SciFiが描いていないことがら 2
これもビジュアルの話です。SciFiが描くべき残されていることがらの二つめとして、記憶について書いてみようと思います。記憶だけでなく、サイバースペースかサイバー技術とも関連しているのですが。
記憶はただ思い出されたこととして書かれるかもしれません。サイバースペースかサイバー技術との関連で言えば、視野に映し出されるという描写があるかと思います。
ですが、それは順当な描写でしょうか。私にはそうは思えません。
「進化の渦の中で」(http://ncode.syosetu.com/n7129cn/)の「1.2年め ――100年後を目指して――」などには「額の前の窓」という表現を使いました。これは記憶に関してのものですが、私としての描き方としてはサイバー技術の関連としても、視野にそのようなものが現われるよりは、妥当なものだろうと考えています。
「注意」の表示のようなものなど視野に現われる必要があるものももちろんあります。ですが、たとえば現在電話をしている時、その相手の顔は視野に現われているでしょうか。むしろ「額の前の窓」と呼べそうな所だとか、電話を当てている耳の上に現われていたりはしないでしょうか。
あるいはいくつかのことを思い出している時、それらは目の前に現われているでしょうか。むしろ頭の中のどこかにあるとか、頭の中と周囲に散らばる塊のようには思えていないでしょうか。
ですが、これは私個人の感覚にすぎません。
記憶や情報がどのように提示されるのか、その様子をどのように描くのかもまた、まだ人間が知らない方法なのだと思います。