28話 休み(当日)
なんだか明日が休みだと思うと寝れなかった
まだ夜で暗かったが水を汲む回数が決まっているなら早めにやってしまおうと思ったのだ
ふ、別に終わらせてしまっても構わんのだろう
桶を持って外に出る
山小屋を出ると月明かりに照らされている人がいた
しかしその人の周りはぼやけて見える
綺麗だ
ボキャブラリーの足らない俺だからこんな薄っぺらい言葉しか出てこないがこの単語でしか表せないほどだった
まるで舞っているかのように滑らかに動き、時に力強く しかしその中にはしなやかさもある
きっと才能のある奴だったら、あの動きに見て感じるものがあるんだろうけど
生憎俺はそういうものに縁がない
ただただ眺めていた
どれくらい経ったのだろう
俺は声を掛けられるまで息をするのすら忘れて見入ってた
「どうした 寝れないのか?」
あの綺麗な型をしていたのは暴力女だった
型をしていた時の神秘さは無くなっているがなんだかすごく見える
「は、はい……なんだか興奮してしまいついでに水汲みで先にしようかと思いまして」
つい敬語になってしまったが別に普通だろう
むしろ今までタメ口だったのが非常識だったんだ
暴力女もとい師匠は一瞬おどろいた顔をしていたがまた元の位置に戻り型をしていた
結局俺は師匠が型をやめるまで食い入るようにその姿を見ていた
べ、別に師匠のことなんて何にも思ってなおんだからね!!




