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帝国の終章は異世界で  作者: リュウジン
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第七話 大胆殊勝な犯罪者

また投稿が遅くなりました、ですが地球防衛軍4が面白かったせいなんです私のせいではないんです。・・・すいません次こそはできるだけ早く投稿します。



第七話 大胆殊勝な犯罪者


林の中は動植物の専門家ではない有沢達の見た限りで日本のそれより若干色彩豊かな以外特に変わった様子はなく、まるで日本の林の中を歩いているような気分になるがただ日本の夏に欠かせないあの喧しいセミの鳴き声が聞こえず、いつもはうるさいとしか感じない音も全く静音になってしまうと底知れぬ不気味さを有沢達に与えてていた。


とはいえ行軍を開始してからすでに1時間経ったが何事も起きず順調に航空偵察で発見された小道へと近づいていた。


有沢は木と木の間にある長い草の茂みを左手でよけて後ろを歩いている杉原を通すついでに部隊の後ろを担当している2班がきちんと間隔を開けてついて来てる事を確認して、日本の夏と変わらない茹だる様な湿気と暑さに顔が大量生産した汗を拭いながら自分も後に続いて通る。


この暑さ中を歩兵は数十キロの装備を黙って運ばなければならないので熱中症にかからない様、何度か小休止を挟んで水を適量飲ませていたおかげで、先の大戦の南方戦線帰還兵が水を飲めるなら余裕ですと軽口を飛ばせるだけの元気は残されていた。


後藤の計算ではそろそろ小道に入るので、その前に一旦小休止すべきかどうか有沢が迷っていると前を歩いていた1班が立ち止まる。


有沢達と2班も立ち止まると1班から一人伝令が走ってきたので有沢は杉原に水筒を渡して休んでくださいと伝えると言葉を返す元気も無かった杉原は黙って頷いて水筒を受け取り木の根元に座ると、入れ替わるように伝令が到着し口頭で有沢に告げる。


「1班は20m先に小道を発見しました。」


「わかった、1班と2班に別名あるまでその場で待機と伝えてくれ」


「復唱!川西一等兵は1班と2班に別名あるまでその場で待機と伝令して参ります」


後藤は伝令が去っていくのを見送ると有沢にどうしますかと聞き、有沢も質問の意味はわかっているので頷き道を通っていくと答えると後藤は若干渋い顔になると懸念を伝える。


「周りから丸見えになります」


道を歩くのは林を歩くより早くかつ楽に歩けるようになるが木々に隠れないので遠くから発見されやすくなる。


そのため軍事学上では安全の確保されてない道をそのまま歩くのはそれなりの危険が伴うと考えられたが有沢には林を歩き続けるには別のリスクがあると考えていた。


「確かに林の加護を捨てることになるが我々は戦いに行くんじゃない、お行儀よく道を歩いて挨拶をしに行くんだ」


武装して近くに道があるのにわざわざ林に隠れながら行軍していたら何かやましいこと考えているとこれから遭遇する“誰か”に思われたでもしたら平和的な接触はいきなり厳しいものになる。


「…こちらの挨拶が通じますかね」


「だったら尚更ここでは行儀良く、なにかやらかしても弁解は相手に通じないぞ」


「まるで冒険家、マゼランみたいですな」


後藤が昔に習った世界史出てくる未知領域の冒険に出かけた有名な冒険家の名前を出すと今度は有沢が渋い顔になる。


「マゼランは縁起が良くないから出すな」


マゼランは初の世界一周を果たす直前に原住民を舐めてかかったせいで怒りを買い殺されてしまった。


その後疲労困憊の杉原を休ませるため小休止を取り有沢達は隊列を各班の間隔を狭めた縦隊に隊形を整えると周りに雑草が青々と生えていながら辛うじて獣道ではなく小道と呼べそうな道を歩き始める。



エルサは小高い丘に立ち島の大自然を見下しこういった人の手が全く入ってないような場所を自由気ままに駆けずり回っていた自分の若い頃を思い出しあの頃に比べると重い責任を任されている今の自分に少し感傷を覚えていた。


エルサの立っている丘はマイエルが居を構えている唯一続く小道を塞ぐように鎮座しており小道もこの丘にそって迂回するように作られている。


感傷に浸っていたら後ろから足音が聞こえてきたのでエルサは現実に意識を戻して振り向く。


(はぁ…感傷なんて私も歳を食ったわね)


エルサの補佐を担当しているディックは上官に報告をしようとしたらその上官がため息をつき後頭部を掻きながら振り向いたので自分が何か不快に思わせるようなことをしたのかと一瞬固まる。


非常に頼もしくていい人だが何かと恐ろしい武勇伝話もついて回る人物でもあるとディックは実体験込みで知っていた。


「ディック、奴らは道に入った?」


「はっはい、先程道に入ったと報告がありました」


「ふむ堂々と道を歩いて来ているならいよいよ害意は持ってないみたいね、もしくはこっちの事を舐めきってやってるのかもしれないけど…それで監視はまだバレてない?」


「魔法士がまだ隠れている可能性を考慮して目視ではなく“匂いと音”で監視していますからまずバレてないかと」


「ならこのまま予定通り接触するわよ」


満足げに頷くエルサにこの後何が起きるのか知っているディックは無理だろうな思いながら二度目の説得を試みる、もちろん一回目はエルサから歓迎方法を聞いたときすぐにやめた方が良いと説得したがだめだった。


「あの…本当に予定通りやってしまうのですか?侵入者に害意がないのでしたらもう少し穏便な方法ではダメでしょうか」


わかってないわねとエルサは首を横に振る。


「この接触の後で話し合いをするならまずガツンと相手に加害者と被害者の立場ってのをしっかりと教えてやるのよ、そうすれば後々この立場は何かと便利に使えるわ」


少し前にエルサから聞かされた侵入者に対する歓迎方法を思い出したディックには素朴な疑問が浮かんだ。


「でもアレではまるで逆っ」


話している途中でディックはエルサに肩を少し痛いくらい力で掴まれたのでビクッとエルサの顔を見るとそこには普段あまり見ることがないとても真剣な表情だった。


「あなたの心配はたくさんあるでしょう、でもこれは国の命運が掛かっている事なの私を信じて任させてくれない?」


この時いくら普段の言動がアレだからといって一瞬でも最近暴れていない所に丁度いいサンドバックが来たからその鬱憤ばらしをしようとしてるのではとさっきまで疑っていたディックは自身を深く恥じいる。


これだけ力強い言葉とを真剣な表情なのだから何時もとは違う真に国の事を思ってこの人はやっているに違いないとディックは確信していた。


「すいません余計な心配でした、今すぐ各班に予定通りだと伝えて準備させてきます」


「気にしてないわよ」


「ありがとうございます、では行ってきます」


エルサに敬礼するとすばやく走り去るディックの背中をエルサは見えなくなるまで笑顔で見送るとくるりと振り向きただ一言放つ。


「最近の若者はちょろいわー」


残念ながらディックの予想は全く外れていなかった。



「嫌な感じだな」


黙々と歩いている有沢が唐突に呟くとすぐ前を歩いていた後藤も同意するよう頷く。


「これは臭いですな」


三人の中で一人だけ話が見えていなかった杉原はとりあえず今歩いている小道の先を覗いてみても600m程真っ直ぐになっており、そこからは自然豊かな島では珍しく草もほとんど生えていない土色をした小高い丘を迂回するよう道が曲がっている以外には特に変わっているようには思えなかった。


なので正直に二人に疑問をぶつける。


「どうかしましたか?」


「えーとですね…」


杉原に話しかけられて二人は一般人が傍にいるのに普段と同じように喋ってしまい余計な事を言ってしまったと気がついたが既に後の祭りだった。


有沢はあまり不安を煽らないように言葉を慎重に選びながら杉原に説明する。


「この先に嫌な予感がしただけで、なにか具体的に根拠があるわけではありません」


杉原に言った通りになにか根拠があったわけではない、だが混沌の中国戦線で普段着を着て一般人に化けたゲリラ兵から日常的に奇襲、待ち伏せを受けてきた事よって鍛えられてきた有沢と後藤の“鼻”がこの先は危険だと告げていた。


それに嫌な予感というものは往々にして当たるものである。


「…勘ということですか?」


「そうですただの勘です」


全くもってその通りなのではっきりと有沢が頷くと杉原は少しの間考え込むと真剣な顔でこのまま予定通りこの道を進むのですかと有沢に尋ねる。


その道のプロが縁起でもないことを言ったので少なからずは動揺されると有沢達は思っていた所にこの冷静な反応は意外だったため驚いたが、そもそも何が起きるかわかないような場所に外交官として派遣されているのだから並みの肝っ玉の持ち主な訳が無いと納得することにした。


「はい、このまま進みます」


「このまま?」


この先に嫌な予感がすると言ったのでてっきりこの道を迂回したりするかと思っていたので有沢の返答に杉原が首を傾げると有沢は周りの様子に気を配りながら話を続けた。


「もし我々に対して敵対的な勢力がいるとしたらここで襲撃を回避されても別の場所で襲撃されるだけです、どうせ襲われるならせめて心の準備ができている時に襲撃を受けた方がいいです」


戦力と時間があるなら有沢もここで一旦退いて襲撃者を罠に誘い込んで嵌めるなりを考えるが今あるたった2班の戦力でしかも命を賭けて守らねばならない大事な荷物付きとなると取れる選択肢は非常に少なく対応はどうしても受動的に成らざるおえないのが現状だった。


流石にこの理由まで杉原に話してもただの愚痴になると有沢は思っていたので口にはしなかったが幸いなことに杉原は外交官という仕事柄で相手の言わんとしてる所を理解することには長けているので有沢の言いたいことは察することができた。


「なるほど…では私も心の準備をしておきましょう」


「ただの杞憂で終わるかもしれませんからあまり気にせずお願いします」


二人が話している内に丘まで500mを切ろうとしていたので有沢が一旦部隊の行進速度を落とすように指示すると兵士間でも自分達の指揮官がこの先に警戒していると分かり部隊内の緊張感はにわかに高まり出した。


しかし人間はそこまで極度の緊張を長く保ち続けることが出来るほど強く出来ていなく丘まで50mを切っても何も起きなかったのでこれは外れたんじゃないかと部隊内で緊張の糸が緩み始めていた。


バキッ。


「?」


有沢は左手の林の中から今までとは違う何かが折れるような音を聞いたので目線を前方の丘からそちらに移した一瞬を突かれたように前を歩いていた後藤が悲鳴なような叫び声を上げた。


「中隊長っ!!」


慌てて丘に視線を戻してみたら自分の頭に黒い点のような何かが空気を切り裂く飛翔音を伴いながら近づいて来ていたのに気がつく。


「しまっ…」


その黒い点が矢だとわかった時にはすでに文字通り目の前まで迫っており有沢は殺られたと思わず目を閉じた。


誰もが有沢は頭を矢で射抜かれてしまったと立ち止まり息を飲んだ。


その場だけ時間が止まったように静かになるが自然はそんな人間の思いには関係なく音を刻み続けた。


(ん?)


木々のざわめく音を未だに聞こえていることでまだ自分が生きている事に気づいた有沢はゆっくりと目を開けて周りを見渡すと自分のすぐ左脇に生えていた木の幹に深々と弓矢が突き刺さっていたのを確認した。


自分が殺されかけた事実に有沢は頭が真っ白になりそうだったが何度も死線をくぐり抜けてきた中国での経験が恐怖を強引に押さえ込み指揮官としての自分を取り戻すと周りの人間の時間が動かす為に大声を張り上げる。


「身を隠せ!!」


時間にしては数秒にも満たない時間だが指揮官が殺されたショックで呆然していた班員たちはその指揮官である有沢の大声で我に帰る。


「くそっ、何処から撃たれた!?」


「いいから早く伏せて木に隠れろ」


「あまり一箇所に固まるな一網打尽にされるぞ!」


「いたぞ1時の方向、丘の上だ!!」


班員は素早く周りの木々に散らばると肩から小銃を下ろし手で握り締めると敵を捜索し始める。


有沢と後藤も杉原を急いで近くの木の裏に杉原を押し込めると自分達もそこに隠れると班員の一人が見つけた丘の上にいる敵影を隠れながら伺う。


丘の上には確かに弓を持った軽装の人間が隠れもせず堂々と仁王立ちしていた。


しかも50m以上離れていたので詳しい容姿はわからなかったが体の線が細いことと髪が長いことがわかったので恐らく女性だと有沢達は思った。


この大胆すぎる相手に思わず後藤と有沢は一旦顔を木の裏に引っ込めるとそのまま見合わせる。


「あの女が中隊長…ではなく中尉を射った奴ですか?」


「そうだな木に刺さった矢の角度からして上にいるあいつに射たれた、随分と命知らずな奴だが」


「それで殺っちまいますか」


後藤は手に持った小銃をチラつかせる。


明らかに原住民を殺傷してはいけないという命令に反する提案だったが後藤もそんなことは分かっており本気で言ったつもりではない。


しかし年の離れた親友であり何度も共に戦ってきた戦友が今さっき殺されかけた事に当たり前というべきか後藤はかなり怒っていた。


「いや逃げる…と言いたいことだが」


有沢の深刻そうな顔を見て後藤も一旦怒りを脇に退けると先程から危惧していた現状の隊が置かれているある可能性を口にする。


「既に包囲されていると?」


「こちらに堂々と姿を見せている、ならそれだけ大胆な事をする余裕が丘の上にいる奴にはあるはずだ」


「…敵が我々をこれ以上侵入させないのが目的でしたら、こっちが逃げれば大人しく見逃してくれませんかね」


最初から包囲した後に奇襲して殺るつもりだったら今、有沢達に一息つかせている理由がない。


ならば敵の目的は殺すことではなく、ここから追い払うことではと後藤は考えていたが有沢は首を横に振った。


「それも無くはない、だが何らかの武器を持った武装集団を自分達の庭に放置したままにするとは思えん」


もし武器を持った武装集団が無断で自分の家に入ろうとして、その武装集団を家から追い出すだけではその後も自分の家の周囲うろつかれるかもしてない、しかも無断で人の家に入ろうとするような無法者共である、だったら武装集団がその場で大人しく降伏するなら捕まえてしないなら…殺す方が面倒事は起きなくなる。


勿論そうなれば原住民を殺さず杉原を守らねばならない有沢達は逃げるしか選択肢はなくなるが逃げるとなれば引かれている可能性が高い包囲網を実力で排除しなければならなくなる。


降伏して相手に事情を説明する手もあるが言葉の通じない相手に説明をするという難事が待ち構えている上に杉原の身も危険に晒されることになるので論外であった。


「・・・・・・どうします?」


かなり厄介な状況に追い込まれたと改めて感じた後藤は自分には手に負えないと首を振り有沢に指示を求めた。


「まだ相手の目的が決まったわけじゃないだからもう少し相手の出方を見て対応を決める、杉原大使も・・・」


今は現状維持という方針に杉原の同意を求めようと視線を送ったが先程自分達が押し込めた場所に姿が無かった。


何処に行ったと有沢が視線を辺りに走らせると杉原は木の陰から顔を出して丘の上を伺っていた。


「丘の上にいる方が何かしようとしてますよ」


危険ですから頭を出さないで下さいと言って有沢は杉原を再度木の裏に引っ込めさせると木の陰から見てみると丘の上にいる女は手に持った弓を後ろにいたらしい一人に渡すと代わりに形状と大きさがタンバリンによく似た何かを受け取っていた。


それがこの世界における拡声器だとは有沢にはわかるはずもなかったがどういった道具かはすぐに解ることになる。


なぜなら


「おいっ、聞こえているか女々しく隠れている糞ども、私はフークアリス王国軍所属のエルサ・ベールヴァルドだ!!」


有沢は島中に響き渡るエルサの声を顔面で受け取ることになった。


いきなり異国の言語での罵声に班員が唖然と聞いている中、有沢と後藤だけは彼女の声に別の衝撃を受けていたがそんなことはお構いなしに一方的に話は続けられる。


「貴様らは既に我が優秀なる部下300人で完全包囲している、通常であれば神聖なるフークリアス王国の領土を無許可で侵犯している貴様らは投降してもこの場で極刑に処してやる所だが慈悲深きマイエル・イングヴェル第一王子が貴様らの釈明を直接聞いて下さるとのことだ、もし死にたくなければ私の忍耐力が持っている間に代表者は一人でこちらに来い!!」


ようやく話が終わったが班員は黙ったまま顔を見合わせた。


あの女は何を言ったんだと?自分達が置かれている状況と相手の言葉の強さから投降を呼びかているのはなんとなくだが解ったがそれだけだった。


ただ三人を除いては。


「中尉・・・あの・・・この歳で呆けたと思われてもいいんですが彼女の言葉いえ言語は__」


後藤は自分でもありえないと繰り返し思いながら有沢に告げようとする。


なにより有沢に否定して貰わなければならかった。


彼女の話した言語が自分達が少し前に習った架空言語であるはずのロシャナ語であるなんてことを馬鹿げた話があるわけないと共にロシャナ語を習った有沢に否定して欲しかった。


しかし願いにも等しい後藤の言葉を有沢は途中で遮り苦笑しながら首を縦に振る。


「“ロシャナ語”だったな、これは二人揃って呆けたな・・・いえそれとも三人ですか杉原大使?」


何を言ってるいるのかわからず聞いていた班員、逆に何を言ってるのか分かってしましい驚いていた後藤と有沢、そしてどちらの反応とも違いただ一人冷静でいたのは杉原だけだった。


「大丈夫です三人とも呆けてなんかいませんロシャナ語で正解です、これであなたに護衛を任された理由はわかりましたね」


杉原も苦笑しながら有沢に解答を与えた。


「いくつかの疑問は解けましたがあなたに聞きたいことはかなり増えました、しかし聞くのは後にしましょう」


杉原と有沢の会話に後藤は訳がわからず置いてけぼりにされる。


「どういうことだか全くわからないので説明をお願いしたいのですが」


「あの様子から丘の上にいる女は俺達が答え合わせをするまで待ってくれないから後だ」


有沢としても杉原に聞きたいことはあったが先刻にあの物言いでエルサの忍耐力が長いなんてことはないだろう判断していた。


「そうですね私もそう思います、では私は行ってきます」


そう有沢に告げると杉原が立ち上がって木の幹から出ようとするので後藤は慌てて止める。


「待ってください杉原大使っ!!危険です」


「止めなくていいんだ曹長」


「しかし中尉・・・」


「相手と交渉ができるというなら我々の出る幕はないんだ曹長」


「心配するのはよくわかります、ですが私はこんな時の為にここへ来たんです信用してください」


「・・わかりました、お気をつけて」


二人に説得されては後藤としても道を開けるしか無かった。


杉原がしっかりとした足取りで道に出ると丘の上に向かって迷いなく歩いて行くと事情を知らなかった班員は一瞬騒然となるが指揮官である有沢が黙ったまま見守っていたのでそのまま待機を続ける。


「ご武運を・・・」


有沢はただ杉原がうまく交渉できることを祈るしか無かった。



「おっ!?出てきた」


丘の上に立ったままエルサは林の中から一人の男性がこちらに向かって歩いてくるのを見つけた。


「良かった~」


エルサの後ろでいつ侵入者が反撃してくるかハラハラしながら待機していたディックは侵入者が大人しく指示に従ってくれて安堵のため息をつく。


逆にエルサには至極残念な結果だった。


「えー殊勝な奴らね、少しでも暴れてくれたら全力で正当防衛してやったのに」


「・・・えっ?」


「よーし奴らの親玉の顔を拝見しましょう、行くわよディック」


そう言い残すとエルサはディックを残してさっさと歩き出した。


「待ってくださいよエルサ隊長」


「しかし見たこともない格好の奴だけと何処の連中かしら」


「それは話を聞いてみないことにはただし人間だと思いますからまだ気は抜けませんよ、それよりもさっきの・・・」


島を照らす太陽はすでに大きく傾いていた。

感想、本文の誤字脱字等ありましたら気軽に教えてください。

最近は猛暑が続いていますから皆さんも熱中症にはお気をつけて。

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