異世界転移 宇宙戦記
「おい!きみ!大丈夫か!」
男の声と、頬を何かが弾く痛みで、五条悟は目を覚ました。
目を開けようとするも、少ししか開かない。
頭はぐわんぐわんと揺れるようで、体はふわふわと浮いているような、心許ない感覚に捉われる。
無理やり目を開こうとすると、視界は水中を覗いているかのようにぼんやりとしていて、周囲をしっかりと認識できない。
「おい!しっかりしろ!君は助かったんだぞ!」
再度響く男の声に、働かない頭がもぞもぞと回転しだす。
どうやら気絶していたようだが、助かったとはどういうことだろう。
悟は自分の直前の記憶を辿る。
会社を出て、自宅に向かう最中、電車に乗ったことは覚えている。
その後、自宅に辿り着いた記憶がない。
つまり、その間で自分は気絶するような事態に巻き込まれたらしい。
頭がだんだんはっきりしてくると、視界もみるみるクリアになっていった。
悟を抱えて、覗きこんでいるのは30代くらいの男だった。
「おれはいったい……」
「君は救命カプセルの中でスリープしていたんだ。発見が遅れれば死んでいただろう」
救命カプセル? 言っていることがさっぱりわからない。
悟は1人で立とうとして、足元に床がないことに気がついた。
「う、浮いている!?」
男はほっとしたような表情を見せると、抱えていた悟を解放した。
「当たり前だ。眠りすぎて頭がおかしくなったのか?ここは宇宙だ」
「どうやら、電車で寝ている内に宇宙へとやってきたみたいだ」
クスクスと複数人の笑い声がしたので周囲を見渡すと、30人くらいの男女がこちらの様子を伺っていた。
さっきのセリフを冗談だと思ったらしい。残念、ほんとなんだなこれが。
「絶望的だった我々の気分を君のおかげで少しは明るい気持ちにさせてもらった。ここは連合国軍所属小型空母オルレアンだ。詳しい事情は後で聞かせてもらおう。レイア軍曹!」
男が鋭い声で呼びかけると、素早くハキハキとした声で1人の女性が返事をして、進み出た。
「彼を客室へ連れていってやりたまえ。暖かい食事と飲み物を与え、可能ならそこで事情聴取も行うこと」
「わかりました!ジュドー大尉殿!」
悟はレイア軍曹と呼ばれていた女性に「こっちです」と案内されて、客室へと向かった。