Prologue
それはある夏の日のこと。
僕、村野悠里は明日の修学旅行と受験勉強を理由としたお休みの間で揺れていた。
もともと友達とつるむのは好きではない。逆に、苦痛でもある。周りが静かな真面目生徒ばかりなら良かったものの、この学校はただの公立中学。女子も男子も夜遊びをしたり不良の道に走ったりと、平穏なんて望めそうにない。
明日からの班だって、学校一不良の十五番やキャバクラに務める二十七番などがいて、もう何を使用にもやる気が出ない。それを学級委員としてまとめないといけないと言うからもう大変だ。
そんなことをして嫌な気分になるより、僕は家で絵本を読んでいたかった。
絵本は僕の救いだった。一度ページを開けば目に飛び込んでくる美しい絵。優しい文字列。中学二年生にもなってまだそんな趣味、というのはよく言われるけれど、最近は大人用の絵本も発売しているわけだし、悪いことではないと思う。
気だる気な空気に包まれながら、通学路を歩く。今日も買う絵本には目星をつけてある。だから後は行きつけの古本屋によって、お金を払うだけだ。
僕はなんとなく幸せな気分になって、明日は行こう、と思う。
それが、今後の人生を揺るがす、大きな出来事のきっかけになることも知らずに。
僕の人生は、平穏から大きくそれたところへと、繋がった。