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SciFi創作論  作者: 宮沢弘
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ほとんどの人はSciFiを知らない

 三話めになってしまいましたが、なろうのSFジャンルに書いている人も、ジャンルが違うにしてもプロの作家でさえも、「ほとんどの人はSciFiを知らない」ということを知っておいて欲しいと思います。


 あるプロ作家がtwitterで「SFのど真中は超能力もの」と言ったことがあります。好意的に解釈すると、「公募に寄せられる作品において」という条件がつくのかもしれません。ですが、その方はSciFi畑の方ではありません。そして、イサク・アジモフのようにあれもこれも書いているという方でもありません。ならば、そういう方がSciFiの応募作品の審査に加わったりするでしょうか。ないとは言いませんが、もしそうだとしたら間抜けな話です。そして、「公募において」という条件がつかないのであれば、その方のSF観を表わした言葉でしょう。プロ作家においても、情無いことにこのような認識なのです。


 SciFiが好まれないということをまずは確認したいと思います。2016年2月期の文庫の新刊情報で数えます[1]。これの2016年2月期のデータを用います)。

 すると文庫全体の刊行が676タイトルあります。そのうちで小説と思えるものが540タイトルです。これは、出版社、レーベル、タイトルを参考に「小説っぽくないもの」を除外した数字です。なので、誤差があるものとして見てください。それと文庫なのでおそらく小説に有利な数字になっていると思います。その上で、小説が80%あります。

 SciFiとしては、H社SFとTS社のS-SFを見ます。H社SFが4タイトルで、TS社のS-SFが2タイトルです。合計6タイトル。文庫で数えると刊行の全体のタイトル数が多い分、SciFiについてはおそらく不利になっているのではないかと思います。刊行タイトル全体に対しては、0.9%。小説のタイトルに対しては1.1%です。日本人作家も加えるとH社SFとH社JAで8タイトル。TS社は日本人作家があるんだかないんだか、変化なしの2タイトルです。計10タイトルになっても対してどうこうということはないですね。ほかの出版社やレーベルからSciFiが出てないこともないのですが、この数字が10倍になるようなことはないようです。

 試しに「ラノベ系統かなぁ」と思えるものも数えてみました。判断基準が曖昧になりますが、出版社、レーベル、タイトルを参考にすると、270タイトルほど。文庫全体の40%で、小説の50%といったところ。きちんと分類するともっと減るんじゃないかと思いますが、でも1/10になるとかはないようです。

 これは供給の話ですが、そこから翻って、SciFiにどれほど需要がないのかが見えるかと思います。対して、ラノベにどれほど需要があるかも見えるかと思います。


 さて、ここから先は、実際には書店での回転数なんかも考える必要があるわけですが、それは無視します。正直、SciFiは回転数悪いです。入ってきたのがずっと何年も残ってたりします。その分、「ちょっと前に出たの、ないかな」という時にも見付かったりするわけですが。

 あるいは印刷部数も実際には考える必要があります。

 加えて言うなら、図書館の存在も考える必要があります。

 ですが、それらは無視して、これらの割合が書店の棚を占める割合と相関しているとします。SciFiの1%と、ラノベの40%くらいとで、どちらが目に触れるでしょうか。1%なんて、意識して見ないと見えないでしょうね。大規模書店なら1%でもそれなりの棚を占めますが。

 ともかく、無いも同然のものを手に取る人は物好きだけです。ここからSciFiの悲劇が始まります。いや、これは結果でもあるのですが。

 この状況において、SciFiを手にする人と、SF(それが何かは知りませんが)を手にする人はどちらが多いでしょうか。当然SF(それが何かは知りませんが)を手にする人が多いわけです。そして、それがSF(それが何かは知りませんが)であり、またSciFiであると思うわけです。そして、SciFiを知らないまま、SciFiのつもりでSF(それが何なのかは知りませんが)を読んだり、書いたりします。

 そして、SciFiを知らない人とって好都合なことに、星新一の言葉があったり、藤子不二雄の「すこしふしぎ」という言葉があったりするわけです。それらの言葉を盾に、自分が書いたSF(それが何かは知りませんが)が、SF(それが何かは知りませんが)であり、SciFiであると言うわけです。

 ですが、星新一にしても藤子不二雄にしても、一周回った人です。もしかしたら五周くらい回ってるかもしれません。ともかく整数倍回っています。あなたは、その人たちとあなたを同列に置けるのですか?

 「SFってなんなんだろう? 番外編 ――SFを形容する言葉――」(http://ncode.syosetu.com/n2804db/) にも書いていますが、それらの言葉は正当化のために使うものではありません。むしろ戒めとして使う言葉です。「私にその言葉を使うことが許されるのか」と。


 このようなことから言えるのは、ともかくまずSciFiを読まなければ何も始まらないということです。


*1: http://www.bookservice.jp/layout/bs/common/html/schedule/bunko_top.html

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