ある日の生徒会室での出来事。
「昨日頼んでた仕事終わった??」
「えっとね、あと少しで終わるからちょっとだけ待ってもらってもいい?」
「もちろん大丈夫だよ。というか、急に頼んじゃってごめんね。忙しかったよね?」
「ううん、大丈夫。全然忙しくなかったし」
嘘だ。昨日は宿題はたくさんあったし、生徒会の他の仕事だってたくさんあった。
「でも、陸上は行かなくても大丈夫なの?生徒会のほうによく来てるけど……」
「うん。今日は短距離の練習は自主練だし。それにこれでも俺、副会長だしね。ある程度は生徒会優先でしますよ」
また嘘をつく。
別に生徒会を優先するほど思い入れがあるわけじゃない。
むしろあまり生徒会の活動は好きじゃない。
部活に行って、走っている方が何倍も楽しい。
じゃあなんで、生徒会にいるのかって?
だって君がいるのだもの。
君がいるから僕は興味もなかった生徒会に入った。
君が会長になるというから、僕はがらにもなく副会長に立候補した。
もっと言えば、君がこの県内一の進学校のこの高校を受験するというから僕は苦手な勉強を頑張ってこの高校を受けた。
君の近くにいられるならどんなに苦手なことも嫌いなことも出来た。
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「はい、出来たよ。データ、USBに移しといたから」
「ありがとう! よかった~。これがあれば明日のミーティングをスムーズに進められるよ。本当にありがとう!!」
「どういたしまして」
「いや~シュウはやっぱすごいね。パソコンとか音響扱うの本当に上手だよね」
「そんなことないよ。ルミだって普通に出来るじゃん」
「そりゃ、少しはできるよ。けどシュウ程じゃないもん。シュウの方が圧倒的に上手だし、丁寧だし、早いもん!」
「...ありがとう。でもなんかそれ、牛丼かなんかの売り文句みたいになってる」
「もー!人がせっかく褒めてるのに!!」
「悪かった、悪かったって。というか、そっちこそ時間大丈夫なの? 今日、彼氏と帰る約束してなかったっけ?」
「あっ、忘れてた」
「やっぱり。そろそろ時間でしょ?早く行きなよ。彼氏さん待たせちゃかわいそうだよ」
「そうだよね。じゃあ行くね。今日は本当にありがとう! お疲れ様!!」
そう言って彼女は生徒会室を出ていった。
静かになった生徒会室には外からさっきまでは聞こえなかった吹奏楽部の合奏の音色が聞こえてくる。
まるで、今日のエンディングかのように。
「さて、俺もそろそろ帰りますかね」
鞄を取り、生徒会室を出て、鍵をするためにドアを閉める。
その時、
「明日はあと少し頑張ろう」
そう僕は誰もいなく生徒会室を見つめてボソッと呟いた。