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地上掃討軍

「まず、アタシ達が所属しているのは分かる?」

「なんだっけ……『ちじょーそーとーぐん』だよね、確か」

「そう、『地上掃討軍』」

『地上掃討軍』。

その目的は『地上を闊歩するカルネイジを殲滅する』こと。その為に彼女達は剣を振るい、銃を握り、化け物に向かっているのだ。

「そもそも、なんでアタシ達は『空中庭園』にいるのかは分かるわよね?」

「地上に棲んでるカルネイジに殺されないため……でしょ」

「正解。カルネイジについては?」

「……あんまり知らない」

「これから倒すべき敵よ」

カルネイジ。

正式名称は『突然変異生物カルネイジ』であり、省略してカルネイジである。

カルネイジとは『大虐殺』という意味であり、数年前からの人類への行為から、そう名付けられた。

そもそもカルネイジというのは、地上の動植物達が正体不明の突然変異を遂げた姿である。彼らは補食の為の機能が異常に発達し、通常兵器では太刀打ち出来ない程の力を得た。

そして恐ろしい事に、彼らは未知の再生能力を持ち合わせている。腕や脚を吹き飛ばされても、10分程度で再生してしまうのだ。どういう原理でそういう機能を手に入れたのか、未だに分かっていない部分が多い。

「さっきのは猿が異常に変異したタイプね。連携して獲物を狩る能力を手に入れて、数で押し切るような戦闘タイプになった」

「他にも種類がいるの?」

「えぇ。そもそもただの動物が凶暴化して出来たモンだし。生態系は無数だと思うわよ」

「……勝てるの?」

「アンタがそれ言ってどうするの。……といっても、滅ぼすのは無理でしょうね。それこそ無数の個体がいるんだから。でも、アタシ達には『コレ』があるじゃない」

そう言って、イリーナはおもむろに先程のレーザーライフルを掴んで見せた。ヒツユも、目線を自身のバスターソードに向ける。

『武器』。

正式には『対カルネイジ用戦略武装兵器』……略して『武器』。

人類がカルネイジを撃退するために生み出された兵器である。近距離武器である剣や槍、遠距離武器である銃などで構成されたそれは全て、地上に棲むカルネイジを適切に、かつ簡単に殺せるように出来ている。

とは言っても、やはり振るう本人の身体能力は関わってくるのだが。

「アタシたちの武器だって、無数に種類があるわ。どれもカルネイジを殺すために造られたもの。ちゃんと有効活用すれば、カルネイジなんか余裕で倒せるんだから」

先程猿型カルネイジに囲まれてピンチだったイリーナが言うセリフではないと思うが、ヒツユはそこには触れなかった。

「もう一度『空中庭園』に戻るまで生きていればいいんだから。要は死ななきゃいいのよ」

「戻るって……戻れるの?」

「……はぁ、呆れた。アンタそれも分かってなかったの?」

霧島日露、イリーナ・マルティエヴナ・アレンスカヤ。

彼女らが地上に来た目的、『地上掃討軍』から命じられた目的は、地上を闊歩するカルネイジを、あらかた撃破すること。少なくとも、日本列島に存在する個体は。


それは、『日本国第二空中庭園』を建造するためである。


そもそもカルネイジから遠ざかるために、人間は空中に浮かぶ島、『空中庭園』を造って浮かばせたワケである。が、『空中庭園』は大きさにして北海道程度。人口が激減したとはいえ、日本中の人間が乗れば、いつかは人が溢れてしまうだろう。

そこで考え出されたのは、第二の空中庭園。それを造り上げる事が出来れば、人類が生き残れる可能性も高まる。

「『空中庭園』が何を動力源にしてどういう原理で浮いてんのかは知らないけど……とにかく、あの空飛ぶ島の資源ではとてももう一つの島なんて造ることは出来ないの」

「……だから地上のカルネイジを全部倒して、安全に『空中庭園』を造ろうってこと? それだったらおかしいよ。なんでカルネイジが居なくなったのに、わざわざもう一つの『空中庭園』を造るの?」

「海外から別のカルネイジ群が押し寄せてくるかもしれないからでしょ。いわば防空壕みたいなものよ。先に逃げ道を作っておいて、危なくなったら逃げるのよ」

「予備……ってこと?」

「そうね。まぁとりあえず、もう一つ『空中庭園』を造るのに安全な場所を確保しろってことよ」

しかし次の一言は、それまでの全ての説明を無に還すモノだった。

「……とまぁ、ここまでは『地上掃討軍』の名目。実際はもっと別の目的があるのよ」

「別の……目的?」

「人口増加の『対抗策』よ」

先程も述べたように、『空中庭園』もいつかは人が溢れる。一応食糧や飲み水やらは配給制度に変わっている。『空中庭園』自体で食糧や水を造り出すサイクルも出来上がっているため、飲食の問題は無いのだが、それも人口増加が進めば事は別だ。

なので、日本政府としては定期的に人間を減らしたいわけである。

そこで目を付けられたのが、まだ思想段階であった『日本第二空中庭園建造計画』だった。

「簡単に言えば、私達は捨て駒ってこと。『空中庭園』の人間が増えすぎて溢れるので、国民の何割かを地上に降ろして、死ぬのを待ってます、ってことなの」

「で、でもカルネイジから上手く隠れることが出来たら……助けてもらえるんだよね?」

「まぁ実際そうなんだけど……政府も上手く考えるのよ。三年以上生き残れば、アタシ達は『空中庭園』に上げてもらえる。だけどそれには、殺したカルネイジの一定ノルマがあってね」

つまり一匹も狩らずに、ただ隠れながら生活してただけでは『空中庭園』には上げてもらえない。最低何十匹を殺すとか、そういうノルマを達成しない限り、降ろされたものはそのままということだ。


そして大半の人間は、カルネイジに対抗する事が出来ず――――――死ぬ。


中には生き残る人間もいるが、それはごく少数である。

「アタシ達は殺されるために降りているってわけ。だってそうでしょ? 本気で地上を奪還したいのなら、戦車でもなんでも降ろせばいいじゃない。アタシ達みたいな若者を使わなくたってさ」

「資源が足りないからじゃないの?」

「それにしても、もうちょっとアタシ達の武装を整えてくれるはずよ。日本が『空中庭園』を造る前なんか、パワードスーツなんてものもあったらしいし。でもそんなことをしていたら資源や資金がいくらあっても足りない。だったら人を減らした方がよっぽど効率がいいって事なのよ」

それに、とイリーナは付け加える。

「地上掃討軍って大部分が成人未満の少年少女で出来ているじゃない? なんでか分かる?」

「あ、知ってる……確か『ぶき』でパワーアップ出来るのは子供だけだからじゃなかったっけ?」

ヒツユは思い出すように人差し指を顎に当てる。イリーナは軽く笑いながら、

「結構要約したわね……ま、そんなモンよ。難しく言えば、『武器』に使用されている『ブースト材』の恩恵が大きいのは、成人未満の子供だけっていうことなんだけど」

剣や槍の柄部分には、『ブースト材』と呼ばれる素材が使用されている。2080年頃に開発されたもので、触れたものの身体能力を引き上げる効果がある。先程ヒツユが何メートルも跳躍していたのはその為である。

しかし、その素材もまだまだ解明されていない部分が多く、何故か成人がそれに触れても、あまり効果がないのだという。少年少女など、成人になっていない子供であれば跳躍力や脚力などが何倍にも伸びるのである。

「そのシステムも有利に働いているのよ。若い人間から居なくなれば、子供を産む人間も自ずと減る。よって少子化が進んでいくのよ」

「そしたら……人間も滅びちゃうんじゃないの?」

「減っちゃったら増やしゃいいのよ。人を減らすために地上へ送る政府だもの、それなりの対策はするでしょうよ。なんか女性の人権が侵害されそうだけど」

「ん? どゆこと?」

「知らなくていいの」

本能的にヒツユが汚れるのを防ごうとしたイリーナは、その一言でヒツユの追撃を阻止した。

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