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地味子の暴走4

 「よっ!こんなとこで何やってんだ?お前ら?」

 「……飛龍……お前、遅せぇんだよ……。」

 赤い髪のナイスバディの女、戦闘狂飛龍はケラケラと笑っていた。


 「何が?」 

 「『何が』じゃねぇよ!ほら!」

 リュウが壊れた建物を勢いよく指差した。


 「……ん?ケンカでも起こったか?」

 「じゃなくてピンクの髪の龍神……たぶん地味子だと思うが……そいつが暴れてったんだよ……。」

 リュウの言葉に飛龍はお気楽に笑いながら「ああ!」と閃いた声を上げた。


 「あいつは二重神格にじゅうじんかくだからな。気持ちが昂ったり、最上級に怯えたりするとあの神格が出るらしいぜ。あたしも何回かあれと戦った事あるわ!


 元々はあのピンクの方が元らしいけどな、人間の祈りで民家を守る龍神になってあの格好に落ち着いたらしい。だが、いまだに昔の神格をもっていてたまに形だけ出る事があるんだってよ。気分が昂った時にな。」


 飛龍の発言にリュウとタニは盛大にため息をついた。


 「……気持ちを盛り上げちゃいましたね……盛大に……。」

 「ああ……盛り上げちゃったな……。」


 「でもあの性格はすぐになくなるんだぜ?だからつまんねぇんだよなあ。」

 飛龍がタニとリュウの様子を窺いながら呆れた顔を向けた。


 「ん?すぐになくなるのか?」

 「ああ、もう戻ってんじゃないかな?」

 飛龍はケラケラと笑い、手を振りながら去っていった。


 タニとリュウはお互いの顔を見合わすと慌てて上空に目を向けた。


 「もう戻っているのならいきなり全然違うところにいてしくしく泣いているかもしれません!」

 「俺様もそんな気がするんだよな……。ちょっと探しに行くか……。」


 タニとリュウは慌てて竜宮から外に出て海から浜辺へと向かった。ちなみに竜宮は海の中にある。


 浜辺にあがったリュウとタニは砂浜付近の森でうずくまって泣いているヤモリを見つけた。ヤモリはもう元の姿に戻っており、リュウ達を見つけるともっと泣き始めた。


 「うっわ……。ガチ泣きじゃねぇか……。」


 「うええん……気が付いたら竜宮の外に出されていてまた竜宮に入ろうとしたらエラーが出て……私は竜宮にまで忘れ去られたのね……。天津様にも嫌われたんだ……。」


 大泣きのヤモリにリュウははにかみながらタニに目を向けた。


 タニもなんて言うべきか悩み同じくリュウに向かいはにかんだ。


 エラーが出たのはリュウがヤモリ除けの結界を張ったからである。もちろん、ヤモリは竜宮をぶっ壊した事をまったく覚えていない。


 「おい……このままだと気分がどん底になりまた、あの神格が出るんじゃねぇのか……。」

 「と、とにかく少し持ち上げましょう!」

 リュウとタニは焦りながらヤモリを盛り上げた。


 「ヤモリ先輩!アイドルやりましょう!リュウ先輩が曲作ってくれるそうです!」


 「おま……勝手な事言うんじゃねぇって……ごほん……わ、わかった、なんとかしてみるぜ……。だからとりあえず、もう一度竜宮に戻ろうぜ。」

 タニとリュウの言葉にヤモリは少し顔色を明るくした。


 「でも、私竜宮に入れない……よ……。」

 「ああ、さっきのはちょっとシステムエラーが出てたらしいんだ!今は大丈夫だ!」

 リュウは慌てて結界を解いた。


 「なんか今ホワンと結界が外れたような気がしたんだけど私除けの結界が張ってあったって事なの?」

 ヤモリの言葉にリュウは「うっ」と言葉を詰まらせた。


 「なんでそういう所を気づくのは早ええんだよ……。」

 「と、とにかく……竜宮に戻って一緒にアイドル用の衣装作りましょうよ!」

 タニは冷汗をかきながらヤモリの気分を再び上げる。


 「うん。そうだね。たにぐちさんとならうまくいくような気がするよ。」

 「……たにりゅうち……なんですけど……。」

 ヤモリの気分が元に戻ってきてタニも心が落ち着いてきた時、リュウが声を上げた。


 「あーっ!しまった!俺様ちょっと仕事が……。」


 リュウが仕事を思い出し叫んだ刹那、タニが涙目でリュウの着物を掴み、ブンブンと首を振っていた。

 目がひとりにしないでくれと言っている。


 「うあー……大丈夫だ!一応、飛龍に頼んでおくから……。」

 リュウがなだめるようにタニに言ったがタニはさらに首を振るとめそめそと泣き始めた。


 「あ、ああ……わかった!仕事片づけたらすぐに戻るからよ。」

 リュウがタニの耳元でそっとささやいた。それを見ながらヤモリは不思議そうに首を傾げていた。


 「たにぐちさん……どうしたの?本当はやりたくないとか?」

 ヤモリが心配そうにタニを見る。


 「え……?い、いや、すごくやりたいです!はい!それから私は『たにりゅうち』です!」


 「たにぐちさん、自己紹介の練習?それ大事だよね。私も皆に覚えてもらえるように頑張ろうっと。」


 ヤモリの意気込んだ顔を見てリュウは『もう一神の方の地味子を知らないやつはいないだろう……。』と思ったが口には出さなかった。


 「いえ……その……私は『たにぐち』ではなくて……『たにりゅうち』なんですけど……。」


 「……?だからたにぐちさんだよね?いちいち確認しなくてもちゃんと名前覚えているよ。心配性なんだね。あ、リュウはこのままツアーコンダクターの詰め所で仕事でしょ?じゃあ、私とたにぐちさんは先に竜宮に帰るね。」


 「ですから……たにりゅうち……なんですけど……。」


 リュウににこやかに手を振ったヤモリの横でタニはこの世の終わりのような顔でリュウに涙目で手を振っていた。


 ……すぐに戻るから泣くなよ……。

 ……死に装束作って待ってます……。

 リュウとタニはそれぞれアイコンタクトを送ると疲れた顔で別れた。



 まあ、そこからは特に何もなかったのだがタニはまたも出会った龍神にトラウマを植え付けられたようだった……。

 竜宮住み込み寮の壊れた部分はよくわからないが何らかの力できれいさっぱりと直っていた。

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