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思兼神の無茶ぶり3

 お客様相談センター前ではカメがワイズを必死で盛り上げていた。

 「しっ、新作のフラダンスです!ラーララー!」

 カメはワイズの前で着物姿のままフラダンスをしていた。


 「うーん……もっとロックな感じがほしいYO!よし、英語でラップしながらフラダンスでどうだYO!ドゥーフラ!DOフラ!」

 ワイズはなぜかカメに新作ダンスのレクチャーをしていた。


 「どぅフラ?」

 「英語だYO!『フラダンスをする』を英語で言うとDOフラァ!」

 ワイズはなんだかとても楽しそうだ。


 「わ、わかりました!どうフラ!どうフラ!」

 カメは一生懸命にワイズの要望に応えていた。


 「……あいつら何やってんだ?」

 呆れた顔をしたリュウが遠目からワイズとカメの謎の会話を眺めていた。


 「ちょっとわかりませんが早くカメさんを助けましょう!」

 タニとリュウはお互いを見合うと軽く頷いた。


 そしてワイズの所へと向かった。


 「……ん?ずいぶんと遅かったNE?ま、いいYO。書けたのかNA?」

 「あー!やっと来たの?もう疲れちゃったさね!いきなり置いてくなんてひどいさね!」

 ワイズとカメがタニとリュウに気がつき声をかけてきた。ワイズの隣でカメがへなへなと突然座り込み、なにやらブツブツと怒っていた。


しかし、リュウとタニはそれどころではなくワイズに御朱印帳を渡す事に集中していた。


 「ど……どうぞ。」

 リュウが青い顔でワイズに御朱印帳を渡す。

 ワイズが御朱印帳を開き、まじまじと朱印を眺め始めた。


 ワイズのサングラスにゴキブリが映る。リュウとタニは真っ青な顔で目を瞑っていた。

 二神はもう写経ができそうなくらいの瞑想に入っていた。このまま経を唱えられそうだ。


 もう死んだと思ったがワイズからは意外な反応が出た。


 「うん!なかなかいいデザインだNE!ほら、この躍動感あるクワガタが夏っぽくていいし、クワガタのはさみがちょうど竜宮の文字を噛んでいる所も気に入ったYO!」

 「……へ?」

 顔を輝かせているワイズを不思議そうにタニとリュウは見つめた。


 「あ、あの……それゴキ……」

 「ば、馬鹿!お前はなんでわざわざ真実を言おうとしてんだよ!トチ狂ったか?」

 タニが言いそうになった言葉をリュウが素早く押さえつけた。


 「す、すみません……。なんか反応があれだったもので……。」

 「ああ、俺様も不思議すぎて頭がおかしくなりそうだぜ。」

 タニとリュウがこそこそと話しているとワイズが満足げに笑いかけてきた。


 「あんがと。じゃあ、この朱印を見せまくって新しい商売ができるようにしてあげるYO!じゃ、私はまず部下にこれを見せてくるYO!あー、天御柱みーくん!みてみてー……」

 ワイズはワイズを探しに来たらしいお面の男に先程書いたページを見せていた。


 「うわーっ!やめてくれー!よりによって超弩級の厄神の目にー!」

 リュウが去って行くワイズに向かって顔面蒼白で叫んだ。お面の男は天御柱神あめのみはしらのかみ。みー君との愛称で呼ばれているが破格の神格の厄神である。


 「りゅ……リュウ先輩……あの厄神さんから想定外な厄をもらうのでは……。」

 タニも蒼白で二神の会話を聞いていた。

 遠くの方でお面の男が興味深そうにリュウとタニが書いた朱印を眺めていた。


****


 しばらくしてタニとリュウはめまぐるしく働いていた。

 「た、タニ……俺様、もう書けない……。」

 リュウの前には積みあがった御朱印帳。その隣でタニが半泣き状態で躍動感のあるゴキブリ……もとい、クワガタを描いていた。


 「リュウ先輩……私このゴキブリ描きすぎて何描いているかわかんなくなってきました!」

 「頑張れ!」


 なぜかタニが描いたゴキブリが大好評でインスタグラムでなぜか「かわいい」と評判になり御朱印帳にその絵をもらおうとなぜか神々が押し寄せていた。リュウの達筆な習字とタニのコミカルなゴキブリが不思議な効果を生んだようだ。


 グッズ販売までされ、ポップなゴキブリにリュウの習字が入った扇子が飛ぶように売れた。竜宮のCMやHP画面もこのゴキブリになった。


 「……おいおい……これじゃあ竜宮の竜の字もねぇじゃねぇか……。竜宮なのになんだ、このマスコットは!」

 リュウは頭を抱えながらタニにゴキブリストラップをかざす。


 「リュウ先輩!遊んでないで後、百二十冊『竜宮』と書いてください!あ、わざと間違えてくださいね!」


 「ばかやろー!俺様の本来の仕事はツアーコンダクターだっつーの!わざとなんて間違えられるか!どんなスキルだ!」

 リュウとタニは干からびながら一心不乱に間違っている文字と躍動感あふれるゴキブリを描き続けた。

 それがどんどん周りに広まり、タニとリュウの仕事をさらに地獄化させた。


 どうして普通のお客さんが来ないの!?もうやだよー!

 と、タニは毎日心の中でこの言葉を反芻し、そして神格の高い神は基本、面倒くさいという事を体に刷り込ませていくのであった。

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