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ついにオーナー出現!1

後、残り一話でこのお話はおしまいです!

最終話に繋がるこの回はちゃんと区切れていませんが最後に繋がるつなぎ目だと思っていただければ……

挿絵(By みてみん)

 神々が住む高天原に娯楽施設が固まっているテーマパーク、竜宮があった。竜宮は龍神達の住まう所であり、職場である。龍神達はこのテーマパーク竜宮でいつも疲れた神を癒しているのだった。


 そんな竜宮で谷村の活性化のために神力を上げに来た少女神タニは先輩に振り回され、客に振り回されといつも賑やかな毎日を送っている。


 タニが入社して半年がたった。今はずいぶんと寒い時期でこの時期の客はテーマパークを楽しみに来るよりは竜宮内にある宴会席を楽しみに来る。

 そろそろ雪が降ってくるかもしれない。そういう時期である。


 「私、神力高まっているのかなあ?」

 タニは竜宮内アトラクション受付のロビーの清掃をしていた。竜宮は最新機器も多いのだがなぜか掃除はアナログである。タニはモップを片手にワックスがけをやっていた。

 今日の竜宮はアトラクションのシステム点検のためお休みである。


 「ふーん、ふーん。」

 タニはご機嫌に鼻歌を歌いながらワックスがけをやった。


 「はっ!」

 そして気がつくと一歩も動けない状態になっていた。


 「うわーん!離れ小島みたいになっちゃったよぅ!」

 ワックスは乾くまでしばらくかかる。それを計算せずにタニはこの広いフロアをワックスがけしてしまった。その結果、この広いロビーのど真ん中で歩けもせずに立ち往生していた。まさに離島である。


 「誰かー!助けてくださーい!」

 タニは半泣き状態で叫んだ。このフロアのワックスがけ担当はタニだけなため、いくら叫んでも誰も来なかった。タニはその場にしゃがみこみしくしくと泣いた。


 「なんで外側から回ってワックスかけちゃったんだろ……。しくしく……。」


 タニがめそめそと泣いている時、ロビーに繋がる廊下からタニの先輩リュウが都合よく現れた。リュウは黒地に金色の龍が描かれている着物を半分だけ脱いでおり、ぱっと見怖そうなお兄さんだが根はやさしい男である。


 「タニー!何やってんだよぉ!」

 リュウはタニの事情を知らずに楽観的に叫んだ。


 「リュウせんぱーい!助けて―!うえええん!」

 「はあ?どうした……ってこれはワックスか?」


 タニの泣き顔とワックスがかけられた床を交互にしばらく眺めていたリュウはやがて笑い出した。


 「はははは!お前、馬鹿だな!こんなおもしれぇワックスがけする奴、俺様初めてだぜ!傑作!はははは!岸から遠く離れた無人島になってやんの!」

 リュウは遠くでタニを笑っていた。


 「リュウ先輩!笑ってないで助けてください!」

 タニはさらに涙目になって叫んだ。


 「わかったよ。泣くなよ。今助けるから。」

 リュウは爆笑しながら軽々とタニの方へジャンプしてきた。


 「!?」

 タニはまさか飛んで来るとは思わず、目の涙も一瞬で乾いてしまった。


 「んあ?何ビビってんだよ。」

 わずかなワックスなしスペースに足をつけたリュウは動揺しているタニを不思議そうに見つめた。


 「リュウ先輩、ここまで二十メートルくらいあるんですけど……。」

 「普通だろ。こんくらい。」

 「ふ、普通……なんですかね……?」

 タニは首を傾げ冷や汗をかいた。


 「……そういやあ、お前……なんで龍神なのにそんなに身体能力がねぇんだ?地味子だって頑張ればきっとこれくらい飛ぶぜ?」

 「地味子さんが!?わ、わかりませんがとりあえず、私を救出してください!」

 タニは恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にした状態でペコペコとリュウに頭を下げた。


 「っち、仕方ねぇなあ。」

 リュウはタニを抱きかかえ、タニが持っていたモップとワックスも小脇に抱えて再び二十メートルくらい先の廊下へ華麗に飛んだ。


 「ほい。」

 リュウは廊下に足をつけ、タニを下ろした。


 「ありがとうございました!後日、あそこだけもう一度塗りなおします……。」

 「んあ……そうしろ。」

 リュウはタニに適当に返事をすると廊下の先を見て顔をしかめた。


 「……?どうしました?」

 タニがリュウの向いている方向を向くとシルクハットにシャツに袴のハイカラな格好をしている男が楽しそうに踊っているのが見えた。


 「シャウ……。今日は休みだぜ……。なんであの野郎ここにいんだ?そんでなんでエキサイトしてんだよ……。」


 ……エキサイトしている。

 リュウが口にしたシャウの一言にタニは少し前の恐るべき記憶が蘇ってきた。

 あれは夏だったか……。竜宮のPRのためにシャウに殺されかけた。

 あの時のシャウはスーパーエキサイトしていた。


 「うわーん……。」

 タニはリュウの影に隠れ、思い出したくない記憶を鮮明に思い出し、怯えた。


 「タニ、大丈夫だ。見ろ。なんだか知らねぇがオーナーと一緒だ。」

 「え?オーナー?」

 タニはシャウの隣にいた緑色のきれいな髪をしている男に気がついていなかった。


 頭に大きなツノがあり、瞳はオレンジ色で凛々しい。パッと見て好青年だが身長が高く、程よい筋肉が着物から出ている。


 「あの方がオーナー……。」

 「お前、オーナーに会った事なかったっけ?」

 「ないです。」


 タニは入社してから一度も社長である天津彦根神あまつひこねのかみに出会ったことがなかった。


 「マジか!じゃあ、あいつもいっけどさ、挨拶してこよう。」

 「え?あの……シャウさんはちょっと……。」

 「ん。」

 嫌がるタニを半ば無理やり抱え込み、リュウはオーナーとシャウのいる場所へと歩いて行った。


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