表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/49

タニとリュウ2

 「では我々も向かおう。谷龍地とリュウにも色々とやってもらう事がある。」

 オーナーにはちゃんとした計画があるようだ。まったく言い方に迷いがない。


 「なんか必ず何とかできるオーラがあんだよなー。オーナーには。」

 リュウはもう完全に安心したのか半分てきとうになっていた。


 「そんなことはどうでもいいから私の話をちゃんと聞け。……リュウには加茂の雷雲から雨を降らせてもらう。飛龍も雨を降らすことができるがあれは温度管理の方が向いている。飛龍は大雨を呼んでしまうがリュウは小雨を呼べるだろう。大雨ではなく適度がいいのでこちらはお前に任せる。」


 「はあ……ていうかよ、あんたが全部やればいいんじゃねぇのか?オーナーは全部の能力が使える最強の龍神じゃねぇか。」

 ちゃっかりオーナーにも何か仕事をさせようとしているリュウはふてくされたようにつぶやいた。


 「私が行えば力をどれだけ抑えても日本の半分が大変な異常気象になってしまう。故に何もできない。神力が高すぎるのも困りものだ。話を続ける……。」

 「確かにな……。」

 リュウを軽く払ったオーナーは続きを話し始めた。


 「谷龍地はちゃんと神として谷村へ帰れ。そしてタマリュウを元気にするのだ。」

 オーナーはタニの方を向くと真剣なまなざしを向けた。


 タニは固唾を飲むと「はい!」と元気に返事をした。


 「よし、私は全体を見て足りないところを支持する。谷村へ行くぞ。」

 「おーっ!」

 オーナーの掛け声にタニとリュウは同時に声を上げた。

 「……『おーっ』てな……運動会ではないのだから……。まあ、良いか。」

 オーナーは呆れた顔をタニとリュウに向けると谷村へと行くべく足を速めた。


****


 タニ達は急いで谷村へと足を進めた。高天原の認証ゲートを過ぎて現世に降り立ち、そこから神々の使いである鶴に乗り谷村へと入った。


 谷村は日本地図を拡大してもわからないような小さな島の一角にあり、村のまわりは山だらけだった。

 だがちゃんと小学校やスーパーなどもあり生活にはあまり困らなそうだ。


 「ここか?」

 リュウは日本家屋が並んでいる静かな田んぼ道を見回しながら尋ねた。


 「はい。」

 タニが近くに刺さっている苔の生えた木の看板を指差した。その看板には『タマリュウの里谷村!隠れ秘境観光スポットへようこそ!』と書いてあった。


 「うわあ……観光に村人必死じゃねぇか。こりゃあまあ……ずいぶんとすごいとこだな。」

 リュウはいたずらっぽく笑った。


 「まだ先があります!」

 タニは看板の下にあった同じような看板を指差した。下の方にあった看板にはびっしりと文字が書き込まれていた。


 『宿はお決まりですか?民泊OK!元気で旬なタマリュウをご覧になりながら谷村の郷土料理を食べてみませんか!?タマリュウ風のお菓子も人気です!ぜひ、お土産に!エーテーエムはセベンイレべンにありますよ!ここ唯一のコンベネエンスストアです。なんでもそろいます!ここから谷野山を越え20キロです。


名物白酒は頭からかぶると大変危険です。ビールかけはしないでください。青山整骨院への行きかたは谷野山から東に5キロです。ご予約は不要ですが整骨院は大人気です。開始時刻二時間前から並んでください。到達最高記録は前場陽介さん八十六歳、記録午前五時三十分、待ち時間三時間五十六分……突然牛の群れが通る事があります。ぶつからないようにしましょう。


……朝六時は皆でラジオ体操!身体を動かすと気持ちいいな!……小学生による焼き芋フェスが谷野小学校で行われます。皆で食べるとおいしいぞ!……そして町内会のお知らせですが……』


 「なげぇ!内容がだんだんカオスになってやがる!何がしたいんだ!ここの村人は!青山整骨院の到達最高記録ってなんだよ。後半、バスの車内アナウンスみたいになってんじゃねぇか!しかもエーテーエムとか地味になまってんし。突っ込みどころ満載だぞ!」


 「前場陽介さんは超有名ですよ!リュウ先輩!夜明けとともに整骨院に並び、青山ドクターにおにぎりを差し入れしてもらったという伝説があるんです!」

 「あー、えーと……もうなんかいいや。」

 タニが詰め寄って来るのでリュウはタニを呆れながら追いやった。


 「お前達、もたもたするな。谷村の神社付近まで行くぞ。」

 オーナーがため息交じりにタニとリュウを引っ張って無理やり歩き出した。

 「ああ、わかってるよ。」

 リュウはオーナーに連れ去られながらふてくされたようにつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ