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四人の平穏

「いやー、お二人とも昨夜はどうでした? お楽しみでしたか? ん?」

「え? 何もしてないよ?」

「ちょっと!! お姉ちゃん!!」

「アミ、その辺でやめとけ……」

次の朝。

何事もなく起床したヒツユ、レオ、アミ、レンの四人は、テーブルを囲んで朝食を口に運んでいた。

が。

「いや、だって朝起きたらヒツユちゃんがレオに抱き着いて寝てたんだもーん。これはもう脈アリとしか思えませんわー」

「脈無かったら死んでるじゃん」

冷静なツッコミを入れるヒツユ。

「違うよお姉ちゃん……僕はヒツユちゃんの話を聞いてあげてただけで……」

「話を聞いてあげてあれか~。あれ、レオも中々あざとい? ふ~ん♪」

「ち、違うってば~!!」

「アミ、やめろと言っているだろ」

「は~い♪」

「レンさん、お姉ちゃん全然聞いてないです!! 後で絶対イジってきますって~!!」

「え~、イジんないよ~?」

「にやけてるし!! 絶対嘘!!」

「~♪」

会話に満足したのか、アミは鼻歌を歌いながら食事に戻る。トーストを頬張りながら、一人『中学生で夜の営みとは……フフフ』とか呟いているのを、レオは背筋に悪寒を感じながら眺めていた。

レンはマグカップに入ったスープを一気に飲み干す。それからヒツユを向いて、こう言う。

「ヒツユ、レオの事好きなのか?」

「ブハッ!?」

その一言にコーンスープを吹き出したのはヒツユではなく、レオ。

「なーんだ、レンもやっぱ気になるんじゃーん」

「そりゃ気になるだろ」

「だ、だからってそんな直接的な……」

吹き出したコーンスープをタオルで拭きながら、レオが呟く。

一方、ヒツユはそんな質問に表情一つ変えず、

「うん、大好きっ」

「ブボヴァッッ!!!??」

今度は鼻血が大量噴出された。昨日程ではないが、それでもかなりの量である。辛うじて意識を保っていたレオは、それを真っ赤な顔でセカセカと拭き始める。

「告白キタコレ」

「変な言葉を使うな、アミ」

「いや、ヒツユちゃん側から認めてるからさ。ちょい驚き」

「だってレオ君、私に凄い優しくしてくれるんだもん!! 私がイリーナ達の事心配してたら、話を聞いてくれたし……」

「そうなのか、レオ?」

「い、いや……それは……うん……」

「しかもね、『君は死なないでよッ!!』って言ってくれて、『僕でよかったら全部聞くから』って言ってくれて……!!」

「マジで? レオ、(おとこ)だねぇ~♪ っていうかさ、これって相思相愛ってやつじゃないの?」

「そーしそーあい?」

ヒツユが首を傾げながら質問する。それに対して、アミは嬉々として答える。

「そ。レオもヒツユも、どっちもお互いが大好きってこと。いいじゃーん、そういう関係」

「そーしそーあい……うん!! いいね、それ!!」

「ちょ、ヒツユちゃん!?」

「レオ君、私達そーしそーあいだよ!!」

あまり意味を理解していないのか、まだアミの意図している部分が伝わっていないのか、ヒツユは簡単にそんなことを言う。

「いやいやいや、ちょっと待って。そういう事では……」

「……レオ君、私の事嫌い? 昨日あんなこと言ってくれたのに……」

軽い上目遣いでレオを見つめるヒツユ。ヒツユ自身にはアミの思うようなやましい気持ちは一切無いのだが、アミは傍らで嬉しそうに『あざといっ!! ヒツユちゃんっ!! あざといよっ!!』とか言っている。

「き、嫌いじゃないよ!! それだけは違うよ!!」

「じゃ、好きだよねっ」

「それは……その、早すぎると思う」

「え……嫌いなの……?」

「嫌いじゃないって!!」

「じゃあそーしそーあいだぁ!!」

「ちょ、ちょっと~」

そんな二人を少し遠くで眺めながら、レンは溜め息をつく。

「……はぁ、青春してんなぁ」

「レンだって高校生じゃん。まだまだ青春時代でしょ?」

「んなこと言ったってこのご時世だからな……恋愛の一つも出来やしない」

「中学の時モテモテだったもんねーレン」

「そういうこと言うなって」

「レンはいつだってそうだもんね。小学生の時もバレンタインめっちゃ貰ってたし」

「アミだって貰ってただろう」

「貰ってたけど……って、そう!! おかしいと思わない!? バレンタインに女子が男子に貰うっておかしくない!? ホワイトデーにしろよって話じゃん!!」

「……あのな? ホワイトデーってのはバレンタインのお返しであって、バレンタインに誰にもチョコをあげようとしないお前が言うことではない」

「お返しとか関係ないって!! そんな事言うならクリスマスだってキリストの誕生日を祝う日だからね!? なのに世の中の家族は子供にプレゼントをあげてるし、カップルは性なる夜をご満悦なさってる。これはおかしい!!」

「話が脱線してるぞ。いいか、そもそも日本なんてあんまり宗教が浸透してないし、信仰心も薄いんだ。そこのところをどうこう言っても仕方ないだろう」

「いいよそんなのは。ていうかさ、レンにはチョコあげてたじゃん!! あれはどゆこと!?」

「だからちゃんとホワイトデーにチョコやったろ」

「アミ手作りチョコだったのに貴様はコンビニの100円チョコだっただろ!! ふざけるな!!」

「俺そういう料理とか苦手なの知ってるだろう」

「嘘つくなめっちゃ得意だろていうかここにいる間ご飯作ってるのレンだろ!!」

「お前が言葉では言い表せない程の料理下手だからだ」

「ふぎゃー」

というような、こちらも中々青春な会話を繰り広げていた。

ヒツユとレオはそれをまじまじと見つめながら、

「……あれが本当のそーしそーあいっていうのかー」

「そう。……っていうか、あの二人は幼稚園からの幼なじみだからね」

「幼なじみか……よし、私もバレンタインにチョコ作る!!」

「ふぇっ!?」

「んでもってレオ君にあげる!!」

「ちょ、ちょっと待ってよ……そもそもチョコなんてどこにも……」

「ていうかバレンタインって何?」

「そこから!?」



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「……あら?」

その頃。

彼女は、視界の隅に何かを発見した。

それは、一本の通路。ただし、壁も天井も全てが血塗られている。

「っ……ど、どういう事でしょう……?」

現在旧地下街にいる彼女は、その赤く染められた通路の中を進んでいく。無数のカルネイジの死体がある。それを恐る恐る避けながら、彼女は奥へと進む。

そこには。

「……ぁ……」



首が切断された女性。赤いマフラーを着けた、しかしタンクトップに黒いショートパンツというどうみても薄着な格好の死体が、そこには転がっていた。



しかし。

それを発見した彼女は、逆にホッとしたような表情を浮かべる。

「……あぁ、よかった。まだ『直せる』。壊れた部位を付け替えることが出来れば……」

そう言って、彼女はその死体を担ぐ。首もちゃんと拾い、彼女はまたどこかへと消えていった。

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