説明書 リヴィノイドの作り方
後日、品物が届いた。
デカイダンボールを開封するのに四苦八苦しながら、ボディと初対面を果たした。
うん、キモイ。
目玉が無くて眼窩が空洞だからか、妙にホラーだ。ツルッパゲで耳無いし。でも、顔の造作は綺麗だ。すっきりと整っている。このボディ、結構良い物みたい。街で見るどの人型の物よりきちんと作られているように見える。
そっか。肌が良いんだ。
他所で見る物はどこかマネキンぽくて不自然なのに、このボディの肌はとても人間ぽい。
これで15万円はやっぱり安すぎた買い物だったんじゃないかと思った。何か不安になってきた。ちゃんと動くよね?不具合が起こったりしないよね?
とにかく、見た目、何とかしよう。
翌日、私は説明書を片手にパーツやソフトを買い漁った。
瞳はせっかくだからオッドアイにしよう。ブルーグリーンとヴァイオレットの瞳がいい。で、髪はプラチナブロンド。
ソフトはとりあえず、生活学習機能ソフトと音声ソフト、セキュリティーソフトとクリーニングソフト。パーソナリティー形成ソフトも忘れちゃいけない。他は……追々買えばいいか。ネットでフリーソフトとかもあるし。
ああでもない、こうしたいと少ない予算で買える物を厳選した。
帰ってきてからは夜を徹して作業した。
瞳や歯、髪の装着はもちろん、ボディの関節部分等にある隙間を接着面がわからないよう丁寧に詰めて仕上げる。
更にソフトのインストールや音声・パーソナリティーの設定を、説明書やネットの掲示板を頼りに進めていく。
翌朝、適当な服を着せたところで一通りの作業が終わり、起動出来るところまでこぎつけた。けれど、朝から大学の講義が入っていて、しかも出席を取る授業だから行かないわけにいかない。泣く泣く急いで風呂に入ってキャンパスへと走った。
講義が終わり、私は急いで家に帰った。友人達には呆れられたけれど、私は待ちきれなかった。自分の組み上げたリヴィノイドが動いて、話すのを早く見たい。
部屋のドアを開けると、今朝の状態のまま足を投げ出した状態でリヴィノイドが座っている。鞄をおろしてリヴィノイドの横に座り、きゅっと一度だけ拳を握ってから電源ボタンに指を伸ばした。
電源ボタンは耳のある位置にある。恐る恐るポチッと電源を押すと、ヴィーンと重たい音が鳴った。しばらくするとリヴィノイドの目が開いた。
「おお!」
つい歓声をあげてしまった。そんな私に気付いたリヴィノイドがこちらを見る。
凄い。ちゃんと音声認識してる。
「初期設定を開始します」
設定した音声とは違う、無機質なデフォルトの機械音声でリヴィノイドが言う。
リヴィノイドのパスワードとか所有者登録をするんだ。リヴィノイドから色々な質問をされ、それに答えていった。
「初期設定が終了しました。これから再起動します」
再度重たい機械音がして、再起動が終了した。
さて、ちゃんと動くかな?
リヴィノイドは、顔を上げてこちらを向いた。
「初めまして、マスター。登録名、霜です。これからよろしくお願いします」
やった!成功だ!我ながら良い出来だ。声もぴったりだ。色気のある落ち着いた物にして良かった。喋り方も滑らかで良い感じ。
「よろしく、霜」
「マスター、これからどのようにお呼びしたらいいですか?」
そうだなぁ。確かに『マスター』なんて呼ばれ続けるのは微妙。
「聡里でいいよ」
それを聞いた霜は、少し考える表情をした。
変だな。こういう時ってノータイムでYESというのがリヴィノイドなんじゃないの?
「……それでは、聡里さん、とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
ああ、パーソナリティーソフトのせいか。紳士・丁寧が基本の物にしたからな。
「うん、それでいいよ」
「ありがとうございます、聡里さん。これからよろしくお願いします」
霜は私の手を取って、煌めくような笑顔で言った。




