剣王の無茶ぶり2
「うおおおい!この馬鹿!だからよけーな事言うんじゃねぇって言ったんだ!どーすんだ!この馬鹿!おめぇなんてケツ百叩きの刑だ!コラァ!」
「ふえええん。ごめんなさーい……。」
リュウとタニは一旦、従業員住居スペースに戻ってきた。リュウは怖い顔で怒りながら膝に乗せたタニのお尻をパンパン叩いていた。
「ちょっと、うるさいんだけど。」
ふとタニの部屋に案内を終えたヤモリが入ってきた。
「ああ?今は取り込み中だ!向こう行ってろ!」
リュウはとてつもなく現在虫の居所が悪いらしい。ヤモリを睨み、声を荒げた。
「取り込み中って……タニちゃんのお尻なんて叩いて何してるの?君、なかなかな変態な趣味を持っているね。そういえばリュウは女の子のお尻好きだったね。タニちゃんでお楽しみ中なんだ。」
ヤモリは呆れた顔でリュウを見据えた。
「お楽しみ中じゃねぇ!お仕置き中だ!オラァ!」
「そんな事よりもなんだか剣王がウキウキだったけど君達なんかよからぬ事約束でもしたの?」
怒鳴るリュウにヤモリはため息交じりに尋ねた。
「ああ、こ・い・つがな!俺様達は死ぬ覚悟で剣王にドッキリを仕掛けないといけなくなっちまった!だから俺様はこいつのケツを叩いている!そう!だからケツを叩いているんだ!」
リュウは再びタニのお尻をパンパン叩き始めた。タニはめそめそ泣いている。
「……なんだかよくわかんないけど……急いでいるって事かな?」
「ああ!急いでいる!滅茶苦茶急いでいる!もう就寝する時間まで一時間しかねぇ!それなのにあの剣王を驚かせるものが何もない!だから俺様はこいつのケツを……」
「叩いて急がせているんだね。わかった。わかった。理解理解。じゃ、私そろそろ寝るから頑張ってね。それからうるさいからもっとボリューム下げてもらっていい?んじゃ、おやすみ。」
ヤモリはあくびをすると手を振って背を向けた。
「ま、待て!俺様達を見捨てるのか!なんかアイディアとかねぇのかよ!下手なドッキリだと無意識に寝ている剣王に敵だと思われて処理されちまうよ!」
リュウはめそめそ泣いているタニを放り投げるとヤモリに助けを求めた。
「そんなの私に言われても困るよ……。んー……自分達が安全でいたいなら爆弾を仕掛けるとかどう?まあ、色々やってみたらいいんじゃないの?夜は長いんだし。」
「そうか。爆弾とかそっち系で行くのもありか。ん……それは仕掛けるのが命がけだな。」
「とにかく、私は明日朝早く出勤だからもう寝るね。この時期は開園を三十分早めるんだって……。」
ヤモリは再び大きなあくびをすると伸びをしながら去って行った。
「……っち……地味子め!他人事だと思って……。タニ!おめぇもめそめそ泣く前になんか考えろ!下手したら剣王に処理されちまうぞ!運よくても色々とオーナーから処理されんかもしれねぇぞ!」
「ふあい……。」
鋭いリュウの声に返事をしたタニはめそめそ泣きながらお尻をさすっていた。
「お前!なんかアイディアねぇのか!俺様は何にも思い浮かばねぇよ!」
リュウは頭を乱暴にかくと叫んだ。
「ふええん……。お尻が痛いよぅ……あ!そうです!剣王にお尻ぺんぺんのドッキリを……」
タニが必死の顔でリュウを仰いだ。
「馬鹿か!てめぇは!剣王は武神だ!近づいただけでやられちまう!だいたいなんだそのドッキリは!おっさんにそんなことして変な事に目覚めたらどうする!ナメてんのか?あんまりナメた事言ってんと今度は柄杓でケツぶっ叩いてやるぜ!」
リュウは早口でまくしたてると柄杓をぶんぶん振り回した。
「ひぃい!ご、ごめんなさーい!ちゃんと考えます!」
「そうだ!命がかかっていると思え!」
「はい!じゃあ、私がタマリュウを使って剣王様を驚かせます!」
タニは責任を感じてタマリュウに頼る事にした。
「タマリュウ……それは意表を突くかもしれねぇ!お前は遠くから出せるのか?」
「お部屋の内部に少し入る距離です!わ、私一神で行きます!リュウ先輩にご迷惑はかけられません!」
タニは目に涙を浮かべ決死に頷いた。
「馬鹿、部屋の内部に入るんなら剣王の間合いの中だぞ!お前一神じゃあ寝ぼけた剣王に一発ノックアウトだ!……俺様も行く。とりあえず、一回試すぞ。ダメだったら全力で逃げる。」
リュウは怯えているタニの頭を乱暴に撫でると立ち上がった。
「は、はぃぃ!」
タニも震える声で返事をするとリュウにならい立ち上がった。




