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就職先は宇宙船の艦長さん  作者: 光晴さん
新人研修

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第1話 プロローグ

他の作品の話のアイデアに行き詰り、気分転換に描いた作品です。

ですから、内容はかなり軽くなるものと思います。

『転生先は宇宙船の中でした』の同時間帯であり、地球と言われるどこか別の星に住むおっさんの物語。

始まり始まり~。




「当社への就職、おめでとうございます。

新入社員の加藤さんの案内をする、エミリーです。よろしく」

「……よろしくお願いします」


俺の目の前に、銀髪の美人があいさつをしてニコリと笑ってくれる。

美人の笑顔に、俺は挨拶を返すことしかできなかった。


恥ずかしさから視線を逸らすと、エミリーさんの服装に目が行く。

上着の白いブルゾンの開いた前から、下に着ている青いツナギのような服が見える。

青いツナギには、左肩から右腰に向かって雷のマークのような白い模様が入っていた。


足元は、足首まで隠れる赤いスニーカーだ。

そして、首元の襟に二つのバッジが輝いている。


「……これは、新人研修官とショルフダールの社員バッヂですよ。

加藤さんも、新人研修が終われば制服とともに支給されますよ」


ジロジロ見ていたのがバレてしまった……。



株式会社『ショルフダール』

41歳という年齢のおっさんニートを就職させてくれた会社だ。


俺の名前は、加藤康介。

41歳のニート、いや、この会社に就職できたのだから元ニートか。


高校でのいじめが原因で高一で中退。その後就職先を探すが、中卒で受け入れてくれる会社などなかなかなくて、ようやく就職できても人間関係で辞めてしまう。

辞めた後は、さらに次の就職先が見つからず、新聞配達などのアルバイトを続けて何とか収入を得ていた。


だが、アルバイトだけで暮らしていけるわけもなく、親のすねをかじり続けた。


父親が去年亡くなり、母親の収入だけでは無理がある。

アルバイトの新聞配達も、新聞販売店の店長が変わり、その店長とうまくいかず辞めてしまい完全なニートへ。

それが影響したのか、母親が2か月前、体を壊し入院してしまう。

幸い一か月ほどで退院できたが、年齢も年齢であり年金生活となった。


母親の入院は、俺に就職して親に負担をかけなくしなくてはと決意させるには十分だった。しかし、41歳となった年齢に中卒、さらにメタボ体型の俺にまともな就職先などなく、ハローワークに行っても職は見つからなかった。


諦めが心を支配し始めた頃、最後の望みをかけてネットで職を探していると今回の会社の社員募集が目に入ったのだ。


『年齢、性別、学歴不問。長続きできる自信のある方大歓迎』


といういかにも怪しい募集だったが、藁をも掴む思いで連絡。何度かのメールのやり取りと電話での面接で採用が決定した。


ハッキリ言って、信じられなかったが、母親は喜んでくれた。




だが、信じられなかったのはここからだ。

就職が決まり、入院中の母親に伝えて喜んでくれたその夜、俺は宇宙にいた。


……何を言っているのか分からないって?

俺もだ。

さて寝るか、と布団に横になると宇宙にいたのだから……。


そして、さっき案内をと言って、いい笑顔で立っているエミリーさんが目の前にいるのだ。

本当に、訳が分からなかった。


「さて、まずは混乱している加藤さんに落ち着いてもらうため、いろいろ質問にお答えしましょうか。何から聞きます?」

「……それじゃあ、まずはここがどこなのかから……」


「はい、ここは宇宙です。

正確には、地球と月の間にある『ラグランジュポイント』と呼ばれている場所に浮かぶ宇宙船の中です」

「……ラグランジュポイント………ラグランジュポイント?!」


「あら、ご存知のようですね?」

「ご存じも何も、俺の好きなアニメに登場する言葉ですから」

「では、その意味も知っていますか?」

「えっと、惑星間の重力が安定しているところ、だったと思います」


「まあ、そういう認識でいいと思います。

で、私たちはそのラグランジュポイントにある宇宙船の中にいます」


知っている単語が出てきたことで、少し頭が冷静に働くようになり、ようやく俺は周りを見渡すことができた。

そこは、大パノラマの宇宙が見えるドームのような場所だった。


月が見え、地球が見える。

他にも、いろんな星々が見えるようだが、俺にはよくわからない。

そんなに天体に対して詳しくないし……。


足元の床は、鉄のような金属でできているようだが、裸足の俺の足は冷たさを感じてない。不思議な金属だ……。


部屋の大きさは、小学校の体育館ほど。

よくテレビなんかで見る、円形のプラネタリウムのようになっていた。

そして、この場所に家具などの物はなく、エミリーさんと俺しかいなかった。


「では、続いて何か聞きたいことはありますか?」

「それじゃあ、どうして俺はここにいるのでしょうか?」

「それは我社の、ショルフダールのことを説明するためにここに転送しました」


「……転送?!」


転送って、マジか!

いつの間にファンタジー世界に迷い込んだんだよ!宇宙なら、SFだろ?!

……いや、待てよ。

SFにも、転送はあるな。転送装置という名前をどこかで聞いた覚えが……。


「もしかして、転送装置なるものが……」

「ええ、ありますよ転送装置。この部屋ではありませんが」


在ったよ、存在してたよ!

それなら!もしかしてSFで有名なあれもか?!


「そ、それじゃあ、ワープもできるんですか?!」

「もちろんできます。

ワープ航行ができないと、宇宙で仕事なんかできませんよ」

「……仕事、ですか?」


「はい、我社の本当の社名は、『宇宙運搬会社ショルフダール』といいます。

主に、宇宙船で荷物の運送をしている会社です」

「………ソ、ソウナンデスカ……」



……俺は、とんでもない就職先を見つけたようだ。




▽    ▽




「落ち着きましたか?」


何もなかった部屋に、床から椅子がせり出し、俺は座らせてもらった。

宇宙でする仕事が、配達業とか……。

想像してなかったから、少し驚いてしまった……。


「は、はい。すみません、頭が真っ白になってしまって……。

それで、俺はどんな仕事をすることになるのでしょうか?」


「加藤さんには、貨物宇宙船の艦長をしてもらいます。

勿論、宇宙船の操縦なんてできるわけがないですから、サポートとしてアンドロイドの乗組員を三人つけることになります」


宇宙船の操縦なんて、出来るわけないか……。

まあ確かに、できないしやったことないけど、そう決めつけられるとな……。

何か、カチンとくる。


「あの、エミリーさんは操縦できるんですか?宇宙船の」

「勿論できませんよ。最近の宇宙船は、人が操縦できるほど簡単ではありません。

だからこそ、サポートでアンドロイドがつくことになっています。

本当は自分でも操縦したいんですけど、複雑すぎてもうお手上げで……」


エミリーさんは、少し困った顔をしたが、すぐに笑顔で説明してくれる。

そうか、エミリーさんでも無理なのか……。


ナチュラルロングの髪型で、銀髪銀目と地球人離れした美人が、困った顔というのはなぜだか可愛く見えた。



「それでは、加藤さんの目の前にあるモニターに注目してください」


そうエミリーさんが言うと、俺の目の前に透明な板が現れる。

これが、SFでよくある空中モニターというやつだな。


「そのモニターに、いろいろなアンドロイドの種類が映っていると思いますが……」

「はい、男性型と女性型、後いろいろなタイプが映ってますね……」


本当に、いろいろな種類が表示されている。

完全ロボットタイプや犬や猫といった動物タイプ。SF映画で出てくる宇宙人タイプ。

さらに、球体などの図形タイプと種類が豊富だ。


「今回は、加藤さんのサポートが目的ですから女性型を選んでください」


俺は、エミリーさんの指示通りに女性型を選択する。

すると、表示画面が変わり、ズラリといろんな女性型アンドロイドが目を閉じた状態で並んでいる。

……残念ながら、裸ではなく服は着ている状態だ。


「次に、加藤さんと一緒にいてくれるアンドロイドを三人選びますから、その中から『秘書タイプ』『パイロットタイプ』『オペレータータイプ』を選択してください。

まずは、秘書タイプからですね……」


エミリーさんの指示通りに、秘書タイプの項目を押すと、今まで数多く並んでいた女性型アンドロイドが、秘書タイプを残して消える。

それでも百体近くいるんだが、この中から選ぶのか……。


「では、この中から加藤さんの好きに選んでください。

能力重視でも、外見重視でも構いませんよ~」


……滅茶苦茶困る選択だな。

でもまあ、まずは、見た目年齢からだな。


まず、幼すぎてはダメだな。幼女を秘書にとか、俺はロリコンではない。

それと、能力はさすがに全部大差はないようだ。

となると……この『カレン』という名前のアンドロイドが理想的かな。美人というよりかわいいし、グラマー過ぎないし、安心できるタイプだ。


「……決まったら、決定を押してくださいね。

次は、パイロットタイプです。秘書タイプの時と同じように選んでください」


……このモニター、どうやらエミリーさんの側からも見えるようになっているのか。

何か俺の女性の好みが暴かれているような感じがして恥ずかしいのだが、我慢我慢。


さて、宇宙船のパイロットといえば、俺は元気な女の子というイメージがあるが一般的にはどうなんだろう。

まあ、ここはあえて俺の好みに走らせてもらおう。


そして、好みならこの『エヴァ』という子だな。

若干見た目年齢が16歳と若すぎる気がしないでもないが、ここはあえて選んでおこう。


「では、最後に『オペレータータイプ』です。

本社からの連絡や、宇宙港との連絡など多岐にわたりますから真面目なアンドロイドを選ぶようにお願いしますね」


……そう注意するってことは、前に何かトラブルでもあったのかな?

とりあえず、項目を選び真面目そうなアンドロイドを選ぶ……。


この『オリビア』ってアンドロイドが良さそうだ。

見た目年齢も25歳としっかりしていそうだし、真面目そうな美人だ。

……でも、身体がグラマーなんだよな。


オリビアを見るときの目が、胸にいきそうで怖いな……。



「三人選び終わったようですね。

『カレン』『エヴァ』『オリビア』の三体ですね。では、この三体で発注しておきます。

次に、加藤さんの乗る貨物宇宙船を紹介しますね」


え?俺の乗る宇宙船はもう決まっているのか……。


……それはそうか、会社の宇宙船だ。

どこどこの会社の宇宙船だと分かりやすいように、統一されているのだろう。


モニターに、映し出された宇宙船は、飛行船のような形をしている。

横に長い楕円の形で、ブリッジは飛行船と違い前方の上部に付いていた。

全長二キロメートルあり、大部分が貨物室のようだ。


モニターに映し出された宇宙船に触ると、詳しい内部が見られる。

そこで、ブリッジを触り内部を見ると、広さはこの部屋と同じくらいの大きさで高さもある。

計器やモニターが付き、何をどうすればいいのか分からないレバーがたくさんある操縦席に、キーボードやペンタブなどが備え付けてあり、三つのモニターが並んだ通信装置、そして全体を見渡し指示が出せる一段高い位置にある艦長席。


他にも席はあるようだが、今は使えない席もあった。

スペックの表示もあったが、訳が分からない単語のオンパレードで俺はそっと閉じた。


「確認できましたか?

この宇宙貨物船が、新入社員に最初にあたえられる宇宙船です。

ここから、いろいろと功績を上げてどんどん船を変えていくことになります」


「……船を変えるって、これが会社の船ではないんですか?」

「もしかして、加藤さんはこの宇宙船が我社の代表的な宇宙船だと思っていたのですか?」

「はい、運送会社だと、会社ごとに統一して分かりやすくするのかな?と……」


エミリーさんが、少し納得した顔をしている。


「加藤さん、それでは宇宙で運搬業なんてやっていけませんよ?

宇宙の環境は苛烈なんです。

それに合わせた宇宙船を用意しなくてはなりません。


新入社員は、それほど大変な所には派遣されませんからこういう宇宙船でいいですけど、そのうち嫌でもわかりますよ。

この宇宙船がどれだけ低スペックかが、ね?」


……どうやら、統一された宇宙船ということはないようだ。

エミリーさんの言い方だと、好きに乗り換えてもいいということらしいな。









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