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日常編2


「いっけなーい、ちこくちこくー!」


 いつものように時間ぎりぎりに目を覚ましたわたしは、急いで支度したくをすませ、食パンを加えて走っていた。

 ……なんだか今日は、素敵な出会いがありそうな予感♪

 わくわくとドキドキで胸をいっぱいにしながら、T字路にさしかかったところで、


「きゃっ!」

「うわっ!」


 ドンッと、死角からでてきた人影とぶつかってしまった。


「いったーい☆ もう、どこ見て歩いてるのよ~! ……って、あれ?」

「ったく、朝からうるせーやつだな」

「なんだ、ユウちゃんか。つまんねーの」

「出会いがしらの一言がそれかよ!」


 少女漫画のヒロインのごとく走ってたわたしとぶつかったのは、幼なじみの有馬優希ありまゆうきだった。

 昔からの付き合いだけど、つくづくお兄ちゃんと似ていてるなと思う。


「ふっ……」

「……なに悟ったような顔してんだ」


 このツッコミなんか昨日お兄ちゃんの口から出たばっかりだ。

 一字一句同おんなじだべ? どうかしてるぜ!


「っていうか、お前なんでひとりなわけよ? 登校班の人は?」

「わたし遅刻じょーしゅー犯だから、いっつも先に行かれるの。ユウちゃんこそ、なんで一人なの?」

「ま、まあなんていうか……。俺も同じ理由というか……」

「うえーい。人のこと言えないですなー!」

「う、うるせーよ!」


 顔を真っ赤にしながら、反論してくるユウちゃん。

 まったく、かわいいやつですなー。


「それにしても、集団とーこーってめんどくさいよね。なんでみんな一緒に行かなきゃいけないんだか」

「だよなー。まっ、それくらい世の中が危ねえってことだろ」

「いやん、わたしの大事なものがうばわれちゃうわ。助けて、ユウくん?」

上目遣うわめづかいでこっちを見るのはやめろ。お前がやると、吐き気がする」

「んな……っ!?」


 なんと冷たいおめめなのかしら! さっきまでのデレデレなユウちゃんを返して!

 

 

 ーーとまあこんな感じで、わたしたちはいつも通りに登校しましたとさ。




 ーー五時間目。

 給食を食べ終えて、昼休みという唯一のフリーダムを超えた先にある、地獄のような時間。

 わたしは睡魔という、人類にとって最大最悪の敵と対峙たいじしていた。


「くっ、お前はまさか! あのスイマ四天王してんのうの一人、ショクゴのスイマなのか!? くそ、わたしのHPはもうないというのに……」

「……」

「こうなったら、必殺! か~め~は~め~……はーー」

「起きろバカたれ(バシッ)」

「ふにゃんっ!?」


 あ、あれ、ショクゴのスイマはいったいどこへ? ていうかわたし、はるかなる桃源郷とうげんきょうを超えた先にある、伝説の魔王城いたはずじゃ……。

 ぐるぐると周りを見渡し、目の前のわたしをはたいた人を見つめてから、一言。


「……ミソジのスイマ……?」

「誰が三十路みそじよ!(バシッ)」

「あべしっ!」

「「「あははははははっ!」」」


 今のやりとりで、教室が笑いの渦にのみ込まれる。

 あっそういえば、ここは学校で今は国語の授業中だったね。さっきのは夢だったのか、びっくりんこ。


「……はあ、いいですか望月もちづきさん。眠たい気持ちも分かりますが、がんばって授業をうけてください」

「ふ、ふえい……」

「……ふう。では授業に戻ります」


 そう言って三十路みそじ先生は教卓へともどっていった

 その後ろ姿を眺めながら、わたしは考える。

 いいせんせーだとは思うけど、きっとどこかがエグイから、結婚はおろか彼氏もできないんだろうなあ。

 例えば、料理ができないとか、かな? いやいや、料理できない女性はいっぱいいるもんね。まあ、わたしはできちゃう女ですけど。

 ……カプメンくらいなら。

 そ、それはともかく、他になにか原因があるのかな。

 というかそれ以前に、せんせーは彼氏がいたことあるんだろうか。

 あっ、まさか……。


「せんせー!」

「……はい、望月さん」

「先生は”魔女”なんですか!?」

「ぶふうっ!!」


 聞いたことがあるんだ。古来より、『三十歳までに大人の階段をのぼらなければ魔法が使えるようになる』と言い伝えられている。

 もしかするとせんせーは魔法が使える、そう、”魔女”に違いない……!!

 わたしの言葉を聞いて噴きだした先生は、せきこみながらも必死になって尋ねてきた。


「も、望月さんっ、どうして私が合コンのあとには必ず”魔女”と呼ばれるのを知っているのですか!?」

「……は、はい?」

「ええ、いいでしょう! あくまでシラをきるのでしたらこちらから白状してやりますとも! 合コンの時、私がありとあらゆる手で必死に男を誘惑しようとするから、”魔女”なんて呼ばれるのよ! だけど、誰一人として受け入れてくれないわ! むしろ罵詈雑言ばりぞうごんを吐き捨てられるレベル。……ううっ」

「……ワオ」


 予想外の展開になってワロタ。

 せんせー、学校にいるときはすごく評判がいいのに、そういう裏の顔はハンパないんっすね。だから男ができないわけだ、うんうん。

 ううっと、ひざから崩れ落ちて涙を流す三十路みそじ先生。

 これ、小学校の授業風景とは思えないですな。

 あまりに耐えがたい雰囲気が漂う中、一人の勇者が立ち上がった。

 何を隠そう、このクラスの委員長、真鍋幸一まなべこういちくんである。

 彼は委員長として、いや男としてか、泣きじゃくる乙女(とここでは呼んであげよう)の肩にポンッと手を置いた。


「泣き止んでください、先生。あなたはとても魅力的ですから、きっと大丈夫です」

「……真鍋まなべく、ん……」


 真鍋まなべパイセン、パネエッす! あんた、男の中の男っす!

 でも気をつけてくださいよ、そいつはーー。


「あなた……(ガシッ)」

「はい?」


 三十路みそじさんの手が、真鍋まなべっちの肩をかたくとらえた。

 彼を見上げる、彼女の瞳はーー。



 ーー狩人かりうどの目、そのものだった。



 ダメだ、真鍋まなべっち! 逃げるんだあああああああ!!


「あなた、放課後わたしのところにきなさい。……お礼をしてあげるわ」

「は、はあ……?」


 \(^o^)/オワタ

 真鍋っち、君はいいやつだったよ。どうか、安らかな死を。

 っていうか、この女教師。小学四年生に何をする気なんだ……?

 クラスの空気がお通夜みたいになったが、元気になったミソジーが授業を再開した。

 なんて快活な動きなんだろう。まるで水を得た魚のようだよ。


「はい、じゃあ次はいつものことわざのコーナーね! 今日はこれ『一石二鳥』!」

「せんせー、それってどういう意味ですか?」

「これはね、一つの石を投げたら二羽の鳥にぶつかっちゃって二羽とも獲れたというところからきているの。つまり、一つのことで二つの得をするということなのよ」

「つまりせんせーに彼氏ができると、魔法少女も卒業できるし、結婚もできるということですね!」

望月もちづき、あなたも放課後わたしのところにきなさい。……お礼をしてあげるわ」

「ーーっ!」

 

 わたしの人生も、\(^o^)/オワタ。



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