表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/111

託す

「くそっ、また来たわよヒツユ!」

「大丈夫、任せ―――」

瞬間、ヒツユはイリーナから受け取ったバスターソードを大きく構える。そしてその光の刃は―――何百メートルもの長さへと伸びていく。

「―――てッ‼︎‼︎」

この光の刃は、神化したヒツユでこそ力を発揮するように五十嵐が開発したもの。イチカで採った(カタストロフィ)のエネルギーデータを分析し、限界まで増幅出来るようにした。ただ、それにはヒツユのエネルギーが必要だが、その消費は微々たるものに過ぎない。

低コストで高範囲高威力の刃が作り出せる、それがこの新生バスターソード。

そしてそれをまるで今までずっと使い続けていたかのような動きで振るう。

「フルパワーだよッ‼︎‼︎」

数百メートルの、まるで光の道にすら見えるそれを軽々と振るい、そして全てのピットを叩き潰していく。イリーナもその剣筋を読み、かわしながら潰しもらしたピットを撃ち抜いていく。

それはまるで二つの閃光が舞っているよう。巨大な光の刃と、青黒い一瞬の光線。そして身体が淡く発光するヒツユと黒い装甲を身に纏ったイリーナは、まるで光と闇の乱舞。

「進むわよ、ヒツユ!」

「うん!」

一通りピットを破壊し尽くした二人は、再び進行する。その光の刃で真っ二つにはしようとせず、とにかくブロッサムの中央の正体が知りたかったヒツユ。その光の刃を元のバスターソードに見合う大きさに戻すと、空を飛んで進んでいく。

相変わらず花びらや葉の上にある砲台は集中砲火を浴びせてくるが、ピットが無くなったそれらは全く意味を成さなかった。危ないものはイリーナが撃ち落とし、ヒツユは集中して前に進む。それでなんとかなっていた。

―――が。

「ッ⁉︎」

イリーナの頬を掠めるように、青黒い光線が突き抜けていく。それは、元々彼女の専売特許のハズなのに。

「何よッ……⁉︎」

そこに現れたのは―――彼女と同じ黒い装甲に身を包んだ、ロボットの集団。

そう、五十嵐がイリーナを連れ去った時にレオとアミの前に立ち塞がった黒装備のロボット。それの強化版である。

イリーナの装甲製作時に同時開発していたもので、武装はほぼイリーナと変わらない。ただしレーザーライフルは各ロボットに一丁だけで、ピットもイリーナに比べて数は少ない。イリーナは元が人間の脳であるだけに戦闘を自身で行い、ピットの挙動は僅かに自身で誘導するだけで操れた。その為数が多くても大丈夫なのだが、このロボット達は自らで全てを管理している為に、一体でコントロール出来る数が少ないのだ。

(アタシの紛い物じゃない……! こんなのなら、少しくらい多くたって相手出来―――⁉︎)

ただ、それが数十体も出てきてはどうしようもない。

しかもそれら全ては、イリーナに目掛けて青黒い光線を発射してくる。

「ぐっ……! これ、や、ばい……ッ⁉︎」

間際で回避を続け、何とか命を維持し続けるイリーナ。シールドピットがあるからこそ今は無傷だが、その内一発くらいは貫かれてしまうかもしれない。

この状況では、その一発が命取りなのである。

「イリーナ!」

ヒツユが慌てて戻ってくる。少し銃弾が掠めるが、それらをかわしながらヒツユもロボットを撃破していく。

黒い青色の弾丸。それを身体を捻るようにしてかわし、その捻りのまま、彼女は弾くようにしてバスターソードを振るう。長さを自由に調節しながら、毎秒ごとといっても過言ではない程、素早く。

「らああああああああああああッッッ‼︎‼︎」

首、脚、胴。

ロボットをどんどん切断していく。(カタストロフィ)としてのエネルギーの前では、切断出来ないものなど存在しないのだった。それを横目に見ながら、イリーナも自分の戦いをする。

(簡単よ、イリーナ。かわして撃つ、それだけ)

ピットを思考の彼方で操りながら、彼女は蝶のように空を駆ける。青黒い射撃をかわし、射撃の為に止まった相手ロボットを、移動しながら撃ち貫く。それは、彼女にとっては容易な事。

何が難しいと言えば、その作業が何重にも折り重なっている事だろう。何十もの銃口が、彼女の黒い軌跡を追って光の槍を放ってくるのだから。イリーナのブースターは忙しなく動き、常に噴出する先を変えている。

「どんどん増えてくるじゃない! こんなのとやりあってたら、らちがあかないわ!」

「で、でも……どうした……らッ‼︎」

会話と同時にまた一体、ロボットを破壊するヒツユ。圧倒的な挙動で消耗し、移動が鈍くなっている。

(……仕方ない。大切なのはこの子が中央部まで行く事。やっぱりここは……!)

イリーナはシールドピットを展開し、周囲につけると、ヒツユに向かって叫ぶ。

「行きなさい、ヒツユ! ここはアタシが引き受ける!」

「イリーナ……! ダメだよ、数が多過ぎるよ!」

ヒツユは顔を歪ませ、イリーナを見やる。

「大丈夫よ、ヒツユ。こんぐらい、なんともないって。アタシを心配するんだったら、さっさと中央部へ行ってこんな馬鹿みたいな戦闘を終わらせてきて!」

「……イリーナ……!」

イリーナが、柄にもなくウインクする。

それにうなづいたヒツユは―――



「分かった。すぐに終わらせてくる!」



その場から、消えるかのような速度で消えていった。

それを追うようにして、幾千もの青黒い光線が追う―――が、直後に、その発射点で爆発が巻き起こる。

「―――アンタらの相手はアタシよ、この量産品共」

イリーナはシールドピットを上下左右に展開、更にレーザーピットを全方位に向けて構える。その中心でロングライフル二丁を、翼のように構えると―――そのまま、劈くような大声で叫ぶ。

「『全方位掃射(オールディレクション・スウィープ)』‼︎‼︎」

瞬間、まるで全てのピットからレーザーが発射され、そのロングライフルからも青黒い射撃が現れる。だがそれが今までと違う部分は―――ロングライフルの光線が、出続けている、という点だ。

それはまるでしなる鞭のように、ロボット達を破壊する(ライン)を描くように、発射され続ける。

レーザーピット、及びシールドピットは、その鞭のような光線をかわすように動きながら、射撃を止めない。どんどんロボット達を撃破していく。

だが―――どれだけ破壊しても、また現れるのだ。やがてイリーナはその全方位掃射を止めざるを得なくなり、一旦綺麗になった戦場から、また黒い蟲のように現れるロボットを、一体ずつ撃破していく作業へと戻る。

(手っ取り早くしなさいよね……ヒツユ……!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ