1.サンセットビーチにて
こんにちは、葵枝燕です。
今回の話のテーマは、沖縄県です! 理由は実に単純で、私が沖縄で生まれ育ったからです。それをどうにか小説にしたいと考えて、この作品を書くことにしました。
主人公は、県外出身者の男性です。二十一歳、大学四年生です。他にも細かいキャラ設定は結構作っているのですが、追々出せていければいいなと思ってます。
この話は、主人公と「彼女」の一日のデート風景を連載という形で綴っていく予定になっています。
さて、第一話となる今回の舞台は、北谷町です。実際に存在する町ですが、高校卒業以来なかなか行っていない場所なので、妄想入ってます。現地調査(?)すべきですね……。
あくまでフィクション――妄想が入り乱れていることをご了承ください。
それでは、どうぞご覧ください!!
車のドアを閉める。目の前に拡がる景色に、僕は自然と溜め息を零していた。
ここは、沖縄県北谷町のサンセットビーチ。晴れていればきっと、青く輝く綺麗な海が拡がっているはずの場所だった。
「ごめん」
呟くように発した言葉。こんなはずじゃなかったのにと、後悔が芽生えていた。目の前には、曇り空の色を映して灰色に濁った海面があった。
「何で謝るねー?」
助手席のドアを閉めた恰好のまま、彼女は言った。まるで何も気にしていないような、明るい声だった。
「だって、せっかくだし綺麗な海が見たいだろ?」
「海なら、またいつでも見に来れるさぁ。海に囲まれてるのにして」
彼女の声は、とても明るい。本当に、何も気にしていないのだろう。それ以前に、こんな曇り空の下に拡がる、灰色の海さえも見慣れているのだろう。
「でも、僕がちゃんと天気予報とか確認してたら、こんなことには……」
「まーだ言うわけぇ? 天気予報とか当てにならんのに、ケーイーの所為じゃないさぁ」
笑いながら、彼女は歩き出す。大きく両腕を拡げながら、
「それにー」
と、言う。
「晴れてる方が、ナーズー嫌いだから、曇りで丁度いいぐらいよぉ」
「え、そうなの?」
驚いて訊き返すと、彼女は振り向いてニカッと笑った。
「沖縄の太陽ナメてるでしょ。一応言うけど、超強力だからね。すぐ日焼けするし、シミもできるよ」
「それで、日焼け止めを塗りたくってたわけね」
「乙女の悩みさぁね」
そう言ってくれるなら、心も軽くなる。自分のためだというふうに言いながら、そこには僕への気遣いもあるのだろう。それが感じられたから、僕はやっと気にしないことに決めた。といいつつも、まだ完全に晴れたわけではないのだけれど。
「ケーイー」
彼女が、僕を呼ぶ。
「ん? 何?」
「エンダー行こう!」
彼女の口から飛び出した単語に、僕の脳内にクエスチョンマークがいくつも浮かんだ。
「エン……ダ? 何それ?」
「知らんわけー? いいところよー。今日の昼ご飯は、エンダーにしようかねー」
そう言いながら駆け寄ってきた彼女が、普通に運転席のドアを開けたので、僕は驚いて彼女の肩を摑んだ。
「ちょっと待って。何でこっちに乗るの?」
その車は、僕の車だった。友人の父親が、「サートーのドゥシグヮーなら、出世払いでいいさぁ」と、豪快にくれた中古車だ。今日も、彼女を乗せてからここに着くまで、ハンドルを握っていたのは僕だった。
「はぁ? 何でって、決まってるさぁ」
きょとんとした顔で、彼女は口を開く。
「ナーズーのが運転上手いのに」
頭を殴られたような、衝撃を感じた。それは、彼女の台詞が僕にとって図星だったからだ。
「だぁもう、どいて。ナーズーが運転するから。ケーイー、道わからんでしょ?」
確かに、道もわからない。沖縄で暮らし始めて今年で四年目を迎えたが、正直な話、だから何だという感じだ。どこに何があるかなんて、わかりゃしない。大学のある近辺ならどうにかなるが、そこから離れるとお手上げだった。
そして、運転技術も大したことはない。そもそも、大学生になってやっと免許を取った僕と、大学生になる前に免許を取った彼女とでは、経験の差が少なからずあるわけで……。あぁ駄目だ、そんなこと考えてたら情けなくなるじゃないか。
仕方なく、彼女が運転席に、僕が助手席に乗り込む。僕はシートベルトを締めながら、
「お願いだから、安全運転で頼むよ」
と、言った。彼女は豪快に笑ってみせる。
「だーいじょうぶよぉ。事故ったことないのに」
うん、知ってる。そう心の中で呟いた。むしろ、僕の方が事故を起こすかもしれないからね。もっと運転技術を上げないとね。
彼女がエンジンをかける。そうして僕らは、灰色の海から背を向けたのだった。
ウチナーヤマトゥグチのアクセントというか、イントネーションというか……表現できないのが辛いです。
何かわからない言葉とかがあれば、お気軽に感想などに書いてくださいませ!! 答えられる範囲でお答えしたいと思います。
それでは、また次回でお目にかかれますように!! 読んでいただきありがとうございます。