っておきます。
初業務、がんばってください。期待していますよ、加藤さん』
そう言って、ナンシー班長からの通信は切れた。
期待してるか……。俺の初業務だ、その期待に答えられたらいいんだけどな……。
俺が艦長席に戻ると、カレンから送られたばかりの資料を渡される。
A4サイズのタブレットに、ナンシー班長が話していた内容が表示されていた。
「エヴァ、亜空間アンカーを回収。
惑星『スライブ』へ向けて、貨物宇宙船ランスロット、発進!」
『了解!ランスロット発進します!』
……何かジ~ンと感動するな、この台詞。
SF好きは、絶対一度は言ってみたい台詞だよな~。
41歳のおっさんには痛い台詞かもしれないが、ここは本物の宇宙で、本物の宇宙船の艦長なんだ。
言っていい台詞なんだよな!
そう言い訳じみたことを考えているうちに、宇宙船は反転し発進した。
月を右側に見ながら、ゆっくりゆっくりと速度を上げていく。
宇宙空間の景色は、そうそう大きな変化はないが時折、遠くの方に星が見えるのだ。
今は月の後ろに地球が確認できた。
こんなに遠くから眺めることは、映像以外ではないけど地球は青い星なんだと改めと思う。……なんだか涙が出そうだ。
ゆっくりと宇宙を眺めていると、エヴァから報告がくる。
『マスター、火星軌道の後ろを確認、ショートワープに入ります』
「了解、ショートワープ、開始!」
『ショートワープ、開始!』
すると、景色が一変。
右側の月が線になり、地球がその線に隠れた。
と思ったら、何もない空域に到達。
今度は、左側に火星を発見する。
錆びたような色の火星が、すぐ目の前に見える。それは天体写真で見た物と変わらなかった。
地球から、ほんの30分ほどで火星に到達してしまった。
『ここからは、アステロイドベルトを越えて木星まで行くよ。
そこで1時間ほど時間をつぶしたら、長距離ワープに入れるはず!』
「天体の軌道計算をしているのか?エヴァ」
『うん、だからシールド装置を使ってもいいかな?』
「……小惑星対策だな?反対する理由もないし、いいよエヴァ」
『ありがとう、マスター』
エヴァは宇宙船のパイロット用のアンドロイドだから、こういう航行に関してはエヴァの言うことを聞いていれば間違いないんだよな。
でも、一応艦長である俺の判断は仰ぐようになっているらしい。
もし、俺が反対すれば別の案を出すのだろう。
火星が宇宙船の後ろになるころ、アステロイドベルトへ突入した。
小惑星の岩などがゴロゴロと浮いている。
例の宇宙の起源を知るとか何とかで採取しようとした小惑星も、この中にあるのだろうが、俺にはどれがどれだか確認できなかった。
それよりも、アステロイドベルトの小惑星の間から覗く、木星が気になっている。
太陽の光を受け、はっきりとこの距離でも縞模様が確認できた。
「やっぱり大きいな、木星は……」
つい声に出てしまったのだろう、カレンが反応してくれる。
『マスター、木星付近には、放射線が飛び交う空間があります。
シールドレベルを一段階上げてください』
「ん?分かった。
エヴァ、シールドレベルを二から三へ上げてくれ」
『了解、シールドレベル一段階上昇!』
これで放射線からは大丈夫だけど、木星って惑星自身が放射線を発しているのか?
それに放射線が飛び交う空間って……。
やはり宇宙は、人にとって過酷な環境だよな……。
あと考えてみれば、太陽系のこととか俺、何にも知らないんだな。
……これをきに、少し勉強するか。
宇宙のこと、分からないからうろ覚えが多いです。
調べながらは書けないので、間違いはどんどん指摘してください。




