共闘
「ッ!!」
ヒツユ達は地下通路に出る。すると、そこには驚愕の光景が広がっていた。
「……あらら……」
見渡す限りが黒で塗りつぶされている。ヒツユもレオも夜目が利くため、暗くて見えない、とかいう生易しいものであるハズがなかった。
それは、黒い羽毛だった。
「なにこれ……ヒヨコ……!?」
思わず、レオが弱々しい声を上げる。
まるで壁代わりになっているかのように、目の前には大量の巨大なヒヨコが存在していた。
「ひ、ヒヨコ型カルネイジって……しかもデカイし……」
ヒツユは身構えながら、目の前の怪物達を睨み付ける。
大きさは2m程だろうか。刃物を連想させるような鋭いクチバシ、触るとフカフカして気持ち良さそうな黒い羽毛。カラスが異常に進化したものなのだろうか。
羽根は畳んでいるため、まるで脚しか無いように見える。その脚も、鋭く進化している。
「でも、やらなきゃ……!!」
ヒツユは自らの脚力を最大限に活用し、弾丸のような速度でヒヨコ型達へと向かっていく。バスターソードを振り上げ、その頭部を一刀両断する。
黒いヒヨコ型は断末魔を上げ、その場に崩れ落ちた。
「まずは一匹……!」
「ぼ、僕だって……!!」
最初の一匹をヒツユが倒した事によって発破を掛けられたのか、レオもその鎌を大きく、横に振り抜く。ヒヨコ型達の脚を切り飛ばし、身動きを取れなくさせる。
「やった……! ヒツユちゃん、このカルネイジ達は脚を斬ったら動けなくなるよ!!」
「駄目だよ、それで安心しちゃ!! 脚を斬っても、すぐ倒さないとまた復活するんだから!! それより頭を狙って!!」
カルネイジの再生能力は基本的に脳が司っているため、脳を破壊する、または首を切断するなどすれば、カルネイジは間違いなく絶命するのだ。
それを聞いたレオは、
「わ、分かった!」
大きく飛び上がり、大鎌を縦に振り回す。ヒヨコ型は脳に鎌が突き刺さったことにより、再生を一切出来ずに死んでいく。それを踏み台にし、レオは更に別のカルネイジを狩ろうとする。
が。
「わっ!?」
バチィッ!! と。
突如、踏み込んだ脚に電気のようなものが走り、レオはバランスを崩す。
「ッ!? レオ君!!」
音で危機を察したのか、ヒツユは勢いよくバックで宙返りをする。その身体が宙に舞い、危うく倒れ込みそうになったレオを掴みながら、再び地上へと降りる。
「ご、ごめん……」
「大丈夫? いきなりどうしたの?」
「あのヒヨコ……身体から、少しだけ電気みたいなものが出てる……」
その言葉に、ヒツユは首を傾げる。しかし、パチパチという音を聞いたとき、彼女の頭にある予感が浮かぶ。
「もしかして……摩擦での静電気……?」
「静電気……って」
「もしかしたら、あのヒヨコ型達には静電気を大きくする力でもあるのかもしれない。電撃として活用できるレベルではないけど、直接触れるとそれなりに支障が出るかもね……」
確かに、ヒヨコ型カルネイジがお互いに擦れ合うとき、微かにバチバチという感じの音が聞こえてくる。羽毛はベッドなどに使用される素材にもなったりするため、静電気が起きやすいのかもしれない。
それか――――――
(雛鳥から成長した後に、電気を操る為だったりして……!?)
とにかく、今の目的はこのヒヨコ型達の殲滅。余計な思考を振り払い、ヒツユはカルネイジへと向かっていく。そして、試すようにカルネイジの頬を殴り付ける。
すると、
「ぁがッ!?」
突如とんでもない摩擦音が鳴り響き、殴り付けた部分に赤い電撃が走った。それは爆発と認めても差し支えない程の威力で、その瞬間、ヒツユの左手首が吹き飛んだ。
「ひ、ヒツユちゃん!!」
慌ててレオが走り寄ってくる。が、ヒツユは彼に言い放つ。
「大丈夫!! 今は目の前の敵に集中して!!」
「で、でも……!!」
「いいから!! 私の手はどうせ復活するんだから!!」
そう言いながらも、ヒツユの中には疑問があった。
(……さっきのレオ君のとは威力がまるで違う……!? 靴を履いている足だったから、直接触れるより安全だったのかな……!?)
「ぐっ……!!」
激痛と共に、左手首より先が再生する。苦痛に顔をしかめるが、彼女はすぐに立ち上がる。バスターソードを握り直し、再びヒヨコ型達の前へと飛び出す。
「おああああああああああああああああああああああああッッ!!!」
――――――縦回転。
まるでコマを縦にしたかのように、手足を丸め、音速と見違う程の速度で回転する。半人半カルネイジのヒツユだからこそ出来る踏み出しは、地面を踏み割る程の威力だった。
それは縦に並ぶヒヨコを連続で真っ二つにし、切り裂いた後には死骸しか残してはいなかった。
着地後にも休みを入れず、大きくその大剣を振り回す。
大振りで、しかし確実にカルネイジを首を切り飛ばしていく。
それと同じタイミングで。
背後に現れたカルネイジが、その鋭いクチバシで貫こうとしてくる。
「あっ――――――」
回避をするに、気付くのがあまりに遅かった。
が、
「やらせるかぁぁああああああああッ!!」
そのカルネイジとは反対方向。先程ヒツユが切り裂いた後の死骸の山を踏みつけ、レオが飛び出してきた。鎌を横に構え、彼は叫ぶ。
「しゃがんで!!」
「っ!!」
ヒツユは咄嗟に頭の高さを下げた。それを見計らったかのように、レオはその巨大な、紫色の鎌を横に振り回す。ヒヨコ型はそれをもろに首へと受け、次の瞬間には首から上を喪失していた。
しかし、首がなくなってもその胴体は倒れ込んでくる。ヒツユは身体を丸めたまま、横に転がる。そしてそれだけで終わらせず、起き上がった勢いを利用し、バスターソードを縦に振り上げる。それは、ヒヨコ型を2つに切り裂いた。
「大丈夫!? 怪我してない!?」
「だ、大丈夫。ありがとね」
「よかった……」
レオは心底ホッとしたような表情を浮かべる。それを見たヒツユは、可笑しそうに『ふふっ』と笑う。
「心配性だねぇ、レオ君は」
「だって……」
「よぅし、続き続き!! こいつら全部倒して、アミ達に褒めてもらおー!」
「……お、おー」
「声小さーい!」
「おー!」
「オーケーオーケー。よっし、行こっ」
「……うん!」
お互いに背を合わせながら、二人は笑い合う。
彼らは武器を構え直すと、深く息を吸い込んだ。
そして。
再び、戦い始める。大切な人達のために。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ねぇ、アミ達にも出来ることないかな?」
「無いだろうな……俺達が出ていっても足手まといになるだけだ」
「……はぁぁ……」
二人がいなくなった部屋で、アミとレンは彼らの無事を祈っていた。
しかし、アミは急に溜め息をつく。
「いいのかな……このままで」
「ん?」
「アミ……レオとヒツユちゃんに助けてもらってばかりで……年上なのにさ……」
「………………」
「何かの戦力になれるわけでもないし……レンみたいに家事が出来るわけでもないし……もう、ただの足手まといだよね……」
不意に、すすり泣くような声になる。
「何かしたい……でも、どうすれば……!」
「そんな事だったら、俺もそうだよな」
「え?」
レンは少し遠い目をしながら、話し出す。
「家事『しか』出来ない。お前みたいに二人を元気付けることも出来ない」
「そんな……レオだってヒツユちゃんだって……レンのこと……」
「何言ってるんだ。あいつらを元気付けてる大部分はお前だよ。お前は気さくな奴だからな。人の気持ちを読むのも上手い。どうすれば元気付けられるのか、本能で分かってる」
「……でも、そんな……私だって分からない人くらい……!」
「居るのか? そんな奴」
「ぅ……」
アミは色々な所に目をやる。というか、目の前のレンに視線を合わせられない。
「……ぇ、ん……けど……(レン、なんだけど……)」
「ん? 何か言ったか?」
「なな、何でもないよっ」
顔を真っ赤にしてそっぽを向くアミ。レンは、ただひたすら首を傾げるだけだった。
「……鈍感やろーめ」
「おいなんだそれ酷いな」
「うっせー鈍感やろー」
「……?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「何か幸せオーラを感じる」
「ヒツユちゃん僕もだよ」
「こんなに頑張っているというのに」
「ねー」




