14憧れの人の彼氏がタチ悪いのはちょっとショック。
――デ、デートだ。
安藤と紀式会長がデートオオオオオ。
「見ちゃった」
二人でゲームセンターで仲良く遊んでいる。それも会話が……。
「高之、取れ」
「ふざけんな。なんで俺様がお前のためにぬいぐるみを取らなきゃならねーんだ」
UFOキャッチャーでいちゃついていた。そっか、二人はリア充なんだ。
でも、なんかショック。
紀式会長はもう少しおとなしいイケメンと付き合うと思っていたのにまさかの安藤とか……レベルが低いようにも思える。何でだろう。
近づいて話しかけようとした。
そんな時。『――会長にあったら、すぐ逃げろ』と言われていたのを思い出した。
あ、逃げないと。
――でも、駄目だ。
目が会長と合った。
次の瞬間には何故か、会長に押し倒されて、ナイフの先がこっちに向かって。避けた。
は? 『ナイフ』?
今、私ナイフの先が。こっちを向いていた。
なんで。
「紀式! てめえ中野を殺す気か」
安藤の怒声。
「殺意はあるんだが」
冷静な会長の言葉が怖い。
え、私。
殺されるわけ?
「だからって、人殺しは駄目だろ」
「だって、『さよなら』だろ。大丈夫。どうせ歩く死人なんだ。人殺しにはならないはずだ」
歩く死人って何?
私は中野あんなだ。
私は普通の女の子だ。
なのに、再び振り下ろされた鋭利な刃物から逃げれる気がしなかった。次の瞬間、これは私の体に突き立てられてしまうに違いない。
私は一体、何を間違ったんだろう。
高校に入る前? いや結構、善人なこともしたよ。町の清掃ボランティアとかたまに行くし、迷子を交番につれていったり、ああ、海でおぼれた女の子助けたりもしたしね。
そんなことをつらつらと考え出していたとき。
「――待ってください!」
聞き覚えのある声が響いた。
その声の主は私の待ち人でもある。
「仄香! ゆずきちゃんは」
後輩1だった。
「今、トイレ行ってますよ。というかなんで前会長と」
なぜか後輩1は安藤の方を見てから。
「安藤先輩がいるんですか……。とりあえず会長、ナイフしまってください。『さよなら』はそうじゃありません。
こう言うんです」
え、何がそうじゃないって?
そう思った私に近づいてきた後輩1はこう囁きかけた。
「もういな――――」
そこまで言って。
目が少し揺らいだ。
すると次には後輩1が意識を失って。
「えっ」
私は後輩1の手を持った。
よろめいた後輩1。よろけた彼女は目をつぶっていた。
でも、ぎりぎりで倒れずになんとか持ちこたえた。
後輩1はバランスの崩れた体制から、徐々に起き上がり。
目を再び開け、何かに気づいた。
「あれ、あ、ゆずきは?」
いきなりだった。
「というかあれ、ここどこですか」
うちの後輩は、さっきとは違い、なぜかそのような腑抜けたことを口にした。
「「「はあっ?」」」
三人でハモった。
どうやら、仄香の記憶が数十分巻き戻ったらしい。
そして何故か『さよなら』についての記憶だけはすっぽり抜け落ちていた。




