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たにぐち4

 気が付くとタニはホテルのロビーのような所にいた。


 ロビーには他の神は全くいなかったが龍神らしい神はちょろちょろと歩いていた。窓から外をちらりと見ると外は何やら遊園地のようになっている。けっこう賑わっているようで龍神ではない神々が列を作ってアトラクションに乗っているのが見えた。


 「すげぇだろ。ここが竜宮だぜ。」

 ふとリュウの声が隣から聞こえた。タニは窓から目を離して慌ててリュウの方を向いた。


 「こ、ここが竜宮なんですか?」


 「ああ、ここは竜宮のロビーだ。外は遊園地でこのロビーの上の階はバーチャルアトラクションで宿泊施設と宴会席も用意してあるんだぜ。遊びどころはいっぱいあるがお前は仕事だから遊んでいる暇はないぜ。」


 リュウは得意げにふふんと笑うとタニを促して歩き出した。


 「あ、あの……カメさんは?」

 タニはカメがいない事に気が付いた。


 「ああ、あいつは別の用事で呼ばれちまったからな。別れたぜ。本当は一緒にこの中を案内する予定だったんだが……まあ、あいつがいてもいなくてもどうせ説明にならねぇからいなくてもいいだろ。」


 「そ、そうですか……。」


 「おら、行くぜ。」

 リュウ様が二階へ上がる階段へと歩き出したため、タニも慌てて追いかけた。

 しかし、二階に行く前にタニの前を何者かが乱入してきた。


 「わっ!」

 「お!新神なんだナ!シャウ!」


 タニの前に現れたのはシルクハットを被ったハイカラ雰囲気の青年だった。ワイシャツと着物に袴だ。目が悪いのかなんなのかわからないが眼鏡をしている。

 青年は端正な顔立ちに似合わない言葉遣いでタニに話しかけてきた。


 「竜宮はいつ来ても楽しいんだナ!シャシャシャシャーウ!」

 「あ……えっと……お、お客様……?ですか?」

 タニが困っていると呆れ顔のリュウがタニと青年の間に割り込んできた。


 「シャウ、邪魔だ。今は頼むから俺様の邪魔だけはすんな。」


 「お!リュウなんだナ!シャウはお客様なんだナ!その態度はダメなんだナ!シャウ!」

 リュウにシャウと呼ばれていた男は手に持ったステッキで謎のダンスをしながら楽しそうにリュウに詰め寄った。


 「うわっ!こっち来んな!来んなっつってんだろ!お前は確かにお得意様だがめんどくせぇんだよ。」

 「ひどいんだナ!電気びりびりやってお仕置きするんだナ!シャーウ!」

 シャウと呼ばれた青年はビリビリと体中から火花を散らし始めた。


 「お、おわっ!や、やめろ!ここには新神もいるんだ!」

 リュウが慌ててシャウを止める。シャウはちらりとタニを見るとにこやかに笑い、大きく頷いた。


 「うん。さすがに女の子を丸焦げにするのはかわいそうなんだナ。巻き込んじゃう所だったんだナ。ごめんなんだナ……。シャウ!」


 シャウは目に涙を浮かべながらビクビクしているタニをそっと撫でた。


 「あわ……あわわ……。」


 タニはなんだか目が回りそうだった。いきなり高電圧の放電を食らう所だったのだ。パニックになるのも無理はない。


 「わりぃな……こいつは加茂別雷神かもわけいかづちのかみ、雷神だ。神格はかなり高いはずだがオチャラケなんだ。俺様とはまあ、腐れ縁で『シャウシャウ』うるせぇから俺様はシャウって呼んでる。」

 気絶寸前のタニを元に戻しながらリュウはシャウの紹介をした。


 「シャウ様~りゅう~ぐ~じょ~へようこそ~……。」

 タニは目を回しながらシャウにとりあえず挨拶をした。


 「シャウ!ああ、ごめんなんだナ!シャウのせいなんだナ!」

 シャウはオドオドとタニの様子を窺いながら謎のダンスを始めた。


 「ええい!邪魔だ!向こうへ行ってろ!……じゃねぇな……お客様、大変申し訳ありませんが質問等がございましたらあちらのサービスカウンターでお願いいたします。」

 リュウは後半シャウに丁寧な言葉遣いでやんわり向こうへ行けと言っていた。


 「……リュウが気持ち悪いんだナ。よそよそしくなってなんだか冷たいんだナ……。シャウ!」

 シャウはしゅんとした顔で下を向いた。


 「……おめぇはどっちがいいんだよ……。さっきと言ってる事逆じゃねぇか……。」

 「ま、いいんだナ!じゃあ、向こうで遊んでくるんだナ!バイバーイ!シャーウ!」

 リュウが頭を抱えているとシャウは突然、元気になりさっさと外へ飛び出していった。


 「あー……なんなんだよ……めんどくせぇやつ……。おい、タニ、平気かよ?」

 「あ……はい。あー……びっくりしました……。」

 リュウが揺すってタニを元に戻す。


 「いきなりすげぇのに当たったな。あいつはいつもああだがワリィやつじゃねぇんだ。それからあいつ程度でビビってちゃあ駄目だぜ。ここ、竜宮は高天原四大勢力と月と太陽の姫君もよく宴会などで遊びに来る。ものすげぇ威圧を発しているが本神達は普通だ。そのうち、お目にかかる事もあると思うがビビんなよ。」


 「は、はぃい!」

 タニはまたビシッと背筋を伸ばして勢いよく返事をした。


 「お前の返事の仕方ってなんでそんなにおもしれぇんだよ……。よし、じゃあ、まずは竜宮の案内から行くぜ。」


 「はいぃ!」

 リュウはタニの返事にケラケラと笑いながら竜宮の案内を始めた。


 ……なんだか曲者が多そう……。やっていけるかなあ……。

 タニは沢山の不安を抱えながら恐る恐るリュウについていった。


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