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夏の中で  作者: 葵枝燕
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2.車内にて

 こんにちは、葵枝燕です!

 連載『夏の中で』、第二話でございます。

 前話の投稿から半年以上空いてしまって、申し訳ないです。気付いたら夏が終わってたんですよね。

 というわけで、前話のあらすじを。圭と奈瑞菜の二人は、北谷(ちゃたん)(ちょう)のサンセットビーチを訪れます。しかし、天気は曇りで、綺麗な海を見ることができませんでした。「僕のせいで」と言う圭に、「気にしなくてもいいさぁ」と笑う奈瑞菜。そんな奈瑞菜の一言で、“エンダー”なる場所に行くことになった圭。一体“エンダー”とは何なのか――という感じでしょうか。

 今回は、北谷(ちゃたん)(ちょう)謝苅(じゃーがる)付近を舞台に、その道中の車の中での二人を書きました。

 前話でもいいましたが、あくまでフィクションです。実在する地名ですが、妄想が入り乱れています。近々、本当に現地調査に行こうと思ってますけど。やっぱり、百聞は一見にしかず、ですから。

 それでは、どうぞご覧ください!

「ねえ、()()()

 僕は、ハンドルを握る彼女――奈瑞菜にそう呼びかけた。奈瑞菜はこちらをチラリとも見ないまま、

「何ねぇ?」

と、言った。まあ、運転してる最中に前方から視線を外すような人間、危なっかしいを通り越して危険以外の何ものでもないから、そこは別に構わない。

「前から気になってたんだけどさ」

 僕は外を指差す。

「あれ、何?」

 それは、セメントでできているらしい建造物――みたいなものだった。沖縄に来てから何度も見かけるその建物だったが、僕にはその正体がわからなかった。見かける度に、一体どういう建物なのか気になっていたのだ。

「あれって何ね?」

 そう言いながら、僕の視線を追って外に視線だけを向ける奈瑞菜。その表情が、一瞬で変わる。そうして、右手一本でハンドルを操作しながら、左手で僕の頭を平手打ちした。結構な衝撃だった。

「痛ぁ!! 何す――」

「ヤー、フラーか!?」

 頭を両手で押さえ抗議しようとした僕に、奈瑞菜が被せるように怒鳴る。物凄い剣幕だった。うん、怒っているのだろうが……正直僕の頭の中にはあまり入ってきていなかった。彼女が発した怒りの言葉らしいものが、僕には理解できなかったからだ。

「へ……? ヤー……何だって?」

 奈瑞菜の言葉は、この島で育ってきて身に付いた言葉だ。確か、ウチナーヤマトゥグチというらしい。ウチナーグチとヤマトゥグチ――つまり、沖縄方言と日本語の混じった言葉遣いだ。だから、時折混じる方言に僕は首をひねる。この島で生まれ育っていない僕には、彼女の言葉は理解できないものが多いのだ。

 しかし、そんな僕の疑問になど、奈瑞菜は耳を傾けていないらしかった。

「亡くなった人の家に指差すとか、どんだけフラーだば!?」

 前方を見据えたまま、奈瑞菜は怒鳴る。それでも運転が荒くなることはなかった。曲がりくねった坂道を難なく上っていく。

 亡くなった人の家――彼女のその言葉で、ようやく理解できた。あのセメント造りの建造物は、お墓だったのだ。確かに、それに向かって指を差す行為は失礼にあたるだろう。それにしても、僕の知っているお墓とはかなりつくりが違う。本当に、家、って感じがする。

 でもやっぱり、奈瑞菜の言葉はたまにわからないなぁ。四年も(そば)にいるのに、僕はどうにもこの島の言葉を憶えられないのだ。

「指くされるよすぐ!!」

「くされ……? え、と。ごめん、あの……よくわかんないんだけども……」

 この僕の台詞(せりふ)は、火に油を注ぐ行為だったらしい。奈瑞菜の表情がより怒りに染まった気がした。

「だから言ってるさぁ! だぁもう、こういうときはよぉ――」

 何かを言いかけた奈瑞菜が、その言葉を突然に止める。

「奈瑞菜? どうしたの?」

 突然黙ってしまった彼女を不審に思いながら、僕は運転席の彼女を見る。

「どうすればいいんだっけ……忘れてしまったさぁ」

 困ったように言う奈瑞菜の横で、僕は「ヤー」や「フラー」や「くされる」の意味について考えを巡らせていた。しかしやっぱり、それらの言葉が何を意味するのかは、いくら考えてもわからなかったのだった。

 やっぱり、ウチナーヤマトゥグチのアクセントというか、イントネーションというか……表現できないのが辛いですね……。一応奈瑞菜の言葉は、私の話し方をモデルにしてるので、これでもわかりやすい方ですよ。八十代以上の方とか、方言をよく使う方とかだと、一つとして会話を理解できないこともありますから。特に女性だと、もう聞き取れないくらいのマシンガントークで、よけいにわかりません。でも、方言しゃべれるっていいなぁって思います。私はしゃべれないので。

 何かわからない言葉とかがあれば、お気軽に感想などに書いてくださいませ!! 答えられる範囲でお答えしたいと思います。一応今回出てきた方言っぽい表現は、下にまとめてみたので、よろしければご覧ください!

 最後に、脇見運転、片手運転は駄目です! 安全運転しましょう! ……ペーパードライバーが言うなって感じですけど。

 それでは、また次回でお目にかかれますように!! 読んでいただきありがとうございます。

――――――――――

○今回出てきた沖縄的なモノ色々

・ヤー

 「お前」って意味になるでしょうか。親しくない人に使うのは失礼に当たる言葉です。ヤンキーがよく使うイメージが、私はあります。

・フラー

 「バカ」とか「アホ」とか「頭が悪い」とか、そういった意味です。これも、親しくない人には使っちゃ駄目な言葉です。ていうか、そうでなくても使いたくないし、使われたくないですよね。

・くされる

 漢字に直せば「腐れる」です。奈瑞菜が圭に対して「指くされる」と言っていますが、圭の指が腐るわけですから、「あんたの指腐るよ」と言えばすむ表現ですね。なぜか、受身形で言ってしまうんですよね。何か理由があった気がするんですけど、忘れてしまいました……。調べたら書きますね(調べないフラグ)。

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