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シャウのお願い3

 しばらくしてタニが目覚めた。

 「……んむ……。」


 タニは目をこすりながらゆっくりと起き上がる。タニは竜宮のロビーのソファで寝かされていた。


 「……あれ?私……どうなっちゃったの?」

 タニがぼうっと向かい合わせのソファを見つめる。目の前のソファにはリュウが座っていた。


 「お。目覚めるの早えな。んじゃ撮影に……。」

 「ん?え?ちょ、ちょっと待ってください!」

 「あんだよ?」

 リュウが寝起きのタニを連れて行こうとしたのでタニは慌ててリュウを止めた。


 「私、なんで寝ているんですか?」

 「そりゃあ、お前が気絶しちまったからだよ。」


 「え!気絶!?」

 タニはまたも気絶しかけた。それをリュウが肩をゆすって元に戻す。


 「おい!しっかりしやがれよ。これから撮影だって言うのに。」

 「撮影はもう終わったんじゃないんですか?」

 タニがきょとんとした顔でリュウを見た。


 「ああ?終わっているわけねぇだろ。おら、行くぞ。」

 「え?あのっ!ちょっとぉ!」

 タニはリュウに半ば強引に外へと連れ出された。


 気が付くとタニは竜宮内の名物、二神乗りジェットコースターに乗せられていた。


 「……はっ!ちょ……これ……ジェットコースター!」

 タニはシートベルトを締められて安全バーが降りたところで我に返った。


 「ひぃいいい!う、動けないぃ!」

 「動いたら危ないんだナ!スマイルスマイルなんだナ。シャウ!」


 ふとタニの隣でシャウの声が聞こえた。タニが恐る恐る横を向くと隣で先程の犯神はんじんシャウが楽しそうに笑いながらタニを見ていた。


 「しゃ……シャウさんっ!ひぃいい!」

 タニがシャウに悲鳴を上げた時、二神乗りジェットコースターは無情にも動き始めた。


 「だっ……誰か助けてー!リュウ先輩!助けて―!」

 タニはなぜかリュウに助けを求めた。このジェットコースターに乗せたのはリュウなのだが。


 「んん……まあ、その顔もありだぜ。かなりデンジャラスなジェットコースターだからなあ。」

 ジェットコースターが昇っている最中、大きな龍が一緒に横を泳いでいた。その龍からはリュウの声が聞こえた。


 リュウは龍神なのでもちろん、本来の龍にもなれるのだ。


 「シャシャシャシャーウ!」

 シャウは楽しそうに歌を歌っているがタニはもうすでに絶叫を漏らしていた。


 リュウは龍のまま、空間をタッチし、空間にアンドロイド画面を起動させる。そのままムービーボタンを押してムービーの撮影をはじめた。画面にはばっちりタニの泣き顔が映っていた。


 ついに頂上へ達し、二神乗りジェットコースターは急降下をはじめた。


 「いやあああ!」

 「シャーウ!」

 それぞれ真逆の反応をしながら二神は奈落へと突き落とされた。タニが絶叫を漏らしながらわけがわからなくなっている最中、リュウが弾んだ声でタニに声をかけていた。


 「おぅ!いいぞぉ!怖い感じがちゃーんと出てやがるぜ。」

 「ぎゃああああ!」

 しかし、リュウの声はタニの絶叫でかき消された。隣のシャウは楽しそうにしている。


 シャウは気分が高まってきたのか体中からピリピリ電気を発し始めた。

 それを横で感じ取ったタニはさらに顔を青くし、叫び始めた。


 「ぎゃあ!助けて!ほぅ……ほぅでん!?ほぅでんがああ!いやああ!」


 「うわっ!こりゃあまずい!タニ、安全バー外してジェットコースターから飛び降りろ!」


 「ふえええ!?いきなり何言ってんですか!飛び降りろってなんですか!馬鹿言わないでください!無理ですってば!」

 シャウの電撃具合を見て慌てたリュウはタニにかなり無理な指示を出した。


 「っち……やっぱ無理か。シャウ、てめぇ、タニを襲うなよ!我慢しろ!いいな!」

 「シャウ?シャウは別にタニちゃんにムラムラきているわけじゃないんだナ。」


 「お前の頭はこんにゃくゼリーか!馬鹿野郎!電気を我慢しろって言ってんだよ!」

 呑気なシャウにリュウは鋭く言い放った。


 しばらくして恐怖のジェットコースターが元の定位置に戻ってきた。


 「あ、終わったんだナ!あ、あれ?くしゃみが……。」

 シャウが鼻を触り始めた刹那、リュウは半分気絶しているタニを引っ張り出し、慌てて走り出した。


 「ひぃいいっ!やっべえ!」

 タニを抱きかかえてリュウが走っているとシャウがデカいくしゃみをした。


 「シャアウ!」

 シャウがくしゃみをした時、強い光と共に強力な電撃が地面を這い、大規模な爆発を起こした。


 「ひぃいいいいい!」

 リュウとタニはお互いを抱きしめ合いながら涙目で大爆発を見つめた。


 しばらくして砂埃もクリアになると焼け焦げた二神用のジェットコースターが無残にも転がっていた。その前にシャウが立っており、首を傾げている。


 「なんだかすごい電気が出ちゃったんだナ……。ここまでなのは久しぶりなんだナ!シャウ!」


 「てめぇ!何てことしてくれてんだ!特撮の最後のシーンみたいになっちまったじゃねぇか!あぶねーだろうがよ!」

 リュウは柄杓でシャウの頭をぽかんと叩いた。


 「ごめんなんだナ!あ、あれ?タニちゃんはまた寝ちゃったんだナ?シャウ!」

 シャウが全く動かないタニを心配そうに見つめた。タニは白目をむいたまま完全に気を失っている。


 ちーん……。


 「てめぇのせいだからな!あーあー……ジェットコースターがこんな無残に……。タニもこんな無残に……。」

 リュウが焼け焦げたジェットコースターを眺め、その後、タニを抱き上げた。


 「危なかったんだナ……。ごめんなんだナ!シャウ!」

 「ああ、お前は大いに反省しろ!頼むから電気を操れるようになれよな……。」


 「で?ムービーはどうなったんだナ?」

 シャウはリュウの目線に浮いているアンドロイド画面を覗いてきた。


 「ん?ああ、まーまー撮れたが……。」

 リュウはシャウのアンドロイド画面にデータを送った。


 「おお!この最後の爆発まできれいに撮れているんだナ!シャウ!」

 「正直そこはいらなかったし、このままじゃあ、オーナーに殺されるぜ……俺様。」

 リュウは深いため息をついた。

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