冷林ぬいぐるみ騒動1
このお話も九話までいきました。
あと、もう少しで終わりです!!
神々が住む場所、高天原の南の方に神々専用のテーマパーク竜宮城があった。竜宮城は龍神達の住処でもあり、龍神達の仕事場でもある。テーマパーク竜宮のオーナー天津彦根神を慕う龍神はここで仕事をしつつ、オーナーに守られている。
もてなすのは疲れを癒しに来た神々である。高天原東西北、それから月、太陽のリーダーが遊びに来ることもしばしばで場をほどよくかき回して去って行く。
ここで働く下っ端龍神少女のタニは城の外にあるアトラクションのベンチで青いぬいぐるみを拾った。
現在、午後七時を過ぎた所で真っ暗だ。だいぶん日が短くなって寒い。もう秋の真っ只中である。
「……なんかかわいいぬいぐるみ。誰かの忘れ物か、捨てられちゃったのかな……。」
タニはひとり呟くと青い人型クッキーのようなぬいぐるみをやさしく抱いた。特に目も鼻も何も描かれていないが顔だと思われる部分にナルトのような渦巻が描かれていた。
外のアトラクションは冬は六時半には終わってしまう。今は暗く、お客さんもいないのでどこか寂しい。現在、新イルミネーション設置案が出ており、営業時間はもう少し伸びるかもしれない。
「……とりあえず、忘れ物センターに持って行こうかな。」
タニは鼻歌を歌いながら城内部に入って行った。中のアトラクションはまだやっている。これからは子供の時間ではなく大人の時間に入る。竜宮に宴会をしに来る客もいる。この時間帯からは宴会の接待などが主な仕事だ。
タニは今日、夕方で上がりなのでこれからは自由だった。
タニは鼻歌を歌いながら宴会席受付がある近くのロビーに向かった。そのロビー内の端っこの方に忘れ物センターはあった。
タニが忘れ物センターへ足を進めていると突然、目の前にタニよりも年上だろうと思われる少女が現れた。
「うわっ!」
タニは驚き、二、三歩後ろにさがった。
「あー、それ私のです。でもいらないからあげます。大事にしてくださいね~。」
緑の布のようなものを被った怪しい黒髪の少女はタニの頭を撫でると短い着物を翻して去って行った。
「……え?……え?ちょっ……ちょっと待って……?え?」
タニは突然の事に目をぱちぱちさせながら戸惑った。しばらくぬいぐるみと忘れ物センターを交互に見ていたタニはさっきの少女の言葉を反芻してからぬいぐるみをもらう事にした。
なんだかいやな予感がしたがこのぬいぐるみの不気味な可愛さになぜか虜になってしまった。
竜宮内の従業員住居スペース内の部屋に戻ったタニはもこもこしているそのぬいぐるみと戯れていた。
「よく見たらすごいかわいいのに……。今日から私と一緒だよ。一緒に寝ようか。」
タニはぬいぐるみを抱きながらベッドでゴロゴロし始めた。
ぬいぐるみを抱きしめてウトウトしていた時、ドアをノックする音が聞こえた。
タニはまどろんでいたため誰かを確認しに行かず、ただ「開いてまーす。」とだけ言った。
「お、おいおい……鍵くらいかけろよ……。女の子だろ。酔った客が入ってきて襲われたらどうすんだよ。しかも寝てやがるし……危なっかしい奴だな。……入るぞ。」
タニの部屋に入ってきたのは緑の短い髪をしている怖い顔のお兄さんだった。黒字に金の竜が入った着物を着ており、それを半分脱いでいた。追加で言うと謎のシュノーケルが頭についている。ファッションにしてはあまりにぶっ飛んでいた。
「きゃっ、うきゃあ!不審者?」
タニは寝ぼけながら珍妙な格好をしている男に奇妙な声で叫んだ。
「ひでぇな……不審者だと?」
「……って……リュウ先輩!ああ……びっくりしました……。いきなり目の前にいるんですもん……。」
タニは横になっていたがそれがタニの先輩リュウであるとわかると素早く起き上がった。
「入るぞって声かけたじゃねぇかよ……。ちゃんとノックもしたし……お前が無防備過ぎるんだ!とりあえず寝るときは鍵をかけろ!」
「……はい……。ごめんなさい。……ところでどうしたんですか?」
タニは突然のリュウの訪問にびくっと肩を震わせながらベッドに正座した。
「んん……いやあ、別にこれと言って用はねぇんだが今、天界通信本部のやつを見て……ん?お前、ぬいぐるみ抱いてんのか?女の子とぬいぐるみってなんかかわいいな。……って……お前それ……。」
リュウは話の途中で目を見開いた。顔色が急に悪くなっていく。タニは首を傾げながらリュウに尋ねた。
「先輩?大丈夫ですか?リュウ先輩もぎゅってしますか?けっこう気持ちいいですよ。」
タニは青い人型クッキーのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
「俺様はお前の頭が大丈夫かを問いたいぜ……。いますぐその方を離せ!」
「ふえ?な、何するんですか!」
リュウは慌ててタニとぬいぐるみを離した。タニは半分涙目でリュウを見上げた。
「あのな、このお方は高天原北のトップ、縁神、通称北の冷林だ!」
「えええっ!」
リュウの言葉を聞いてタニは驚きの声を上げた。




