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第5話 新人研修 後編




エミリーさんと一緒に宇宙船の中に入ると、そこはやはり四畳半ほどの小部屋だった。本来は、ここで減圧だの空気を抜いたり入れたりして緩和する部屋なのだろう。


入ってきた扉をしっかり閉めて、しばらくすると奥の扉の右上にあるランプが赤から青へ変わる。

それを確認した後、エミリーさんが奥の扉を開けた。


ここでもプシュッという音の後に扉を開け、中へ入っていく。

すると、そこには女性が三人並んで俺とエミリーさんを出迎えてくれた。


そして、喋ることなく頭を少しだけ下げる。


「加藤さん、彼女たちがあなたが選んだアンドロイドで、宇宙を航行するうえでパートナーとなる三人です。

手前から、秘書のカレン、パイロットのエヴァ、オペレーターのオリビアです。

あなた達、マスターにご挨拶を」


すると、手前のカレンから礼をして話し出す。


『初めまして、秘書のカレンと申します。

これから先、末永くよろしくお願いしますマスター』


カレンの挨拶が終わると、次はエヴァが前に出て礼をする。


『初めましてマスター。パイロットのエヴァです。

これから末永く、よろしく!』


終始笑顔で、楽しそうに挨拶してくれた。

次に前に出て礼をしたのはオリビアだ。


『お初に御目にかかります、オペレーターを務めますオリビアと申します。

これから先、末永くマスターとともにいられたらと存じます』


か、かなり丁寧な口調だ……。

なんだか三人とも、俺と結婚でもするかのような挨拶だな……。


そう考えていると、エミリーさんとカレンたち三人の視線が俺に向いている。

あ、そうか、俺も挨拶をするんだった。


「んっ。初めまして、この宇宙船の艦長であり君たちのパートナーとなる加藤康介です。これから先、君たちを頼ることもあるけどよろしくお願いします」


俺はそう挨拶をして、カレンたち三人それぞれと握手をした。

三人とも、笑顔で握手に応じてくれたよ。よかった……。


「では、この宇宙船の中を案内しましょう。

加藤さんは、案内が終わるまでにこの宇宙船の名前を考えておいてくださいね」

「あ、はい」


そう言われて、カレンたちが貨物宇宙船の中を案内してくれる。

エミリーさんは一番最後から付いてくるだけだったが、ところどころでアドバイスをくれる。




最初に案内されたのは、宇宙船のブリッジからだ。

ブリッジの出入り口は、俺たちが入ってきたところから通路で繋がっていて中に入ると、結構な広さがあった。

正面に外の宇宙が見えるように、厚さ一メートルの透明な板が埋め込まれている。


板の正体について聞いたけど、俺は理解できなかった。

地球には存在しないものなのだろう。


ブリッジの中央に艦長席があり、その艦長席の前の一段低くなっている場所にパイロット席があった。

艦長席の左側には、オペレーター席があり、さらにその右隣りにも席があった。


秘書席は、艦長席の左斜め後ろになっていて、いろいろなモニター越しの交渉の時など助けてもらえそうな位置にあった。


ブリッジにある席は全部で七つ。

これは、後々アンドロイドを増やしていくことになるのだろうか?



次に案内されたのは、ブリッジと通路を挟んで反対側にある艦長室だ。


ここには今、えらい政治家が座るような椅子と机しかない。

カレンの話では、そのうち本棚などを入れてみては、と提案された。

艦長としての仕事もあるんだろうか?



次に案内されたのは、プライベートルームだ。


ここは、寝泊まりをする部屋となっている。所謂、寝室だな。

他にも、お風呂にトイレもついていた。

洗面所もあるし、洗濯機まで完備している。


個人用の冷蔵庫も完備しているところを見ると、完全にプライベート専用だ。



次に案内されたのが、食堂だ。


プライベートルームとブリッジの間にある。

勿論、それ以外にも部屋はあるみたいだが、使われていない部屋もあるようでさらっと案内してくれていた。


食堂は、誰でも利用でき、自分で食事を作ることも可能だ。

普段は、カレンたち三人の誰かが作ってくれるが、マスターが作っても問題ないですよ、と期待するような目でオリビアが見つめる。


まあ、そのうちに作ることがあるのだろう……か?



次に案内されたのは、宇宙船の貨物部分に当たる場所だ。


ここが、この宇宙船の一番大事な場所で、どれだけの物が積めるのか把握しておくようにエミリーさんとカレンたち三人に言われた。

分かってますよ、うちの会社は運搬業がメインなんですから。


それにしても、この宇宙船の貨物室、大きくて広い……。

全長が約1500メートル、高さが約800メートルあるんだから貨物室にどれだけとっているのかって大きさと広さだよな……。


宇宙船の全体を考えたら、それよりも大きいってことになるんだよな……。

……何か、怖い。



次に案内されたのが、エミリーさんの宇宙戦艦にもあった転送装置室だ。


ブリッジの真下の部屋に設置されてました。

装置自体は、エミリーさんのところにあったものと同じで、座標と転送者を入力すれば、後は装置が計算してくれるようになっている。


ただし、転送前に事前確認ができるらしく、お風呂に入っている時とかプライベートの時は確認が入るそうだ。

エミリーさんが転送装置を使ったときは、確認がいらない時だったんだな。


……装置が判断するのか?



一通り案内が終わると、ブリッジに戻ってきた。


「それで加藤さん、この宇宙船の名前、決まりましたか?」

「あ、はい、ランスロットと名付けようと思います」

「ランスロットですか?何か云われでもあるんですか?」


「俺が好きなゲームの名前からとったものですが、ダメですかね?」

「いいえ、構いませんよ。

この宇宙船はすでに、加藤さんの所有する宇宙船になります。

後は、ここに加藤さんのサインをお願いしますね」


エミリーさんは、そう言ってタブレットを渡してきた。

そこには、何かの書類が表示されており、読んでみると宇宙船の譲渡手続きの書類のようだ。


俺は、エミリーさんからペンを受け取り、サラサラと自分の名前を記入する。


「はい、これで手続きが完了しました。

加藤さん、この宇宙船になれるために、今日からこちらで寝泊まりしてください。

明日は、新人研修最終日。上司の方との顔合わせで、終わりとなります。

ではまた明日……」


そう言ってエミリーさんは一礼すると、ブリッジから出ていく。

俺たちもそれに続き、外に繋いである通路まで見送った……。



「さて、みんな、これからよろしく」

『『『よろしくお願いします』』』



……ところで、カレンたちの寝室はあるの?あるの、よかった……。




▽    ▽




新人研修七日目、最終日。


この日、朝起きると俺のベッドにカレンとエヴァが一緒に寝ていた。

……あれ?寝室の前で別れたはずだったのに、なぜ一緒に寝ているんだ?

俺が混乱していると、カレンが起きる……。


『おはよう、ございます、マスター』

「ああ、おはようございます。

えっと、どうして一緒に寝ているのかな?」


『はい、それは親睦を深めるためです。

こうして一夜を共にすれば、より親しみやすくなると判断しました』


……おかしい、カレンの考え方がおかしい気がする。

何かがおかしい、何がおかしいのか分からないのだが、そんな気がする。


そんな俺たちの会話で目が覚めたのか、今度はエヴァが起きた。


『あ、マスター、おはよう。昨日はお楽しみだったね!』

「ああ、おはよう。だが、そのセリフは違う気がするぞ?」

『そうなのか~』

「うん、そうだな」


……とりあえず、朝食にするか。




その後、朝食を三人で食べると、ブリッジで昨日から作業をしているオリビアと交代する。俺も艦長席に座り、説明書を見ながら何がどれなのか確認する。


そんな作業をしていると、すぐに時間になりエミリーさんが訪ねてきたので、通路まで出て迎えた。


「昨日はよく眠れましたか?加藤さん」

「ええ、どうも今まで緊張していたようでベッドに入ると朝までグッスリと……」

「そうですか」


そうエミリーさんは答えると、カレンの方を見る。

……もしかして、今朝のことは、エミリーさんがカレンたちに教えたのかな?


「とにかく、ブリッジに行きましょう。

そこで、加藤さんの上司になる方を紹介します。

明日からは、その方からの指示に従って仕事をしてくださいね」

「はい、分かりました」



エミリーさんと一緒にブリッジに移動すると、すぐに通信機を動かしどこかと繋げる。すると、メインモニターが表示され、等身大の一人の女性が映った。


立体モニターだ……。

俺の呟きは、誰に聞かれることもなくエミリーさんがその女性に話しかける。


「ナンシーさん、彼があなたの部下の一人になる、加藤康介さんです。

加藤さん、彼女があなたの上司となるナンシーさんです。

地球でいえば立場は、課長クラスになります」


「は、初めまして、加藤康介と言います。

まだ右も左も分からない新人ですが、これからよろしくお願いします!」

『初めまして、ナンシーです。

加藤さん、これから一緒に、会社を盛り立てていきましょう?』

「はい!」


エミリーさんとモニターの向こうのナンシーさんは、笑顔で頷いてくれた。

どうやら、最初の印象は悪くないようだ。


これから、このナンシーさんと仕事をやっていくのか……。

がんばるぞ!








昨日のうちに更新することができなかった。


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