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第2話 ドラゴンやばい。さすがドラゴンやばい。

 ――やっぱり夢なのだろうか。


 絶対に死んだと思った。

 「火球」の爆炎は、目の前の四足獣をズタズタに焼き散らかしている。

 しかし僕の体は、いつの間にか黄金(きん)色の鱗に覆われて、炎をまったく寄せ付けていない。無傷だ。

 まるで(ぬる)いお湯か、(あたた)かい風の中にいるような感触だ。


 黄竜。その鱗はあの時見た黄金色のドラゴンと同じ、黄金竜のものだった。

 ドラゴンは極めて高い魔法抵抗力を持つ。特に赤竜と黄竜は炎系の魔法に強い。


 さっき頭の中で聞こえた声を思い出す。

 『黄竜のスキル「書架」の効果』。そう。確かに「黄竜のスキル」と言った。


 どうやら僕は、死んだと思ったらドラゴンの美少女になっていたらしかった。


◆◆◆

 さっきのモンスターと、あの時の黄金のドラゴンの恐怖がフラッシュバックする。

 人を餌と思っている目。殺す意志さえない。

 生きていようが死んでいようが関係なく、ただ引き裂いて食うだけだ。

 そのモンスターが僕の足元で炭化して死んでいる。

 命とは、こんなにも軽いものだっただろうか。


 あせるな。僕が本当にドラゴンなら安全(・・)だ。

 ドラゴンは最強生物の一つなのだから。


 落ち着いて状況確認を続けよう。

 まず自分の体だ。

 服の素材は不明。さっきの「火球」でも焼けていない。

 黄金色の鱗は全身を覆っていた。

 さっきは気づかなかったが、左手の薬指に、簡素な黒い金属の指輪がしてある。


 結婚指輪か?


 そこから光るオレンジの線が肩口まで伸びている。もしかしたら頭まで届いているのかもしれない。

 しげしげと眺めて、ふと気づいた。

 ドアにもあったこの光る線。これは魔力だ。


 僕は魔力が見えるようになっている!

 思わずじっと見た瞬間、


――術式を「解析」しました。指輪の効果「変態補助」を使用しますか?――


 「書架」が教えてくれる。「変態補助」?


――現在使用できる効果は「他生物変化-竜化」と「属性変化」です――


 他生物変化…人間に変化すれば、鱗も消せるのだろうか?


――完全に人化すれば鱗は消えます。人化を実行しますか?――


 「はい」と答えてみる。

 鱗が消えた。跡形もなく。どうみても人間の肌だった。


 竜化も試してみる。再び全身が鱗に覆われ、みるみる身長が伸びる。


 とまれ! ストップ! それ以上はやばい!


 ……さっきよりもだいぶ竜寄りの処で止まったらしい。服がぱつんぱつんだ。

 替えも無いのに服が破れるのは危険である。本当にぎりぎりだった。

 ちなみに、さっきは気づかなかったが、背中には翼を出すための切れ目が入っていた。

 鏡を見ると、人の面影が残った怪物がそこにいる。

 特に顔がグロい。不気味の谷という奴だろうか。いっそ完全にドラゴンの顔ならカッコいいのだが。


 ……そう思った瞬間。顔が完全なドラゴンに変化した。


 もしかして、と思ったが、鱗を残して腕を細くすることも可能だった。

 鱗だけを出したり消したり、腕だけをドラゴンに変えることもできる。

 しばらく試してみたが、これはもしかして、かなり便利な能力ではないのか。


 もう片方の効果、「属性変化」も試してみよう。


――どの属性に変化しますか? 赤 青 黒 白――


 青を選んでみる。おっぱいが消えた。


 いや、ちょっとあった。

 さっきより全体的にスレンダーで、髪が青に近い銀髪になっている。

 身長も伸びたみたいだ。

 そして、魔力が見えなくなった。代わりに、周囲の状況が見える(・・・)


 金青竜ライオットの風の魔力による「遠見」の探敵範囲は北の山脈全域と麓の村にまで及ぶと聞いたことがあったけど、事実なのだろう。

 さすがに壁やドアの向こうまでは分からないが、それ以外は全て、この迷宮のようにだだっ広い通路の、モンスターの位置まで全てが見えた。


 20体以上いる。全部さっきの四足獣らしい。

 青竜の力は風と水。僕はモンスターに対して攻撃を試みた。


 どっがああああん!!!!!


 20数か所で同時に発生する落雷。

 モンスターは何が起こったかも理解できずに全滅した。

 なにこれこわい。


 もうモンスターの気配はない。思いがけず安全な迷宮になってしまったので、安心して他の属性も試してみようと思う。次は黒とか。

 

 ……返事がない。

 

 そういや「書架」は「黄竜のスキル」って言ってたっけ。

 しまった!戻り方聞いてから属性変化すれば良かった!


 後悔しても遅い。


 さっき黄から青に変わった感覚をなんとか思い出して再現に挑戦する。

 指輪に意識を集中しつつ、黄金色の魔力が湧き上がるのをイメージする。


 たぶん5分ほど悪戦苦闘したと思う。

 僕はなんとか「黄」に戻っていた。


◆◆◆

 感覚を覚えているうちに練習しておこう。


 「書架」の力を借りて、他の色になり、自力で黄に戻り、また「書架」の助力で他の色になり、を繰り返し、慣れたら黄を挟まずに直接変化する。

 併せて竜化と人化の練習もする。


 しばらく練習するとだいたいコツが掴めた。わりとスムーズだ。


 驚いたことに、属性によって容姿がけっこう変わるのだ。

 髪の色がその通りなのは言うまでもないだろうが、体型も変わる。

 おっぱいのサイズで言うなら、黄が一番大きい。次いで赤、白、青、黒。

 身長は青が高くて黒が低い、以外は大して変わらない。黒は薄いしちっちゃいし、子供みたいだった。


 黄と青には、容姿の変化以外にも特殊能力がある。


 黄は魔力が見え、そこに術式が編まれていれば解析することができる。

 さらに「魔力操作」というスキルで、術式を発動させたり書き換えたりできるようだ。

 さっき「解錠」したドアに再度「錠」の魔法をかけることもできた。


 青は周囲の物の配置や動きを事細かに認識することができる。

 

 この二つの能力を使って部屋の魔道具を調べてみたのだが、どうも娯楽用っぽかった。

 暇つぶし用のおもちゃ?とか、小説とかを読める(タブレット)とかだ。


 冷蔵庫の中も調べてみた。中に入っていたのは実験用の試薬っぽい。それに混じってお茶もあったが飲む気はしなかった。


 ともかく、この部屋で今できることは全部した、と思う。

設定変更。部分竜化も可能にしました。

よく考えたら部分変化できないと、他モンスターのスキルが使えない……。

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