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卒業  作者: 希恵和
8/28

7待ち合わせ時間より早く着くと無駄話が多くなる。

 

クラス会当日。集合時間より20分前に着いた私の目の前に菊池さんが現れた。

 その際、簡単な挨拶と現状報告のような進学先の説明。


「私は語り部としての機能はもってないの」

そして、その一言をもらった。うまくは説明できないとの付け加えも。


「現状として、紀式美鈴に起こった事件について教えることは出来るわ。でも紀式という人間自体を実は私もあまり知らないのよ。だから紀式の主観的な部分は何も言えない」

 事件のことだけを客観的に伝えるだけ。

 語り部が出来ないというのはそういうことらしい。会長の考えていることは菊池さんでさえもわからないってことか。


「でもね、私はあなたのことも分からないの」


 菊池さんは私を見て言う。

「実のところ、一番の謎はあなたなのよ。どうしてあなたにだけ情報を秘匿されていたのか。その理由を私は知らない。きっとその理由を知っているのは」

 

 そこまで言ったところで私が割り込む。

「生徒会役員ですか」

 安藤や千香のこともある。

 きっと主軸はあの人達になるのだろう。


「そうね。彼らも」

 思いがけない返事だった。『も』……ということは、他にもいる?

「他に誰がいるって言うんですか」

「ええ、ある部活の人間たちよ。さらにこれからあなたが会う人も追加してね。でも後で会う人は何も言ってくれないかもしれないけど」

 

 後で会う人って誰? 

 後、部活って。そう思ったとき、後輩1の見知ったような言葉が頭によぎる。


「部活って、まさか文藝部じゃ」

 私の部活。でも、そんなわけは。

「うん。あ、後もう一人いたわね。紀式のお姉さん」

 うんって……そんなあっさり。

 ということは仄香どころか後輩のゆずきちゃんも知っているってことだ。


 

 『私達からすれば救いだったんです』

 頭の中で反芻する。あれは一体どういう意味だって言うんだ。



 その時だった。

「あれ、意外な二人の組み合わせだ」

 背後から男の子の低い声が聞こえた。


「すっとぼけ幹事がよく来れたわね」

「ごめんって……。ちょっと部活のが長引いてさ。でも、クラス会は今日できたわけだし。許してくれよ」

 そいつは頭を下げる。

 反省していたとしても、さすがに簡単には許せない。

 クラス幹事の尾野くんは申し訳なさそうに駅の柱にもたれ掛りながら、そのまましゃがみ込んだ。


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