飛龍のゲーム大会3
「よし……これはゲームだ。いいか、一発食らってHPをゼロにして終わらせよう!……って、お前、なんでムンクの叫びのような顔をしてんだ。」
リュウがそう提案したがタニはぶんぶんと頭を振った。
「痛いのは嫌です。」
「このままじゃ痛いじゃなくて遺体になっちまうぞ!あー、何俺様、うまい事言ってんだ!じゃなくて、おら、一緒に行けば大丈夫だって!」
「なんですか!赤信号をみんなで渡れば怖くないみたいな感じ!」
リュウの言葉にタニはしくしく泣き始めた。
「ああああ!泣くな泣くな!わーったよ……俺様がなんとかするぜ……。」
リュウはため息をつくとがらりと雰囲気を変えた。リュウの体から荒々しい神力があふれ出る。
「りゅ……リュウ先輩?」
「俺様、あんま女をボコりたくねぇんだよな……。」
リュウは呆れた顔をしながら飛龍に向かい飛んでいった。
「リュウ先輩って本当はすごく強……」
タニがときめきそうになった刹那、リュウがさらにボロボロになって戻ってきた。
「……ダメだ……あいつ強い……。」
「……くなかったですね。」
「うるせぇ!本気になれねぇだけだぜ……。そういやあ、あいつに勝ったのは四神がかりで攻めたあの時だけだったぜ……。あんときは……シャウとカメと……時神のアヤちゃんがいたなあ……。俺様とタニじゃあ勝てねぇわ……。」
リュウはため息をついた。
よく見るとリュウの頭に浮いている緑のバーはもうほとんどない。タニは自分が危機的状態な事に気が付いた。
「りゅ……リュウ先輩のHPがなくなったら私が一神で飛龍さんと戦うんですか?」
「そうだぜ……。だから俺様はあの時、お前を全力で止めたかったんだよ……。あ、ちなみにお前、龍神だしなんか特殊能力があるだろ?なんだ?」
リュウに問われ、タニは顔を赤くしながら小さくつぶやいた。
「……リュウノヒゲとかタマリュウとか呼ばれている植物を出せます……。」
「……はあ?」
「ですからタマリュウを出せます!」
タニはやけくそで緑色のモコモコした植物を沢山出して見せた。
「……え?ちょっと待て。それだけ?」
「はい!」
開き直ったタニは頬を赤く染めながら胸を張った。
「おい……お前、龍神だよな?本当に龍神か?地味すぎるぜ……。どっかの民家を守る龍神を思い出したぜ……。ま、まあいいや。よし、その緑のよくわかんねぇ植物を飛龍に向かって投げろ!悪あがきだ!」
「はいぃ!」
リュウとタニは必死でタマリュウを飛龍に向かい投げ始めた。
「……ああ?何やってんだあいつら?馬鹿なのか?」
飛龍はため息をつくと手で小さな風を作ると横に凪いだ。
「ぎゃあ……!」
タニとリュウは遠くに飛ばされ、壁にぶつかった。
リュウとタニは目を回しながら倒れた。二神ともHPがゼロになっていた。
「だ……大丈夫か……タニ?」
リュウはタニがケガしないように抱きかかえて守ったがタニは精神的にダメージを受けHPがゼロになったらしい。
「わああああん!」
タニは目を回しながら大声で泣き始めた。それと正反対に飛龍は大声で笑っていた。
「あーはははは!ダメージ食らってないのにHPがゼロになる奴なんて初めてだぜ!え?なんで?何のダメージ?やべえ!傑作!ははは!」
「笑いごとじゃねぇ!こりゃあなんのデモプレイなんだよ!」
怖い顔でリュウは笑っている飛龍を睨んだ。
「んまあ、デモプレイっていうか、ほら、あれ見ろ。」
飛龍が闘技場の端っこを指差した。闘技場の端っこには大きなテレビモニターがついていて観客が沢山映っていた。
「ああ?」
リュウは観客の一喜一憂している会話に耳を向けた。
「やった!当たった!飛龍の勝ちだよ!」
「っち……ダメなツアーコンダクターめ……飛龍にいれときゃあよかった。」
なんだかよからぬ会話を観客がしている。観客といっても今日は竜宮がお休みなので皆従業員の龍神なのだが……。
「あいつら……。おい、飛龍、これはカケごとだよな?俺様達をダシに使ったのかよ!あー、腹立つぜ。」
リュウが頭をクシャクシャとかきながら唸った。
「そうだねぇ。賭け事だ!金じゃなくて商品券とかを景品にするデモをやってみたわけだ。挑戦者の客も楽しいし観客も楽しいだろ?そしてあたしのアトラクションは商売繁盛ってわけよ。」
飛龍がいたずらっ子のような笑みを向けた。リュウはため息をつくと何か反撃の言葉を探した。
「ああ、カケは基本的に無断でやるのはよくねぇだろ!今回だってちゃんとオーナーに言ったのか?ああ?」
リュウは意気込みながら飛龍に鋭く言い放った。
「ん?言ってないよ?」
「呑気な顔をしてんのも今の内だぜ。俺様がこの件をばっちりオーナーに報告しておくからな!お前は厳罰だ!覚悟しとけ!コラァ!」
リュウの脅しに飛龍はケラケラと笑った。
「え?オーナーのお仕置き?ああ、受けてみてぇなあ。ああ、やられた事ないけど鞭とかでビシバシ叩かれてぇ。うんうん。あの鋭い声でお仕置きだとか言われてみてぇ。」
飛龍は頬を赤くするとうっとりとした顔を向けた。
「……うっ……お前ひょっとするとドМ?その色っぽい顔やめろ!お前、オーナーに怒られて喜んでいたのかよ……。」
「ああ、さいっこう❤」
ドン引きのリュウに飛龍は再びケラケラと笑った。
「お前……ドМだったのかよ……。」
「りゅ、リュウ先輩……衝撃を受けすぎです……。」
リュウの茫然とした声にタニは思わず小さく突っ込んだ。
観客も飛龍もなんだかわからないがどんどん盛り上がっていき、最終的には騒動が大事になり飛龍はオーナーの部屋への呼び出しを食らっていた。




