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太陽の乙女1

今回はTOKIの世界書シリーズで主人公だった太陽神サキをゲストとして出しています!

挿絵(By みてみん)

 神々のテーマパーク、高天原南にある竜宮城は真夏の時期を抜けて客足が少し落ち着いてきた。

 年中神々は遊びにくるが秋月は中秋の名月を見たり紅葉を楽しんだりなど竜宮よりも現世の方が神々にはアツいらしい。


 そして秋になってくるとアトラクションを楽しむ神々よりも宴会を楽しむ神々が多くなってくる。竜宮は普段と変わらずに営業しているが季節感があまりないので忙しさの時間帯が変わるくらいで大して変わらなかった。


 緑のおかっぱ少女タニは暑かった夏とは違い、着物に羽織を羽織って仕事をしていた。


 「い、いらっしゃいませ!こちら宴会席では秋限定の催しを開催中です!」

 タニはお祭りの宴会で来た神々の誘導をしていた。


 「ねぇ……ちょっとちょっと……。」

 タニがお客を誘導しているとどこかから声が聞こえた。タニはきょろきょろと辺りを見回した。


 「こっち……こっち……。」

 タニの右側の方で声がした。タニが右側を向くと壁に寄りかかった若そうな女がこちらに向かい手を振っているのが見えた。


 「……?どうしました?」

 タニは女に声をかけ近づいた。女はニコニコ笑いながらタニを手招いていた。赤い気品ある着物に太陽の王冠を被っている。タニは一発でこの女神がかなり上の地位である神だと見抜いた。


 「あー……あたしはアマテラス大神の加護を受けている太陽神トップの輝照姫大神こうしょうきおおみかみサキって名前なんだけどちょっと提案があってね。」

 女は太陽神トップを名乗ると猫のような愛嬌のある目を緩ませて笑った。


 「さ、サキ様……ど、どのようなご提案ですか?」

 タニは太陽神のトップ、サキを怒らせないようにかなりの腰の低さで尋ねた。


 「まず、あんたの名前を聞こうかね?なんていう名前だい?」

 「え……?はい!私は谷龍地神たにりゅうちのかみです!」


 「……たにぐち?日本人みたいな神だねぇ。」

 「い、いえ……谷龍地……なんですけど……。」


 今まで何度も『たにぐち』と間違えらえたタニは今度こそという思いを込めてはっきりと名前を言った。しかし、太陽神のトップにも正確に聞き取ってもらえず、勝手に名前がたにぐちになってしまった。


 タニは落ち込みがっくりとうなだれた。


 「たにぐちさんさ、乙女ゲームって知ってるかい?」

 太陽神トップ、サキはタニの状態を丸無視してワクワクした顔で尋ねてきた。


 「乙女ゲーム?なんでしょうか?王様ゲームみたいな感じでしょうか?」

 「違うよー。イケメンが一杯いてさ、それを一人ずつ落としていくゲームで……。」

 サキの言葉を聞き、タニは顔をさっと青くした。


 ……イケメンが一杯いて……それを落としていくゲーム……絞め技とかかな……どうしてサキ様はそんなゲームを……。


 「あ、あの……落とすならイケメンじゃなくてもいいのではないでしょうか……?マッチョなレスラーさんとかボクシングチャンピオンさんとか落としたらオオ!ってなります。そういう方と対戦した方が……。」


 タニはわけがわからなかったが頑張って無理やりサキに話を合わせようとした。内容は盛大に外れた方向へいっていた……。


 「ん?ちょっと待って?何言ってるのか全然わかんないよ。イケメンを落とすからいいんじゃないかい。」

 「で、でも……イケメンでも力の弱い男の神もいるし……下手したら死んでしまうかも……。」

 タニの必死の顔を見ながらサキは「死ぬっ!?」と叫んだ。


 「ちょちょ……ちょっと待っておくれ、たにぐちさん、イケメンを自分に振り向かせるって事だよ……?死ぬって何だい?」

 「え?」

 タニは首を傾げた。


 「んん……言い方が悪かったね。沢山のイケメンと甘々な恋ができる夢のようなゲームって事さ。竜宮にはそういう感じのアトラクションがないからさー。お客様の声としてそういうアトラクションを作ってほしいなあって……思っただけだよ!」


 サキはここまで話がこじれるとは思っていなかったので頬を赤く染めながら叫んだ。


 「あ……なるほど……。わ、わかりました!理解が乏しくて申し訳ありません!」

 タニも顔を真っ赤にしてサキにしきりに頭を下げた。


 「いーよ。いーよ。知らない神けっこういるからさ。乙女ゲーム。……疑似恋愛ができるって言った方が早かったよ。ああ、この竜宮にはあまーいマスクの男神はいるのかね?」

 「……甘いますく?」

 サキの言葉にタニは甘そうなマスクメロンを想像していた。


 「たにぐちさん……あんた、今メロン想像してないかい?メロンじゃなくて甘いマスクってイケメンの事だよ!」


 「イケメン……えーと……ごめんなさい。甘いマスクってどういうお顔の方なのでしょうか?」

 「……え?どーいう……?」

 タニに尋ねられてサキは逆に戸惑った。


 「……どーいう顔……ん?どういう顔なんだろ?かわいらしくて目がクリクリで母性をくすぐられる?んん……でも、マッチョで色黒でも優しそうな雰囲気が出ていれば言いそうだし……。


 あえてマスクってところから優しそうな顔をしていて実は心は真っ黒みたいな闇男とかも含まれそうだし……無駄に強くてワイルドでも甘い感じだったら言いそうだし……甘い感じってなんだろ?……つーか、甘いって何?……ねえ?どういう顔なんだろうね?」


 サキは自分で言っておいてタニに尋ねてきた。


 「……わ、わからないです……。」

 「まあ、とりあえず、誰か連れて来てよ。甘いマスク判断はあたしがするからさ。」

 話は知らない内に甘いマスクとはどういう顔かになってしまっていた。


 「わ、わかりました!」

 現在は午後四時過ぎ、タニは大きな声で返事をすると甘いマスクを探しに走り出した。

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