家族にパンを頼まれた
家族のみんなにパンを食べたいと言われ、昼から出掛ける事になった。
『それじゃあ、行ってくる』
『行ってらっしゃい、ロアン』
『パパー、チョコクロワッサンを忘れずにねー』
『私はデニッシュが食べたい!』
三人に見送りをされて外に出た。
小屋を出てから20分ほど森の中を歩いていると、
ゴブリンの群れがいて、木の陰に隠れながらゴブリンの数を数えた。
『いち、に、さん・・・八体か』
ゴブリンは木の枝にある林檎を落とすために石を投げていて、
注意が引いてるから今がチャンス。
『炎よ! ゴブリンを燃やせ!!』
自分の背後に炎の玉を八つ出現させ、一気に相手に向かって飛ばした。
気を取られているゴブリン達は炎の玉に当たった瞬間に燃え、
簡単に倒す事が出来た。
ふっ、余裕だな。
これだけの仕事でも一体につき、
銅貨5枚もギルド会場で報告したら貰えるから楽な仕事だ。
さて、戦利品をゲットするか。
俺はゴブリンのツノを風魔法でサクッと切り取り、
布袋に入れてから再び歩き出した。
先程と同じくらいの時間を歩き、
ようやく森を抜けてウィール村に向かい、
途中でトラブルがあったが無事に目的地に到着した。
村の入り口に置かれている看板には「ようこそ! ウィール村へ!!」
といつも見ている看板が飾られていた。
この村に来るまで約一時間も掛かるから大変だ。
往復したらつまり二時間、うん、きつい。
しかし、この村の景色を観れば、
疲れが吹っ飛びそうになる程美しいから達成感があっていいものだ。
この村にある建物のほとんどは白くて丸く、可愛らしい建物が並びあっている。
しかもそれだけではなく、湖も綺麗でとても見応えがあるんだ。
カップルがベンチに座って、
湖を眺めながら楽しそうに話しているのはうざいけどな。
素通りをしてパン屋に向かうとしたが、ある事を思い出した。
『そうだ。ギルド会場に行かないとダメだったな』
報酬を貰わなければお金がない。
先に小さなギルド会場に入り、ギルド員に戦利品を出してとっとと報酬を貰った。
『ほらよ、銅貨40枚だ』
『どもー』
ギルド会場を後にし、次には喫茶店に入ってコーヒーを注文して一服した。
村に来る時はいつもの日常だ。
俺はいつものテーブル席に座ってコーヒーを飲み、
壁際に置いてある観葉植物を偶に見ながらコーヒーを嗜んだ。
コーヒーを飲んだので会計を済まそうとすると、派手な金髪が目立つ女性と、
その女性の手を繋いで入ってきたピンク色の派手な髪の女の子が入店してきた。
『私はカフェオレを頼むけど、ナッちゃんは何を飲みたい?』
『んー、ママと同じのが良い!』
『ふふっ、分かったわ。すいませーん! カフェオレ二つお願いしまーす!』
仲良しな親子を見ていると微笑ましくなるな。
さて、何で俺がこんなにもまじまじとその親子を見ているかというと、
俺の知り合いだったからだ。
向こうはまだ気が付いていなかったから席を立ち、こっちから声を掛けた。
『久し振りだな、リナリー』
挨拶をすると、やっとリナリーが気が付いた。
『あっ、ロアンじゃーん!! おっひさー!』
『おっひさー!』
リナリーの娘、ナナが母親の挨拶を真似たら昔のリナリーの面影があるな。
今は髪を黄色に染めているが、母になる前は娘と同じピンク色で、
派手な髪型と露出がある服装だったから大分落ち着いた方だ。
ちなみに、リナリーはパン屋を兼営しているミリアと幼馴染なんだ。
今もよく一緒に買い物をしたり遊んでいるみたいだ。
挨拶をしたので帰ろうと思ったが、リナリーに止められてしまった。
『もう帰っちゃうの? せっかくだから一杯付き合ってよー』
『仕方が無いな、一杯だけだぞ?』
甘えてきたから仕方がなくカプチーノを注文し、
リナリーの隣に座り、世間話を一時間弱もしてしまった。
まあ、楽しかったからいいけど。
切りの良いところで席から立ち上がり、会計を済ました。
『じゃねーロアンー! また一緒に何処かで飲みましょう!』
『じゃねー!』
『おー、またな』
その後は寄り道をせずにパン屋に向かった。