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第1話 はじめてのぼうけん

これまでの粗筋

レナード王国に生息する5体の金属竜。それが集まって何かをしているらしい。

それを調査するための調査団に参加していた学生のカラ=レイア。

彼はドラゴンに襲われて気を失い、気が付くとドラゴンの美少女になっていた。

しかも5体のドラゴンの能力をすべて使える状態で。

彼は5体のドラゴンの花嫁となるべく、竜に変態させられてしまっていたのである。


カラはその運命に立ち向かう。

そして黄金竜マーリン、黒鉄竜ゾーハン、金青竜ライオット、白金竜セイクリッドの4体を倒すことに成功するが、金赤竜シャイアには逃げられてしまう。


そして、カラはS級冒険者ソフィア=クレメンテスと出会う。

シャイアを倒すために冒険者を目指すカラ。


彼の新たな挑戦が始まろうとしていた。

 僕が、強くなる?

それはどういう意味でだろうか。僕はドラゴンだ。既に普通の人とは比べ物にならないくらい、強いはずだった。


「カラくんが、シャイアの代わりに、東の平原を治めるドラゴンになるの。ちょっと出歩くのは不自由になるけど。」


 どくん。心臓が早鐘を打つ。


 僕がドラゴンとして、国境を支配する。戦力的にはなれるはずだ。シャイアを倒せば宝石竜になれる。赤の宝石竜「紅玉竜(ルビードラゴン)」の能力は金赤竜の比ではない。


 僕の表情を見て、ソフィアさんは返答を悟ったらしかった。


「うふふ。やっぱり男の子ね。わたしも表立っては無理だけど、出来る限りの協力はするわ。」


 翌日、僕はソフィアさんと城塞都市ガーランドの冒険者ギルドに行った。

 もちろん冒険者登録のためだ。名前は『クリスティア=マトー』とする。


 調査団の人たちの遺体と遺品はソフィアさんに渡して、彼女からギルドに報告してもらった。その際、(カラ=レイア)の遺品も加えてもらう事にした。

 カラ=レイアは死んだのだ。僕は冒険者クリスティア=マトーとして生き、上位ドラゴンとしてシャイアに挑むのである。


 

 さて、冒険者は、S級は別格として、A~Fの6ランクに分かれている。

新米冒険者の僕のランクはFだ。これから様々な依頼をこなしてランクを上げていくのである。


 最初の依頼は、

  指名依頼「北嶺の調査と水源確保」

  依頼者:ガーランド公アルフレッド=ガーランド

  指名者:クリスティア=マトー

  依頼内容:北嶺の金青竜ライオットの宮殿に赴き、ライオット消失後の竜の民とヒスパード帝国の動向、および水源を調査し、必要な措置を講じること


 おい。


 これ絶対僕がドラゴンって知ってる依頼だろおおおおお!!!!!


◆◆◆

 翌日、僕はガーランド公の屋敷に呼び出されていた。メイドさんとか初めて見ました。

 待つこと10分。ガーランド公は執事を叱り飛ばしながら現れた。


「おお!君がクリスティア殿かね!噂以上に麗しいお嬢さんだ!

 いやお待たせして申し訳ない。最重要の来客だと言っておいたのだが、

 執事が君の重要性を理解していなかったようでね。本当に申し訳ない!」


 元気なおじさんだった。

 三大公というだけの優雅さは備えているが、まるで戦士のような剛直さ、率直さも備えていた。

 もしかしたら冒険者の経験があるのかもしれない。


「構いません。僕はただのF(ランク)冒険者ですよ。依頼の件ですよね?」


「その通りだ!さっそく本題に入ろう。

 ガーランド大公国の穀倉地帯を支える大河の水源が北嶺にあるのは知っているね?」


「はい。おそらく竜の民の生活を守るために、ライオットが降らせている雨が水源だとも言われていますね。」


「すばらしい!その通りだ。

 だがライオットは死んでしまったという知らせもある。

 事実であれば水量が減るかもしれん。

 それに竜の民はライオットを神獣として崇めておる。

 殺されたとなれば黙ってはいまい。

 それと帝国だ!奴ら今までライオットを恐れて進軍してきたことがない。

 その辺りの調査をして色々上手いことやってほしいのだよ。

 必要ならばガーランド大公家の名を出しても構わん。

 必要なものは言ってもらえれば手配しよう。」


 ザックリした適当な依頼だが、言いたいことは分かる。そしてザックリした依頼である以上、形だけ何かして終わりというわけにはいかなかった。

 ライオットを失ったことで生じうる全ての問題を洗い出して対処しろと言っているのだ。


 ちなみに竜の民はドラゴンを信仰するだけのただの人間だ。別に竜の加護を得られるなどの特典は無い。

 ヒスパード帝国は周辺諸国の諸王を束ねる皇帝を頂点とする国で、元々はレナード王国も帝国に従っていた。一時期力を失い、多くの国が独立したのだが、再び勢力を盛り返して小国を併合していっているのだ。

 レナード王国と直接国境を接しているのは北嶺の山脈だけだ。

 東は魔王領、西は自由都市連合国を挟んでいるため、国交は西回りで自由都市連合国を経由している。

 北嶺を超えるルートは過酷すぎて輸送に向かないのだ。


「承知しました。それではこの足で出発いたします。」


「ほう、頼もしいな。良い報告を期待しているよ。クリスティア殿。」


 誰から何を聞いたのか想像はつくが、成功を疑ってもいない様子だった。確かに僕にしかできない依頼だ。

 そしておそらく、三大公の一人であるガーランド公とコネクションを作らせるために、わざわざ用意してくれた依頼なのだろう。


◆◆◆

 その後、ガーランド公の屋敷前でソフィアさんと会い、「転移門(ゲート)」の同期をしてもらった。

 これで僕と彼女はお互いの居場所へ転移門の魔法で行き来できるのだ。

 サイズを調整すれば、アイテムや音声だけをやり取りすることも可能だった。


 元々一人でこなすつもりではあったが、ドラゴンの能力とマーリンの助言があっても僕自身はただの中学生だ。

 ソフィアさんが付いていてくれるのはものすごく心強かった。


 その後、地下迷宮の傍まで転移し、そこからケイオルカを翼に変形させて飛行魔法を使う。ケイオルカを併用した方が、飛行魔法だけより遥かに速く、小回りが利くのだ。

 ケイオルカは使い魔(ファミリア)魔法(スペル)で契約したことで知能が進化し、簡単な命令は魔力を通さなくても聞いてくれるようになっていた。魔力を通せばさらに精密な命令ができる。心強い相棒である。


 ちなみに、ズィーエル村と竜の民は交流がある。いくらライオットが水源を確保してくれても、標高が高すぎて作れる作物に限界があるからだ。

 僕は作物の売買を名目に、「ついでに噂を確かめる」形で交渉してみるつもりだった。

 もちろん売買用の作物はアルフレッド様に用意してもらい、空間収納の魔法でしまってある。かさばらない香辛料だった。

 っと、そろそろ衛門が近づいてきたので地上に降りよう。それから荷物を出す。

 飛行魔法や空間収納の使い手はレアなので、他人に見られたくはなかった。


◆◆◆

 にしても豪奢な門構えである。こんな山の中に作るのにどれだけ手間がかかったのだろうか。

 ライオットの不在にもかかわらず、門司は不安をおくびにも出さなかった。


「身分証を見せて目的を言え。」


「冒険者のクリスティア=マトーと申します。目的は作物の売買と、ライオット様へお目通りをお願いすることです。」


 僕の顔を見た門司が一瞬ぼーっとなって、あわてて我に返る。

 人化したドラゴンはそれほど美しいのだ。動じなかったアルフレッド様は凄いと思う。


「売買は構わん。だがお目通りは許可できん。ライオット様のご機嫌を損ねてみろ。竜の民まで皆殺しだぞ。」


「ではせめて竜の民の方々からお話を伺えませんか?ライオット様やシャイア様が麓に現れたとの噂もあり、ズィーエルやガーランドの民が不安がっているのです。」


「それは、まあ、構わんが…、ただし立ち入り禁止区域には絶対に入るな。あと、帝国からも使者が来ているのだ。面倒は起こさんでくれよ?」


 それは良いことを聞いた。

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