フェンリルを迎え入れよう
俺は女の子に自分のうちに来ないかを誘うと、
悩みながらも相談に応じてくれた。
きっと裏がないか不安なんだろう。でも、そこは大丈夫だ。
住んでいるのは俺一人じゃないからな、ちゃんと家族がいるし。
俺はミリアの店のパンを何個か買ってからお店を後にし、
女の子を連れて一緒に村を出た。
俺は歩きながら女の子と話、
名前を言おうとしたらまだお互いに自己紹介をしていない事に気がついた。
『そういえば・・・自己紹介してなかったね。俺の名前はロアンだ。君は?』
『私の名前はフェル。その・・・よろしく』
『ああ、よろしくな』
うーん、まだ疑心暗鬼だなー。まぁ仕方ないか。
気まずい雰囲気が漂う中一時間、ようやく森の中にある小屋に到着した。
『ここが今日からフェルの家だ』
『ここが・・・』
『意外と立派だろ? それじゃ入るぞ』
『・・・うん』
フェルと一緒に小屋に入ると、リビングでルーナとルナリアが寛いでいた。
『あっパパだ!』
『おかえりなさい、ロアン』
第一声はいつも通りに挨拶をしたが、二人がフェルに気がつくと冷たい視線を送られた。
『・・・そのフェンリルの女の子はどうしたのロアン?』
『ママー、これっていわゆる誘拐よね?』
『そうね、死刑だわ』
『ちょっ!? 二人共ぜってー誤解しているだろう!? 誘拐なんてしてないわい!!』
先ずは落ち着くためにリビングにあるテーブルにみんなを座らせ、説明をする事にした。
『・・・と、言う事だ』
『そんな事があったのね』
『可哀想なのー・・・』
ルーナとルナリアは見合わせて顔色を確認していた。
隣に座っているフェルが顔を下に向けて不安そうにしていた事に気が付き、
俺は二人に言い聞かせた。
『なぁー頼むよ、フェルを家族として迎え入れてほしいんだ!
そりゃ種族は違うだろうけどこんなに可愛い女の子なんだし大丈夫だろう』
立ち上がってそう言うと、ルーナが笑っていた。
『何をそんなに必死にお願いをしているのかしら? ねールナリア』
『うん! 私達の答えは決まっているよ!』
二人が微笑んでフェルを家族として迎え入れてくれた。
『これからよろしくね、フェル』
『はい・・・!よろしくおー・・・』
ルーナがフェルに抱き付いてスキンシップをし、
ルナリアは『わーい! 妹が出来たー!!』と両手を上げて喜んでいた。
ん?妹なのかな?フェルに年齢を聞いてみると、ルナリアに同い年だった。
まー妹でもいいか。
こうして今夜はフェルの為に歓迎会を開き、
ルーナがピザを焼き、ルナリアはフルーツポンチを作っていた。
俺はフェルに家の中を色々と案内し、フェルに着させる服を何着か用意していた。
そこで気がついた事があった。そう、フェルをどの部屋で寝させるかだ。
うちはルーナのルナリアに部屋と俺の部屋、
そしてリビングしかないから考える事にした。
本来ならルーナ達と一緒の部屋の方がいいが、
そんなに広い部屋ではなないから三人で寝るのはきついだろう。
フェルは『私はリビングのソファでも良いよ』と言っていたが、
それは家族的に良くないと言い聞かせてルーナに相談する事にした。
『ルーナ。料理中に悪いんだけど相談があるのだが・・・』
『どうしたの?』
一度料理を中断し、フェルを何処で寝かすかを相談したら笑顔で言われた。
『ロアンの部屋を使わせて上げたら良いじゃない。ロアンがソファで寝ればいいだけでしょ』
『まじか』
『うん、まじよ』
うーん・・・まぁ仕方がないか。
いずれは小屋の広さを増加しなければならんな。
俺とルーナが相談しているとフェルが、
『私なんかの為にそこまではしなくていいよ』
と言っていたからルーナが叱っていた。
『フェル? そんな事は言ったらダメよ。フェルはもう私の娘なんだからね』
そう言って優しく叱っているルーナの姿を見て、
本当にルーナは良いお嫁さんだよなーと思った。
外が暗くなり、料理を作って歓迎会を開き、
林檎ジュースが入っているグラスをそれぞれ持った。
『では、改めまして・・・こほん。
フェル、これからよろしくね。せーの・・・』
『『『かんぱーい!!!』』』
『か、かんぱーい』
フェルは少しだけぎこちなかったが、まぁ慣れるだろう。
こうして、うちに娘が一人増えた。これから賑やかになりそうだ。
次回から三章目に入ります。
3日後に投稿しますのでよろしくお願いします。