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月のアイドル!月子さん!1

今回出てくる月子さんは本編でも盛大に暴れた神でもあります。

今作でも大暴れ!!

挿絵(By みてみん)

 神々が生活する高天原にあるテーマパーク竜宮で働き始めた谷龍地神たにりゅうちのかみ、タニはテンションの高いお客様に常に頭を抱えていた。


 時期は八月。竜宮は行楽シーズンを迎え、目が回るほどに忙しい。


 「えー……ま、迷子のお知らせです……!ね、ねえ、君、なんて名前なんだっけ?」

 タニは迷子センターでアナウンスをしていた。近くで大泣きな子供の神。この世界に誕生したばかりの神らしい。まだまだ修行も足りない。


 「ヴェヴェルディ・インディラカ・ポエマ・ルーベン・サジェスティン……デス。」

 泣いている子供神は涙声で自己紹介した。どうやら外国神のようだ。この竜宮には観光で外国神も来る。


 おそらくどこぞの国のお偉いさんの子供だろう。


 「まさかの外国神……泣いているから名前もよくわからないぃ!最後のデスは名前?それとも日本語の『です』?」


 神の名前を決めているのは人間だ。元々人間が想像して神が生まれる。この長い名前もどこかの国の人間がつけたのだろう。


 いまいち、親になる神の仕組みがわからない。どうやって子供神が登場して親神と親子になるのか……。


 ……やっぱり……男女の営みで?


 タニは忙しさのせいか余計な事を考え始めた。顔を真っ赤にし、慌てて頭を振る。


 「もうこうなったら感覚で名前を言う!べべんでー・いいでらか・えー……ぽえむ?なんだっけ……。」

 タニはこっそり子供神に名前を確認する。子供神はとっくに泣き止み、冷静に名前を言った。


 「ヴェヴェルディ・インディラカ・ポエマ・ルーベン・サジェスティン、デス。嫁とハグレテ、寂しくて泣いちゃいまシタ。」

 「……嫁!?」

 タニは固まった。


 神に年齢はない。人間が子供の姿を思い浮かべたならその神は子供の姿になる。


 「え?嫁?よめ?じゃ、じゃあ大人神?た、大変失礼いたしました!あ、あの……年齢は……?」

 「五百歳ちょっとデス。サキホドはトリミダシテすみません。昔、妻と百年近くハナサレタ記憶がアルノデ、サミシクテ……。自分で名前イイマス。」


 「あ……はい……。」

 タニは冷静に戻った子供神にぽかんと口を開けながらマイクから離れた。


 どこかの国の神話かなんかで彼は妻と百年近くはぐれてしまったようだ。


 しばらくして狼の耳がついている若い女が現れ子供神と共にこちらに手を振りながら去っていった。


 「……奥さんは見た目大人なんだ……。ケモ耳ついてたけど……。」

 しばらくタニは迷子センターで茫然としていた。


若干、放心状態になりかけていた時、誰かが自分の名前を呼んでいる事に気が付いた。

 「あ!いたいた!おーい!タニ!」


 タニは自分を呼ぶ声にビクッと肩を震わせた。この声は……この厄を呼び込む声は……。


 「りゅ……リュウ先輩……お、お疲れ様ですぅ……。」

 タニの前にちょっと怖い外見の青年がニコニコ笑いながら立っていた。彼はタニの先輩でリュウ先輩という。本名は流河龍神りゅうかりゅうのかみである。


黄緑色の短い髪に謎のシュノーケルをつけ、黒い着物を半分脱いでいる。入れ墨とかしていたら本当に怖いお兄さんだ。


 「なんだァ?せっかく俺様が来てやったのにそのテンション。」

 「ご、ごめんなさい……。」

 リュウに睨まれ、タニは小さく縮こまった。


 なんというかタニはここに来てからリュウに関わって色々とひどい目に遭っている。毎日何かしら事件を持ち込むのだ。


 「そんなに怯えんなよ。俺様、いつも優しいだろ?なあ?女の子には優しくするのはあたりめぇだからな?なあ?」

 リュウはタニの肩をガシっと抱くとニコリと笑った。


 タニはまた何かあるのかとしくしく泣き始めた。


 「うおっ……おいおい……なんで俺様に会ったとたんにマジ泣きすんだよ……。俺様地味に傷つくぜ……。俺様のこと、そんなに怖えか?優しくしてるつもりなんだがなあ……。」

 いや、リュウはいつも優しい。タニは首を横に振った。だがなぜか涙が止まらなかった。


 「おい、なんで泣いてんだよ……。お腹でも痛いのか?ちょっと休むか?」

 リュウの優しさにタニは涙を拭うと首を横に振った。


 「だ、大丈夫です!ありがとうございます。」

 「あ、じゃあ、ちょっと頼みてぇ事があるんだが……いいか?」

 「え……?」

 リュウは優しくほほ笑むとタニを連れて歩き出した。


 「ちょ、ちょっと待ってください!要件によります!ええ!要件に……。私、返事してないんですけど!」

 血の気が引いたタニはリュウに引っ張られながら、これが一番怖いのだと『これに怯えているんだ』と心の中で叫んだ。

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